峯義孝⑧
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今日は彼女のたっての希望で、とある神社の春祭りへと足を運んでいた。
付き合い始めた当初から感じていたが、彼女が何も言わないのだからと考えないようにしていたことがあった。
しかしそうやってごまかし続けることにもいい加減嫌気がさし、祭り客でごった返す参道からわき道へと彼女を連れ出して俺は訊いた。
「俺と歩くのは恥ずかしくないのですか」
「え!?どうしてですか!?」
「あなたも気付いているでしょう?周りの人たちの視線に」
心底驚いた様子で訊き返してくる彼女に続けて問うと、
「あー…それは仕方ないですよ」
とその表情がわずかに曇る。
しかし続けられた言葉に俺は驚きを隠せなかった。
「こんな小娘がこんなイケメンを連れて歩いてるんですから」
「…見るからに俺がカタギではないからでは?」
「何を言ってるんですか!」
口をついて出た俺の言葉を彼女は即否定し、そして続ける。
「実は密かに優越感に浸ったりしてたんですよ?あたし」
「……」
言葉が出なかった。
俺がマイナス方向に考えていたことを、彼女は至極当然のようにプラス方向に考えてくれていた。
本当に、なぜこんなにも彼女は俺の望む以上の物をいつも俺に与えてくれるのだろう。
しかしそんな彼女の表情がまた少し曇る。
「けど…峯さんこそ恥ずかしくないですか?本当は分かってるんです、あたしは峯さんには不釣り合いだってこと…」
「それこそ何を言ってるんですか、ですよ。俺にはあなたしかいないというのに」
欲しくて仕方がなくて、この世界に連れ込む危険性を分かっていてもどうしても手に入れたかった、ただひとりの女性なのだから。
「もう、そういうこと…っ、」
しかしそんな俺にだって分かっていることもある。
それは、無意識ではあるのだろうけれど俺を悦ばせるツボを心得ているようなのに、自分が言われることには慣れていないということ。
改めて強く感じた想いを率直に告げると、案の定しどろもどろになりつつ少し早口になる。
「あっお腹空かないですか、お好み焼きとか好きですか?あーでも峯さんは舌が肥えてるから屋台の物なんてダメですかね?」
勝手に頬が緩むのをそのままに、俺は彼女のやわらかな体を捕まえる。
「好きですよ、お好み焼きも…あなたもね」
そう言って桜舞う木の下、頬を赤く染めた彼女にそっとキスをした。
(18,1,23)
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