峯義孝⑤
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クリスマスなんですが、と峯さんが申し訳なさそうに言う。
忙しい峯さんとは普段のデートもままならなくて、だから期待してなかったと言えば嘘になるけど諦めていたのも確かだった。
「そんな顔しないで、峯さん。大丈夫、峯さんが忙しいのは分かってるから」
峯さんを困らせたくなくて、そんな顔をさせたくなくて、あたしは笑ってみせる。
「埋め合わせは必ずしますから」
それでも峯さんはそう言って、強く抱きしめてくれた。
***
そうしてやってきたクリスマス当日。
やっぱりどうしても、少しだけでも逢いたくて、あたしは峯さんがまだ仕事をしてるだろう白峯会の事務所を訪ねた。
片瀬さんに案内されて会長室へ入ると、
「来てくれたのですね」
峯さんは仕事を邪魔したはずのあたしに嬉しそうな顔を見せてくれて、申し訳ないと思う反面、安堵の息も漏れてしまう。
「ごめんなさい峯さん、でもどうしても少しだけでも逢いたくて…」
それでもやっぱり申し訳なさが先にたってしまうあたしに、峯さんは謝らないでください、と優しく笑ってくれる。
「本当は俺から訪ねようかとも思っていたのですが、あなたが来ると…いえ、来てくれると思って待っていたんですから」
「…どういうこと?」
もう帰りますと切り出さなくちゃと思っていたあたしは、その言葉に驚いて訊き返した。
すると峯さんは唐突に提案を投げかける。
「少し飲みにでも行きましょうか?」
「え、でも峯さんお仕事…」
突然すぎて戸惑いを隠せないあたしに峯さんは答えてくれる。
「できるものは多少ごり押ししてでもキャンセルして、遅らせられるものはぎりぎりまで延ばしました。あなたにはいつも寂しい思いをさせてしまってますから、どうしても今日は体を空けたかったんです」
結局こんな時間になってしまいましたけど…と自嘲気味に笑う峯さんに、あたしは首を横に振ってから答えた。
「すごく、すごく嬉しい!でも、一緒にいられるなら…ここで、峯さんとふたりきりがいい…」
すると少しだけ瞳を見開いた峯さんはその後ふっと笑って、本当にあなたというひとは…と小さく呟く。
そして机の上の受話器を取り、もう上がっていいと片瀬さんに内線を入れた。
***
「メリークリスマス」
シャンパンでささやかに乾杯した後、峯さんは優しいキスと小さな箱に入った素敵なプレゼントをくれた。
「ごめんなさい、あたし…」
遅れて渡すはずだったプレゼントは部屋に置きっぱなしのまま。
申し訳なくて謝ると、峯さんは少し驚いた様子であたしを見た。
「プレゼントなら、もうもらいましたよ?」
「え?」
「俺にはあなた自身とこの時間が最高のプレゼントですから」
「峯さん…」
峯さんの気持ちが嬉しくて、でもなんだか恥ずかしくて、あたしは俯いてしまう。
すると峯さんはふと立ち上がって、そんなあたしを抱き上げた。
そのまま会長室に備え付けの小さな仮眠室に運ばれて、そこであたしたちは体を重ねた。
いつも優しくタフに抱いてくれる峯さん。
だけど今日はその優しさがいつもより際立って、なんだか涙が出そうになる。
愛していますと囁きながら、峯さんはあたしの中で、果てた。
***
窓の外に目をやると、やわらかく舞う雪を街灯りが幻想的に照らし出している。
素敵な夢を見れますように、願わくはそこにあたしもいますようにと聖夜に祈りながら――…
隣で無防備に眠る峯さんの頬に、そっとキスをした。
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