約束
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朽木隊長と気持ちを確かめ合った後、私たちは違う場所で虚退治をしていた死神たちと合流し、現世を後にした。
穿界門をくぐり戻って来た尸魂界の雨も、すっかり上がっていた。
「私…あんな鬼道でほんとに虚を倒したんでしょうか…」
六番隊の隊舎に向かう道中、私はふと隣を歩く朽木隊長に問いかけた。
すると隊長は、
「霊術院で鬼道を習っても思い出さなかったのだから、兄の中でよほど深く封印されていたのだろうな」
と、まるで同じことを考えていたみたいに淀みない答えを返してくれた。
「当然鬼道にも修業が必要だ。これから鍛錬すれば力も戻るだろう」
私はその隊長の言葉になるほど、と思い
「そうですね。それに、あの頃は言霊も詠唱していましたし…」
と独り言のように呟いた。
けれどその言葉を聞いた隊長は
「そうか。ではその実力の程を見せてもらおう」
どこか楽しげに言う。
「…え?」
「修行場に行くぞ」
「あ、あの、隊長…っ」
戸惑う私をよそに、隊長は他の死神たちに任務終了の指示をするとそのまま歩いて行ってしまう。
私はその後を慌てて追うしかなかった。
まだ夜の明けきらない修行場はひんやりとした空気に包まれている。
「え…っ隊、長…?」
その時、突然後ろから隊長に抱きしめられた。
「ここまで連れて来はしたが…つらければ無理はするな。そなたにはもう苦しい思いはさせたくないのだ」
ここまで強引に私を連れて来たことを後悔しているようにも感じられる声だった。
だけど私はその言葉にとても安心することができて、
「…ありがとうございます、大丈夫です。考えてみれば、失ってしまった両親の…これって形見、みたいなものですから…」
隊長に体を預けながら答えた。
「形見か…そうだな。そなたがそう思えるなら、それで良い」
私の言葉に隊長も安心したように言い
「だが、あの約束だけは忘れるな」
と続け、私をさらに強く抱きしめた。
――もう二度と…ひとりで泣かぬと誓え――
「…忘れません。こんな風に思えるのは、全て隊長のおかげ、なんですから…」
私は隊長が現世で言ってくれた言葉を思い出しそう答えると、一歩前に踏み出した。
それに合わせて隊長の腕も緩められ、隊長は私とは逆に一歩後ろへ下がった。
少し足を開いて、修行場の真ん中あたりに立てられた目標に向かって真っ直ぐに立つ。
右手で左手首を掴むと、その左手の拳を胸に当て、精神を集中させた。
深く息を吸い、静かに吐き出す。
そして
「『散在する獣の骨』…」
言霊の詠唱を始めた時。
「まさか…!」
隊長の、珍しく焦ったような声が耳に入った。
「えっ?」
それにつられて私も焦った声を上げてしまったけど、隊長はすぐに
「いや…すまぬ。続けてくれ」
と言い、先を促した。
「?…はい」
私はわけが分からないまま、もう一度深呼吸をし、改めて言霊の詠唱を始めた。
「『――散在する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる――』」
左手の背中を右の手の平で押し、そして叫ぶ。
「破道の六十三!雷吼炮!」
私の左手から放たれた雷は目標を跡形もなく消し飛ばし、爆音を響かせながら広い修行場の岩壁に大きな穴を開けた。
「……」
驚いて声が出なかった。
こんな威力のあるものだったなんて…。
「…見事なものだな」
私が固まっていると、後ろで隊長も驚きを隠せない様子ながらも感嘆の声を上げた。
「そなたは父を誇って良い。六十番台の鬼道を使えるまでに鍛えられるとはな」
振り返った私に、隊長はそう言ってくれた。
「隊長…」
嬉しかった。
つらい事実は消えることはないけれど、それでも全てを思い出せてよかったと思えた。
「私も感謝せねばなるまい」
私の前に立った隊長はそう言いながら私の頬に手を添え、
「可那子――…そなたに、出逢えたことに…な」
言葉と共に、優しいキスをくれた――。
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