堂島大吾③
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大吾と出逢ったのは、私が16歳、大吾が12歳のバレンタインの日だった。
可愛らしい花束を抱えた大吾が、顔を真っ赤にして告白してくれたことは今でも忘れられない。
見た目はまんまお坊ちゃんという感じで、遠巻きに見える黒いスーツの男の人たちに正直びびったのも忘れられない。
名前を聞いた時に、これは断ったりなんかしたら私はこのまま東京湾だろうか、なんて任侠映画みたいなことも真剣に考えた。
だって堂島組って名前くらい、私だって知ってる。
大吾が自分で言ったわけじゃないけど、堂島の名と遠巻きの黒スーツ、大吾が降りて来た車とか見たら、そのくらい察しがつくってもんでしょ。
でも何より子供の悪ふざけだと一蹴してしまえなかったのは、大吾の真っ直ぐな瞳だったと思う。
幼い頃からそういう世界で生きているからなのかは分からないけど、少し大人びた瞳。
けれど大人になったら忘れてしまうかもしれない、純粋さみたいなものも併せ持っていたのがとても印象的だった。
大吾は私に一目惚れしたと言っていた。
ただそのきっかけが、同級生に絡んでいたチンピラを撃退した私の姿だったと言われた時は恥ずかしいやら照れくさいやらでなんとも言えない感情になったけれど。
それからゆっくりと時は過ぎた。
俺が16歳になったら付き合ってくれ。
そう言った大吾は、その時14歳だった。
私に追い付くために早く大人になろうとする大吾の想いが、なんだかくすぐったかった。
そして大吾が16歳になった時、改めて告白されて私たちは付き合い始めた。
抱かれたのも、同じ16歳の時。
いつの間にこんなに『男の人』になったんだろうって…すごくドキドキした。
私たちが出逢ったあの日から大吾は、毎年バレンタインデーには花を贈ってくれる。
離ればなれになってしまったこともあったけれど心はいつも繋がっていたし、そんな時でも花は必ず贈ってくれた。
昔は大吾よりも大きかった私の体。
ふざけ半分で抱き上げたこともあるその体に、今はすっぽり包まれる。
「…なに笑ってんだよ」
なんか思い出したらすごく愛おしくて、くすくす笑ってしまった私を大吾が強く抱きしめる。
「んー…、幸せに浸ってた」
私が答えると、大吾は背中をベッドの枕元に預けた。
それに引っ張られて、私はその大吾の胸に背中を預ける。
背中に伝わる、あたたかなぬくもり。
いつでも私に、優しさと安心を与えてくれる。
あの日私が大吾に出逢ったことは、きっと運命だったんだろうな。
そんなことを想いながら私は、今年のバレンタイン、花と共に贈られた左手の薬指の指輪に――そっと口づけた。
(15,2,21)
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