始まる関係
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レイは一八の秘書としてG社で働いていた。
特別な感情など何もなく、ただ秘書として。
そしてそれは一八も同様で、それ以上でもそれ以下でもなくただ秘書として扱ってきた。
ふたり共に、そこにぶれはないはずだった。
それが崩れたきっかけは、本当に些細なことだった。
仕事の手が空いたレイが書棚を整理していた。
そこに突然声をかけられたことに驚いて脚立を踏み外し、声をかけた張本人である一八に抱き止められた。
――ただそれだけのこと。
数多の女を抱いた一八にとって、女の体に触れることなど取るに足らないことのはずだった。
しかしいつでもきちんと着こなされたスーツの下、健康的な体を維持するためかほどよく鍛えられた肢体は、普段女を抱く時には感じられない感触だった。
それだけのことだったのに、おもしろいほど興味がわいた。
この体を攻め立てれば、きちんと纏め上げられたその髪を振り乱し喘ぐのだろうか。
そしてその時、この女からはどんな啼き声が聴けるのだろうかと。
***
その小さな出来事から数日、目の前の業務をこなしながらレイは、見られている…と思っていた。
ずっとというわけではないしあからさまでもないのだが、それでも凡人であるレイにも多少なりとも気付くくらいには見られていると。
それでも本当に気のせいかもしれないし、直接一八に確かめようかとも思ったが自意識過剰だと鼻で笑われるのがオチかと思いとどまる。
しかしそれも一週間も続けば、やはり気のせいだとはどうしても思えなくなっていた。
「あの、」
処理の終わった書類を手渡す時、レイは思い切って一八に声をかけた。
「――…っ、」
しかしその瞬間一八の紅い瞳に射すくめられてしまい、声が出なくなってしまう。
「なんだ、言いたいことがあるならさっさと言え」
「あ、あの…っ、」
眉間のしわを深くした一八に言われレイは慌てて口を開くが、そういう時は大抵ろくなことが言えない。
「一八様のその瞳には、何か特別な力があるのですか?」
問われた瞬間、一八は眉間のしわを更に深くし怪訝そうな表情を浮かべた。
「ああっ、失礼しました!なんでもありません!」
はっとしたレイは慌てて言葉を取り消し頭を下げてそこから逃げ出そうとするが、直後机越しに伸ばされた一八の手に腕を掴まれていた。
「待、ってください今そちらに…っ、」
そのまま強く引かれ、レイは焦りながら机を回り込み一八の目の前に立たされる。
「一八様…?」
するとレイを見下ろすように立ち上がった一八は、くっと口角を上げレイの顎を持ち上げる。
そしてその唇に、噛みつくように口づけた。
「…っ!ゃ…っ、…んっ、」
間髪入れず差し込まれた舌はレイの口内を容赦なく蹂躙し、レイの思考力を奪おうとする。
「ふ、ぁ…、ん…っ、かず…ゃ、…っ」
苦しそうに一八の胸を叩きながら抵抗を見せるレイだったが、後頭部を押さえられ腰を抱き寄せられて更に深く口づけられた時、その体はびくりと震えた。
しかし腰を抱いた一八の手が崩折れそうになるレイの胸もとをまさぐると、
「や、だめ、です…っ!」
レイはぐっと一八の胸を押し返して体を離し、恥ずかしそうに俯いて小さく呟く。
「仕事中、ですから…」
「……」
仕事中でなければいいのかと思わないでもなかったが、生憎今の一八はG社に缶詰状態だった。
マンションに帰る余裕もないほどに、昼も夜もなく三島財閥が問題を起こすせいで。
「おもしろい、ならばどこまで耐えられるか見せてみろ」
少し何かを考えた後一八はどこか楽しげにそう言うと、何事もなかったかのように椅子に腰掛け書類に目を落とす。
「……」
その場に放置されたレイも仕方なく、自分の机へと戻るのだった。
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