峯義孝②
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「こんな時間までどうしたんです?」
「ひゃっ!?」
放課後の生徒会室。
突然声をかけられ驚いてそちらを見ると、会長の峯先輩が入り口に立っていた。
「びっくりしたぁ…。あ、お疲れさまです先輩」
「ああ、お疲れさま。…じゃなくて、こんな時間まで何を?もしかしてお願いした仕事、大変でしたか?」
先輩が心配そうに訊いてくれるのが申し訳なくて、あたしは慌てて答える。
「いえ違うんです!頼まれた仕事が早く終わったので宿題も片付けちゃおうと思ったんです。そしたらこれがなかなか手強くてですね」
すると、ふっと笑った先輩はあたしが咄嗟にノートで隠した書類をひょいと持ち上げた。
「あなたは嘘をつくのが下手ですね」
「…ばれちゃいましたか」
あははと笑うと、先輩は申し訳なさそうに言う。
「あなたのそういう所、嫌いではないですよ。けれどすみません、こんな大変な仕事を押し付けるような形になってしまって」
「とんでもないですよ!それに嬉しかったですし、あたしなんかを使ってもらえて」
そもそもこれは先輩の仕事だったんだけど、どうしても外せない会議のせいであたしに回ってきたのだ。
すると先輩はもう一度ふ、と笑って口を開いた。
「なんか、なんて言わないでください。本当は分かってたんです、終わらない量だということは。だからあなたにお願いしたんですよ」
「え?それってどういう…」
「そのままの意味です。そうすれば責任感の強いあなたはきっと終わるまで帰ろうとしない。会議を終えた俺がここに来れば、こうしてふたりきりになれることは必然です」
淡々と言われて頭がついていけないんだけど、要するに先輩はあたしがここにいるのを分かってて戻ってきた?
ふたりきりになるために?
「あの、あたし今、…告白、されてますか…?」
思わず口走ってしまったあたしの言葉に先輩が目を見開いて、あたしははっと我に返った。
「って、やだあたし何言ってるんだろ…!」
だけど先輩はその後すぐにその目を細めて、
「いえ、察しが良くて助かります。もうすぐ俺は卒業ですから、その前にあなたを手に入れておきたかったんですよ」
なんてとんでもないことを言ったかと思えば、
「さ、では手伝いますからまずはこれを終わらせてしまいましょう」
さらりとそう言ってあたしの隣に腰かけ、書類を広げた。
「すみません、困らせてしまいましたか」
「いえ、すごくびっくりはしましたけど…」
ペンを走らせていたら先輩にぽつりと訊かれて、あたしは正直に答える。
「嬉しかった、です」
それを聞いてそうですか、と小さく呟いた先輩を見ると、どこかほっとしたような表情を浮かべていた。
その表情が次の瞬間にはとても真剣なものになって、あたしの胸はとくんと脈打つ。
その瞳に射竦められて何も言えないでいると、では改めて、と先輩が呟いて言葉を紡いだ。
「あなたが好きです。俺と、付き合ってくれますか?」
入学した時から憧れて尊敬して、生徒会に入ってからは大好きな存在になった先輩。
卒業してしまった後も、学校では会えなくても、もう寂しくないんだ。
そんなことを思いながら小さく頷いたあたしは、先輩の胸にそっと抱き寄せられた。
突然のことに心臓が跳ねる。
でもそんな先輩の胸もすごくドキドキしてた、ってことは――…あたしだけの秘密。
(15,8,24)
1/1ページ