①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
優しく髪をなでる感触に、可那子はふと目を覚ます。
上げた視線がユウヤのそれとぶつかり、恥ずかしそうにその胸に顔をうずめながら可那子は呟いた。
「おはよう、ございます…」
「ああ、おはよう」
それをしっかりと抱きしめながらユウヤが答え、
「体、平気か?」
と訊けば、可那子ははい、と小さく答えた。
「なぁ、なんであんなとこにいたのか…訊いていいか?」
しばらくの沈黙の後、ユウヤは思い切って切り出した。
可那子を抱いた感触から、最悪なことにはなっていないとふんでの質問だった。
すると可那子は、ユウヤの胸に顔をうずめたまま落ち着いた様子で話し出した。
自分は孤児で、小さな頃からずっと施設で育ったこと、
しかしその施設長に、規則だと言われて体の関係を求められ逃げ出して来たこと、
たどり着いたここ神室町でチンピラに絡まれ、必死で逃げてきたこと…。
そこまで話して可那子は、
「で、服も靴もどうしようかと思ってたところを助けてくれたのが、ユウヤさんなんですよ」
そう言って顔を上げ、にこりと笑う。
「ちょい待ち…、じゃあ全然平気じゃねえだろ」
しかしそこまで聞いたユウヤは逆に、焦りを露わに体を起こした。
「どうしてですか?」
シーツを手繰り寄せながら可那子も体を起こすと、ユウヤは申し訳なさそうに言う。
「…だってお前、初めてだったろ?それなのに俺…、自分本位にお前のこと抱いたし…」
するとそれを聞いた可那子はふふっと笑い、ユウヤの胸にこつんと額をぶつけた。
「大切なのは、誰に抱かれるかってことだと思うんです。あたしはユウヤさんがいいなって思ったから、ユウヤさんに抱かれたんですよ?」
「可那子…」
「もちろん、どうしてもイヤなのに無理やりとか痛いのとかは、いくら好きな人でもイヤですけどね」
そして可那子はそう言って、いたずらっぽく笑う。
ユウヤは、可那子を強く抱きしめた。
愛しい、という感情しか今のユウヤの中には存在しなかった。
普段ならチープだと笑い飛ばすだろう運命という言葉は、こういう時のためにあるんだと素直に思うことができた。
「なあ可那子、順番逆んなっちまったけど…行くとこないならここに…俺のそばに、ずっといてくれないか」
出会ったばかりだとか相手のことをよく知らないとか、そんなことはどうでもよかった。
腕の中のこの少女がほしい、ユウヤの願いはただそれだけだった。
「あたしで…いいんですか?」
可那子はユウヤの腕の中から顔を上げると、少し不安げに小さく訊き返す。
「ああ、お前じゃなきゃだめだ」
それに即答したユウヤが優しく笑うと、可那子ははにかみ、そして頷いた。
抱き寄せられるままにユウヤの背に手を回した可那子は、そっと囁く。
「あたしも…ユウヤさんのそばにいたい、です…」
2/2ページ