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可那子がここ虚圏に囚われてから、一週間ほどが過ぎたと思われる。
虚圏では、時間の概念がはっきりしない。
感覚的にそのくらいというだけで、実際現世から可那子が消えてどのくらい経ったのか、可那子には分からなかった。
そう、可那子には分からないが、グリムジョーたち破面にとってはしっかり時間の感覚があるようで、そのリズムに合わせ可那子も日々を過ごしていた。
あの日以来、グリムジョーは可那子を抱こうとはしなかった。
というよりは、そもそも必要以上に近付いて来ず、一緒にいる時でも触れられることはなかった。
そしてまた時が経つにつれ、可那子は自分の置かれている状況を少しずつ受け入れ始めていた。
初めは諦めに似た心境だったかもしれない。
しかしその気持ちもひとりで外出を――といってもグリムジョーの宮の中だけであり、特に何があるわけでもないのだが――いちおうは許され、グリムジョーに連れ回される中で虚夜宮の住人たちと知り合って行くうちに少しずつ薄れていった。
部屋は違ってもグリムジョーの霊圧は強く、常に監視されている感覚はあるものの、ある程度の自由は与えられていたのだった。
その自由な時間の中、グリムジョーの宮の中を今日も可那子は歩いていた。
虚夜宮はとてつもなく広いとグリムジョーに聞かされていたが、
「この宮だけでも、異常な広さだよね」
可那子は呟きながら角を曲がる。
「また知らない場所…」
そこには、他とは雰囲気の違う扉があった。
そっと押してみると、案外すんなりとそれは開いた。
薄暗い宮内に人工の光が射し込む。
「庭…?」
軽く目を細めながら可那子は、歩を進め外に出る。
辺りを見渡すと、遠くの方にも宮が見えた。
グリムジョーと同じ
「なんでこんなとこに人間がいるのよ」
「!?」
誰もいなかった筈の背後から突然声が聞こえ、可那子は弾かれたように振り返る。
「ロリさん…メノリさん…」
そこに立っていたのは、破面たちを統率する藍染という男に仕えているふたりだった。
藍染惣右介――崩玉なるものの力によってグリムジョーたちのような成体の破面を産み出した、裏切りの死神。
十刃という階級を作ったのも彼だとグリムジョーは話していた。
可那子は藍染には会ったことはないが、このふたりには一度だけ会ったことがある。
気性の激しいロリと、落ち着いた感じのメノリ。
しかしふたりとも人間である可那子が気に入らないようで、会った瞬間からあからさまな敵意をむき出しにしていた。
「気安く呼ぶんじゃないわよ。なんでこんなとこにいるのか聞いてんでしょ、質問に答えなよ」
相変わらず敵意に満ちた口調でロリが言うと、
「あの扉を出たらグリムジョーの宮じゃない。痛い目にあいたくなかったらさっさと戻った方が身のためよ」
メノリが多少フォローするように付け加える。
「そうなんですか…ごめんなさい、知らなくて…あの、あたし、戻ります」
後ずさりしながら答え、その後慌ててふたりの横をすり抜けて戻ろうとする可那子の腕をロリが掴んだ。
「あんたさぁ、あいつ満足させてやってんの?あいつって夜も激しそうだもんね」
顔を近付け、いやらしく笑いながら尋ねてくる。
「何、ロリあんたあいつとヤりたいの?」
「まさか!あんなヤツ願い下げよ!だってあの性格だよ?あれで淡泊だったら笑っちゃうでしょ」
その言葉に茶々を入れたメノリと言い返したロリが楽しそうに笑い合う横で、
「そんな…」
可那子は戸惑い、真っ赤になって口ごもる。
「まさか、まだなの?あのグリムジョーが!?」
その様子を見て驚きの声を上げるロリ。
しかしその後嘲笑を浮かべると、
「たかが人間のあんたなんか、それ以外どんな利用価値があるっての?ま、せいぜい虚のエサにされないように気を付けなよね」
そう言い捨て、きゃははと笑いながらメノリと共に去って行く。
可那子は愕然とした表情でしばらくその場に立ち尽くしていた。
そして、はっと気付くと慌てて宮の中に戻る。
自室への通路を歩きながら、可那子は考えていた。
確かにそれ以外…グリムジョーが自分を囲っておく理由なんて考えられない。
抱かれたいわけじゃない、そんなんじゃない。
けれど、考えれば考えるほど分からなくなってしまう。
グリムジョーは、何を考えてるの…?
そんな風に考え事をしながら、それでもこの広い宮の中を迷わず自分の部屋まで戻る可那子。
それはひとえに可那子がグリムジョーの霊圧を感じ取り、そちらの方向へ向かうことで迷わずにすんでいるということに他ならないのだが…可那子自身、そのことにはまだ気付いていなかった。
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