三島一八②
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「メリークリスマス、です」
そう言ってグラスにワインを注ぐ。
日付はもうすぐ24日から25日に変わろうとしていた。
クリスマス、と言っても豪華な食事やプレゼントがあるわけじゃない。
黒服の方にお願いして用意してもらった小さなツリーがテーブルの上にあるだけ。
だけど、手を伸ばせば届くところに愛する人がいてくれる。
私にはそれで十分だった。
愛する一八さんと、ただ一緒に聖夜を過ごせるというだけで。
私はふと、壁一面ガラス張りの窓から外を眺めた。
眼下には幸せが満ちたような美しい光が広がっている。
「…え?」
その時小さく名前を呼ばれた気がして振り返ると、一八さんが私を見ていた。
促されるままにソファに体を沈めた一八さんの隣に座ると、すっと伸びた手に頬をなでられ耳朶を摘まれた。
「我慢しろ、少し痛むぞ」
「え?、…っ!!」
直後耳朶に突き刺すような鋭い痛みが走り、
「なに、を…一八、さん…?」
問いかける間に一八さんの顔が近付く。
「…っ」
痛みでじんじんと熱いそこをペロリと舐められ、体がぞくりと震えた。
「まぁ、今さらだが」
言いながら一八さんは私の髪をかき上げてそれを眺め、
「…ああ、悪くないな」
そう言って満足そうに笑う。
「ピアス…?」
おそるおそる這わせた指先に硬いものが触れ、私はソファから立ち上がって姿見に向かった。
私の左耳、鏡の向こうの私の右耳には、淡い光を一身に集めたピアスがきらきらと輝いていた。
「これ…ダイヤモンド、ですか…?」
「そうだ」
「…宝石言葉を、知っていますか…?」
「だから、今さらだがと言ったろう」
「――…っ」
涙が溢れた。
「ありがとう、ございます…」
呟くと同時に、いつの間にか後ろに立っていた一八さんに抱きしめられていた。
「でも私、お返しするものが…」
「いらん」
その時、はっと気付いて一八さんの腕の中で体の向きを変えた私は一八さんを見上げた。
けれど一八さんにそれを遮られ、そのまま私は抱き上げられた。
「俺が欲しいものは勝手にもらう。お前は気にしなくていい」
ベッドに運ばれ、組み敷かれる。
「一八、さん…」
私は一八さんを抱きしめたくて、腕を伸ばした。
それに応えるように身を屈めて抱きしめてくれた一八さんは、私の左耳にキスをした。
痛みとは違う熱さが、そこからじわりと広がる。
私は目を閉じて、聖夜の幸せを噛みしめた。
その幸せの意味は――…永遠の、絆――。
(13,12,20)
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