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「もう、また来たの?あたしだってそんなに暇じゃないんだよ」
目の前の少女は呆れたように言うが、それが本心からではないことは可那子にはよく分かっていた。
少女の名は、リリネット・ジンジャーバック。
まだ幼く、現世で言うところの小学校5,6年生くらいに見える。
十刃のひとりだが、それとは思わせないほど愛嬌があり、初めて会った時から可那子に…というより桜介と蘭丸に興味を示し、また好意的に接してくれている。
そしてリリネットは、コヨーテ・スタークという男とふたりでひとりの十刃だった。
スタークは面倒くさがりでいつもどこか気だるげだった。
可那子たちが遊びに行った時でも、大抵は部屋の隅でクッションに埋もれて眠っている。
ただスタークも可那子には好意的に接してくれていたため、可那子は安心して遊びに行くことができていたし、何より桜介と蘭丸がリリネットを大好きで、可那子が…というよりここに来たがるのはふたりの方だった。
もちろん可那子も桜介と蘭丸をとてもかわいがり、ふたりも可那子によく懐いた。
明日からいっぱい遊ぼう――。
その約束通り、あの日から可那子は桜介と蘭丸とよく遊んだ。
大抵はかくれんぼだった。
ただ可那子はふたりに、闇雲に探すだけではダメと言い聞かせていた。
集中して神経を研ぎ澄まし、気配を探る。
感覚的なものなので教えるのは難しく、ふたりもまたコツを掴むのに四苦八苦していた。
そう、可那子はふたりの探査神経を鍛えていたのだった。
初めは気配を消せる可那子をなかなか見つけられず、泣き出すこともしばしばだった。
が、そのうち難なく見つけられるようになっていく。
しかし、グリムジョーの広い宮の中で範囲を広げるとまた難しくなるようで、今は少しずつ範囲を広げながら徐々に力を付けて行こうとしていた。
時折、グリムジョーも手伝ってくれていた。
手伝ってくれている…と可那子が思っているだけで、機嫌が悪い時のグリムジョーの霊圧がふたりの邪魔をしていただけだったのだが、それがまたいい訓練になると可那子は思っていた。
ただ、可那子に教えられるのはそのくらいで、自分の身を護るための戦闘術や高速移動歩法の
グリムジョーが教えてくれるはずもないし、それにこのままこの宮の中で過ごすなら必要ないものなのかもしれないと、諦めかけていた時に出会ったのがリリネットだった。
「こんなしょっちゅう出かけてたら、あんたにメロメロなあいつが黙ってないんじゃないの」
「メロメロって…誰がそんなこと…」
リリネットの言葉に脱力しそうになりながら可那子が問い返す。
「ザエルアポロが言ってた」
その答えに可那子は、はぁ…とため息を吐き
「大丈夫、そんなことない。今日は留守だし、ここに来てることも知ってるし…」
にこりと笑って答え、体に残る霊圧のお陰で言わなくてもばれるしね…と心の中で付け加えた。
しかしそう言いながらもメロメロなどという言葉を聞いた可那子は、しょっちゅうここに来るようになり始めた頃にグリムジョーに言われた言葉を思い出していた。
お前がどう思っていようが、スタークは男だ、ふたりきりにはなるな――…。
思い出して笑みがこぼれそうになるのを慌てて抑え、早くリリネットと遊びたくてうずうずしているふたりを解放してやる。
初めの頃にお願いした通り、リリネットはふたりと鬼ごっこなどをしながら響転と簡単な護身術のようなものを教えてくれていた。
暇じゃないと言いつつも、いつも楽しそうに遊び、時には真剣にふたりと向き合ってくれる。
「座れよ」
優しい瞳でそんな三人を見つめる可那子の足もとに、ぽんぽんとクッションがいくつも飛んでくる。
いつもスタークが眠る為のクッションだった。
可那子が初めてここに来た時はそのうちのひとつを貸してくれた。
しばらくしてそれが二つになり三つになった頃、可那子のためか自分のいねむり用のクッションが減るのが嫌だったためか、そもそもの最大数が増えていた。
座り心地のいいクッションに座り、抱きしめもたれながら、可那子はいつも三人の遊ぶ姿を眺めていた。
そしてそれは、心を許しすぎた油断だったのか――。
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