三島一八④
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ここの所一八さんはとても忙しくしていて、今ももう二週間ほど顔を合わせていない。
さみしくないと言えば嘘になる。
そんなこと、口に出しては言わないけれど。
そんな中、一八さんから明日戻ると連絡があった。
明日はバレンタイン。
一八さんに逢えるならと、一八さんのためにチョコを作ることに決めた。
チョコレートを湯煎にかけ、生クリームと混ぜて生チョコトリュフを作る。
その真ん中をくりぬいて一八さんの好きなバーボンやブランデーを流し込んだら、特製ボンボンの完成。
冷蔵庫で冷やし固めてラッピングも綺麗にできて、今日は一八さんが帰ってくる日。
…だったのに、また一八さんから連絡が入った。
「今日は戻れん、早くても明日だ」
「そう…ですか。分かりました、お気を付けて」
残念だったし、期待していた分さみしさはつのった。
やっぱり、口に出しては言わないけれど。
その夜、ベッドの軋む感覚にはっと飛び起きたらそこに一八さんがいて、
「かず、ん…っ」
名前を呼ぶ間もなく唇を塞がれた。
差し込まれる舌の熱さと同時に感じる、アルコールの匂い。
暗がりにちらりと目をやると、一八さんのためのチョコのラッピングが開けられているように見えた。
直後今まで寝ていた場所に戻すように押し倒され、同時に一八さんの手がシャツに滑り込む。
「待…っ、一八さ、」
「さみしいならさみしいと言ったらどうだ」
拒むつもりはなかったけれど突然すぎたことに驚いて声を上げた私に、一八さんはひとことぽつりとそう言った。
「え…?、あ…っ」
だけどそれきり何も言わず、私の胸もとに唇を寄せる。
一八さんがあの程度のお酒で酔うはずはないと思っていた。
だけど明らかに、今日の一八さんはいつもとは雰囲気が違う。
たぶん酔っているんだと思った時、それだけ今回の仕事が激務だったんだと私にも理解できた。
お疲れさまでしたと小さく呟いて、私は一八さんに身を委ねた。
そして――…
私の中で果てた一八さんは、私を抱きしめたまま、いつの間にか眠っていた。
――愛しい。
一八さんがただ愛しくて、なぜか涙がこぼれた。
「愛しています、一八さん…」
私も一八さんを、強く抱きしめた。
翌朝目覚めてすぐ一八さんの様子を伺ってみたけれど、どうやら何も憶えていないみたいだった。
その後残りのチョコも全部食べていたけど、酔って我を忘れるなんてことはやっぱりもうなくて。
少し残念だけど、レアな一八さんを私だけが見れたことを幸運としておこう、と思うことにした。
だけど、今日は帰れないと言っていた一八さんがギリギリ14日に帰ってきてくれた。
私のためだと自惚れてしまいそうになるのは、一八さんがくれたあの言葉のせい。
私から愛を贈るはずだった日に一八さんにもらった、あの言葉のせい。
たとえそれを一八さんが憶えていなかったとしても、一八さんが気付いてくれていたことが嬉しくて自然と笑みがこぼれてしまう。
いつかどうしてもつらくなったら、その時は言わせてくださいね――…
そう思いながら一八さんが淹れてくれたコーヒーを飲み、幸せをかみしめた。
(14,2,1)
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