冬に咲く花
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「誕生日おめでとう、白哉」
「ああ、ありがとう」
今日は恋人である白哉の誕生日。
隊務終了後、可那子は六番隊隊首室を訪れた。
本来ならこの後すぐに朽木家で一緒に夕食をとる予定だったが、白哉は可那子の首に毛皮の襟巻を巻いてやりながら
「少し寄り道をしよう」
そう言うと可那子の肩を抱き、隊舎を後にした。
辿り着いた先は、小さな広場だった。
夏には木々が生い茂り涼を楽しみにくる死神も多いが、さすがにこの時期には人影はない。
積もった雪を踏みしめながら、ふたりは広場の中を進み薄く氷の張った池の前で立ち止まる。
「どうしてここに…?」
問いかけた可那子を抱き寄せた白哉は、そのまま片腕で自分の胸に包み込むように可那子の体を抱きしめた。
「白、哉…?」
可那子は何も言わない白哉の背を戸惑い気味に握る。
とその時強い風が巻き起こり、可那子は驚いてその手に力を込めた。
「可那子」
低く柔らかな声で呼ばれ、可那子はふと顔を上げる。
風はもうおさまっていた。
肩を優しく押され、体の向きを変えられる。
「わぁ…っ」
されるがままに振り返った可那子は、感嘆の声を上げた。
目の前に広がっていたのは、桜。
雪の積もった木々に美しく咲く、白哉の千本桜だった。
「どうして…」
「いつも花見をしたがっていただろう」
可那子の小さな問いかけに白哉はそう答え、
「でも、結局見せてくれたことなかったのに…」
「現世出張でそなたの誕生日を祝ってやれなかったからな」
続いた可那子の言葉には少し申し訳なさそうに言葉を返した。
もちろん遅れたとはいえプレゼントはきちんと渡されていた。
しかしそれでは気が済まなかったのだと白哉は言う。
だから可那子も白哉のその気持ちを素直に受け取ることにした。
「すごく綺麗…ありがとう、嬉しい」
振り返って白哉を見上げると、可那子を見つめる澄んだ瞳に優しく射竦められる。
ふたりはどちらからともなく抱き合い、ゆっくりと唇を重ねた。
帰り際、はらはらと散り白哉の刀身に戻りつつある桜を見ながら可那子は、
「また見せてね」
と白哉の手を握った。
「二度はせぬ。しかし…」
白哉は答えながら、冷え切った可那子の手にはぁっと息をかける。
「来年の誕生日もそなたが祝ってくれるなら、考えないこともない」
「もちろんだよ。来年も再来年も、ずっとずっとその先も祝ってあげる。離れたりなんか、しないんだからね…」
体を包み込むぬくもり。
静かに抱きしめられた白哉の胸で、可那子は白哉と自分が共にここに在る幸せをかみしめていた――。
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