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ホストクラブ・スターダストの控え室を出た所で何か物音を聞いた気がしたユウヤは、店の裏に通じる通用口から外に出た。
そこから暗がりに目を凝らすと、ビールケースやポリバケツの陰に隠れるようにうずくまる小さな塊が見えた。
「誰だ、そんなとこで何してる」
声をかけるとその影は弾かれたように立ち上がり、逃げ出そうと走り出す。
「おいちょっと待て、何があったんだ」
しかし店内から漏れた明かりに照らされた明らかに異様なその姿を見たユウヤは、思わず追いかけ、その腕を掴んだ。
影の正体は、見た目17か18くらいの少女だった。
しかしその少女を包んでいたのは、汚れた服、破れたスカート。
靴は片方しか履いていなかった。
「離してよ、ほっといて…っ!」
少女はその手を振りほどこうと抵抗するが、ユウヤは力を緩めない。
「馬鹿野郎、ほっとけるわけねえだろ!」
「…っ、」
ユウヤの言葉にわずかに抵抗をゆるめた少女だったが、
「つーか、警察行った方がいいんじゃないか?」
「それだけはいや!お願い、離して…っ!」
続いた言葉に、再び激しく抵抗を見せた。
「分かった、分かったから少し落ち着け」
ユウヤの手を剥がそうとするその手を更に掴みながら、ユウヤが宥めるように言う。
「…何か事情があるのか」
「……」
「行くあては」
「……」
しかし抵抗をやめたと思ったら、今度は俯いたまま何も話さなくなってしまった。
ユウヤは小さく息を吐く。
閉店までにはまだ時間があるが、少女をこのまま放ってはおけない。
さてどうするかと考えたその時だった。
「ユウヤ、何かあったのか?」
通用口の方から声がかけられた。
声の主は、オーナーの一輝のもの。
「一輝さん…」
ユウヤは少女を自分の背に隠すように立ち、
「いや、ちょっとした痴話喧嘩っす、すんません」
ははっと笑いながら言う。
「でも原因は俺なんで、こいつ家まで送ってやりたいんすけど…」
ユウヤが少女の手を離さないままそう続けると、一輝はため息をついた後
「まったく、仕方ないな。今日はもうあがっていいから、ちゃんと仲直りするんだぞ」
そう言って店の中へと戻って行った。
すみません、ありがとうございますと頭を下げたユウヤは自分の上着と店のサンダルを少女に貸し、その格好がなるべく目立たない裏道を通りながら自分のマンションへと連れて帰った。
***
少女は、名を可那子といった。
ユウヤはまず可那子にシャワーを浴びさせ、ブランデーを少し落としたミルクを飲ませた。
「おいしい…」
そこでようやく少し笑顔を見せた可那子は、
「あの、ありがとうございました。お礼が遅くなってすみません」
そう言いながら頭を下げた。
するとユウヤは、
「ああそういうの苦手なんだ、だからいい、気にすんな」
そう言って照れたように頭をかく。
その時可那子は、ずっと不思議に思っていたことを質問した。
「でもなんで、あたしをかばってくれたんですか?」
「え?…ああ」
それが一輝とやり取りをした時のユウヤの行動を指しているのに気付くと、
「あんな格好、見られたら嫌だろ?一輝さんはそういう人じゃないけど、とりあえずああ言っとけばそれ以上は詮索されないしな」
ユウヤはあっけらかんとそう言う。
そして、
「さ、残りの話は明日だ。こっち来な」
そう言って可那子を寝室に連れて行った。
「ベッド使っていいから、今日はもうなんも考えねえで寝ちまえ。いいな?」
可那子の髪をくしゃりとなでたユウヤが部屋を出て行こうとした、その時。
「、待って…っ」
そのユウヤの服が、遠慮がちに引かれた。
振り返り服を掴む手を見てからユウヤは、自分を見上げる可那子を見る。
「ひとりに、しないで…」
泣き出しそうな、可那子の瞳。
「…っ」
それに魅入られたようにユウヤは、その頬をなで震える唇を親指でなぞった。
そこから先、言葉など無意味で。
ふたりはごく自然に――…体を、重ねた。
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