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気が付いた時、私の体は一輝さんの腕の中だった。
「ああ、目が覚めた?」
身動ぎした私に気付いて、一輝さんは少しだけ体を起こした。
「あの、私…?」
「覚えてない?最後イった時に…気を失っちゃったの」
途中からの記憶がぼんやりしていた私は、一輝さんの言葉を聞いてものすごく恥ずかしくなる。
「…っ、ごめ…」
すると一輝さんは、言いかけた私の唇に指先で触れた。
そのまま手のひらで私の頬を包み込みながら、
「言ったでしょ、可那子ちゃんは謝りすぎ。それより体は平気?…ごめんね、マジで理性飛んでたよね、俺」
そう言って苦笑いを浮かべる。
その後、こんなの初めてだよと続ける一輝さんに、誰にでも言ってるんでしょう、なんて野暮なことは言わない。
最後なんだから、自分のためだけに向けられた言葉だと受け取ることにする。
「一輝さんも、謝ってばかりです」
「そう、かな…?そんなことないと思うんだけどな」
私の言葉に少しだけ意外そうな表情を浮かべる一輝さんに体は大丈夫ですよと笑って見せ、
「シャワー、浴びてきていいですか?」
と実際はあまり大丈夫じゃない体にシーツを巻いて、バスルームへ向かった。
熱いシャワーを勢いよく頭から浴びる。
これで本当に終わりだと思ったら涙が出そうだったけど、部屋を出るまでは…一輝さんと別れるまではこらえようと思っていた。
それなのに――…
「――…っ、」
胸もとに残されたひとつの紅い痕に気付いた瞬間、こらえきれずに涙が溢れた。
それは、後から後から溢れて止まらない。
シャワーの音にごまかしてもらいながら私は、声を上げて泣いた。
そしてひとしきり泣いた後、すべてを洗い流してバスルームを出る。
少しだけ目が赤いのはごまかせない範囲じゃない。
化粧は軽めにして髪を乾かして身支度を整え、その後シャワーを浴びた一輝さんと共に私は部屋を出た。
***
「私のわがままに付き合ってくださって…ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げた私に一輝さんは相変わらず優しく答えて、そして訊いてくれる。
「わがままなことなんてひとつもなかったけど…俺はちゃんと可那子ちゃんを楽しませてあげられた?」
「はい、とても楽しくて…幸せな時間でした」
すると一輝さんは嬉しそうに笑って、
「俺も、同じ。だけど…」
「えっ?、…っ!」
直後、私を強くその胸に抱き寄せた。
「一輝、さん…?」
戸惑ったまま一輝さんを呼ぶ。
「――…」
すると一輝さんは小さくひとこと囁いて、私の体を離した。
そして少しの沈黙の後、
「じゃあ、…また」
優しい笑顔でそう言って…そのまま私の横をすり抜けて行った。
私は振り返ることができなかった。
「どうして…」
そんな必要どこにもないのに。
初めから分かっていたことなのに。
「やっぱり…謝ってばかりなのは、一輝さんじゃないですか…」
呟いた私の頬を、こらえきれなかった涙が伝って落ちた――…。
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