約束
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隊長は、私をそなた、と呼んだ。
今までそう呼ばれたことはなかった。
さっき、他の死神たちがいる時もそうは呼ばれなかった。
そなた、と特別な呼び方をしてくれるのはふたりきりの時だけ…。
私も…
「白哉様、と呼びたい…」
無意識に口に出してしまい、それに気付いて慌てて自分の口を押さえる。
心の準備ができてから聞こうと思ったのに…。
私の突然の言葉に隊長は一瞬驚いた表情を浮かべた後、
「それで構わぬ。私とてふたりきりの時までそなたの隊長でいるつもりはないからな」
と言って優しく笑ってくれた。
その笑みに、とても幸せな気持ちになった時。
「縛道の四!這縄!!」
薄明るくなった、隊舎へ向かう小路の向こうから鬼道が放たれた。
隊長は瞬時に私を抱えその場から離れる。
這縄を避けた隊長が移動したのは、鬼道を放った者の前。
「朽木隊長!?…と、蔵本三席!?」
聞き覚えがあると思った声はやはり六番隊第四席のもので、その後ろには上位席官数人の姿があった。
「現世から戻られていたんですか、失礼しました!修行場の方からものすごい音がしたので、何者かが侵入したかと思い…ろくに霊圧も確かめず…」
四席の言葉に私は先ほど自分が撃った鬼道を思い出し、慌てて謝る。
「あ、あの、ごめんなさい。隊長に鬼道をみてもらってたの…!」
「そうだな、こんな時間に騒がせたのはすまなかった。現世から帰ったその足で来てしまったからな」
私の言葉を、隊長もフォローしてくれた。
「そうだったんですか…。隊長も副隊長も三席まで不在の時でしたし、侵入者じゃなくて良かったです。虚退治、お疲れさまでした!」
四席は心底ほっとしたように言い
「よし、じゃあみんな解散だ」
集まっていた席官たちにも声をかけ隊舎の方へ戻って行く。
隊長と私はその後をついて歩いた。
「兄は、今日はこのまま戻って休め」
「いえ、私は大丈夫です!隊長こそ…」
隊長が私に言ってくれるけど、私だけ休むわけにはいかない。
だけど隊長は
「駄目だ」
有無を言わさない口調できっぱりと言うと、
「今夜そなたの部屋に行くから…それまでしっかり休んでおくのだ。いいな」
と声をひそめた。
「!…はい…」
一気に顔が熱くなる。
そんなことを言われてしまった私は頷くしかなかったけれど、それでも言っておかなくてはいけないことがあった。
「では、隊長はちゃんと四番隊で治療を受けてください。そうしていただけないと…私も気になって休めませんから」
隊長の傷は、私を庇ったせいで負ってしまったものだから。
私がお願いすると、
「…、分かった」
この程度の傷など大したことはないと言いたげな表情ながらも、隊長は了解してくれた。
良かった。
私は傷の治癒霊力を持っていないから。
隊長の傷が治れば自分の愚行が帳消しになるなんて思ってない。
四番隊できちんと治療をしてもらえば、すぐに、綺麗に治してもらえる。
ただ、そのことに安堵した。
そうして自室に辿り着いた私は、隊首室の方へ向かう隊長の背中を見送りながら…空にいる父さん母さんに思いを馳せた。
父さん、母さん…私、もうちょっと頑張ってみるね…。
もう、大丈夫だから…隊長が、白哉様が…いてくれるから――。
(11,2,21)
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