⑧
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それから8年の歳月が流れた。
墓を建てたわけではないが、可那子は毎月寺に出向いては本堂で手を合わせていた。
この間、可那子に言い寄る男がいなかったわけじゃない。
しかし相変わらず可那子の心を占めるのは渋澤で、そこに他の男が入り込む隙間はなかったのだった。
手を合わせながら可那子は、ぽつりと恨みごとをもらす。
「渋澤さんのせいで、私きっと一生独身ですよ…」
すると、それに応えるように可那子の背後から声が響いた。
「自分がもてねえのを、俺のせいにするな」
「――っ!?」
可那子は弾かれたように振り返った。
何年経とうが聞き間違うはずのない声。
だけどそこにいるはずのない人の声――…。
うそ、と呟いたきり可那子は言葉を失った。
そこに立っていたのは間違いなく、死んだと聞かされたいた渋澤その人だったから。
「たく…、好きに生きろ、って言ったろ?」
渋澤は呆れたように言う。
しかし可那子はふるふると首を振った。
大粒の涙がこぼれ落ちる。
「だから、ここにいたんです…!」
可那子は渋澤に向かって駆け出し、そしてその胸にまっすぐ飛び込んだ。
死んだと聞かされただけで顔すら見せてもらえなかったことから、もしかしたら渋澤は生きているのかもしれないと考えたこともあった。
ただ、生きていたとしても何らかの理由で会うことができないのなら死んだことにした方がいいと皆が判断したのかもしれない、と。
結果としてそれは正解だったわけだが、たとえ不正解だったとしても、今の可那子にとってそれらがどうでもいいことになったということだけは確かだった。
「おかえりなさい…!」
「…ああ」
渋澤もその体を、強く抱きしめた。
***
何も考えられなかった。
玄関に入ったところで重ねられた唇は間違いなく8年前に失ったはずの、しかしなお夢に現に求め続けた男のもので。
抱きしめる腕の強さと口づけの熱さに、頭の奥が痺れていくのを感じていた。
「…寝室は」
「渋澤さんの寝室を、…私が」
短く問われそれに返した可那子の腕を掴んだ渋澤は、過去自分が使っていた部屋へとためらいなく入った。
布団カバーの柄が違う他は8年前とほとんど変わらないその部屋のベッドに可那子を押し倒すと、貼り付けるようにもう一度唇を重ねる。
「…っ、」
同時にふくらみを揉みあげられ、可那子は体を小さく震わせた。
すぐさま露わにされたそこを揉みしだかれ舌で先端を弾かれて、久しぶりに与えられた強い快感に可那子は身悶える。
「ここが弱いのは相変わらずか」
大きな声を上げてしまいそうな口を押さえる手を絡め取りながら渋澤は口角を上げ、もう一度そこに顔を寄せた。
「あ…っ、は、あぁ、あ、…っ!」
固く立ち上がった乳首を舐め転がされ指先で捏ねられて、可那子は嬌声をこぼす。
こみ上げるこちらも久しぶりの感覚に少し怖さを感じ腰が引けてしまう可那子の体を抱えるように抱きしめ、渋澤はそれでも可那子を昂めていった。
「ふ…っ、あ、や…だめ、あ、あぁ…っ!!」
びくん、と体を震わせ可那子が達すると、渋澤は少し性急に可那子の服を脱がせた。
そして自らも服を脱ぎ捨てると、可那子の体を開く。
「…挿れるぞ」
「あ…、」
中心に屹立を宛がわれた可那子が僅かに戸惑いの表情を見せると同時に、それは可那子の中へと埋め込まれた。
「――…っ、」
瞬間可那子は、鈍い痛みに思わず顔をしかめた。
「つらいのか」
「、久しぶりなので…、少しだけ」
問われ小さく首を振りながら答える可那子だったが、しかし続いた言葉に少し拗ねたように返した。
「抱いてくれる男もいなかったのか」
「渋澤さんがいないのに…誰に抱いてもらえと、言うんですか…」
その言葉に見開いた瞳をすぐに細めた渋澤は馬鹿な女だ、と呆れたように呟き可那子の頬をなでる。
そして
「動くぞ。…じきによくなる」
そう言いながら、ゆっくりと抽挿を始めた。
「あ…っ、や、あ…渋澤さ、ああ…っ、」
渋澤の言葉通り、その体を思い出すのに時間はかからなかった。
声には艶が混じり、体の奥には熱がたまっていく。
「は、…っあ、しぶさわ、さ…っ、」
あっという間にイってしまいそうな快感に翻弄されながら可那子は、腰を掴む渋澤の腕に手を滑らせた。
「お願、です…もう二度と…っ、私を置いて、どこにも行かないで…!」
言葉と共に溢れる涙を渋澤は優しく拭い、ああ、と小さく答えると同時に、その動きを速めた。
***
「ああぁっ!!」
奥を強く突かれ、何度もイかされ手放しかけていた可那子の意識は強制的に引き戻された。
「あ…ぁ、しぶさわさ…っ、私、もう、だめ…っ」
止まらない渋澤に体を揺さぶられながら可那子が懇願するが、
「まだだ、もう少し…付き合え」
苦しげに言いながら可那子の頬をなでた渋澤は、更に強く中を抉った。
「ああ!あっ、は…っあ、あぁ…っ!!」
どうにかなってしまいそうな快感にただ翻弄され続けた可那子は、
「――…っ!!」
声にならない声を上げ、今度こそその意識を手放した――…。
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