君想うがゆえ
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その日は珍しく、出かけていたゲストが部屋に戻ると渡瀬が既に帰って来ていた。
「ごめんなさい、すぐ食事の支度しますね」
「…ああ」
「渡瀬さん…?」
急いでキッチンに向かおうとするゲストだったが、渡瀬の様子がいつもと違うことに気付きそちらに向き直る。
「きゃあっ!」
直後景色が回転し、目の前には渡瀬の顔、その向こうは天井。
ゲストの体は強い力でソファに組み敷かれていた。
「渡瀬さ…」
「誰や」
「え?」
「あの男は誰やて訊いてんのや」
「あの男…?」
その問いの答えを考え、少しの間のあとゲストの頭にはひとりの男の顔が浮かぶ。
買い物をしている時に、高校卒業以来初めて会った懐かしい顔。
「あ、彼は東京の…高校の時の同級生で…っ、ゃ、渡瀬、さん…!?」
その答えを聞いた瞬間、渡瀬はゲストの腰を抱き首もとに顔を埋めた。
そこに噛みつくように痕を残しながらスカートをたくし上げる。
「待…って、待ってください渡瀬さ、や、ああぁ…っ!」
そのままベルトを緩め取り出した自身を、ゲストのショーツをずらしたそこに突き入れた。
渡瀬がなぜ怒っている様子なのか、なぜこのような行動に出ているのか分からず、ゲストは困惑していた。
戸惑いながら、ただ渡瀬を受け入れることしかできない。
しかし一方の渡瀬は分かりすぎるほど分かっていた。
自身を突き動かすこの感情が何であるのか。
渡瀬とゲストは、普通に考えて気にしないとは言い切れない年齢差がある。
とは言え当人たちが気にしていないのだから問題はなく今まで過ごしてはきた。
しかしそこに現れた男は、ゲストの同級生。
ゲストと同じ年。
遠目ではあったが、楽しそうに笑い合うその姿は普通の恋人同士のようだった。
見た目で言えば渡瀬と並ぶよりあの男と並んだ方がお似合いだと、十中八九言われるだろう。
だったら手放してやったほうがいいのではないかと考え、出来もしないくせにと苦笑いが浮かぶ。
その感情は若さに対する焦りであり、間違いなく嫉妬だった。
渡瀬の下でゲストは苦しげに啼き、それでもその体は渡瀬に応えた。
しかしゲストの中に欲望を吐き出した瞬間、渡瀬を襲ったのは自己嫌悪。
感情のままにそれをぶつけてしまったことを後悔することしかできなかった。
「すまんかった…」
「どうして、謝るのですか…?」
渡瀬がゲストの頬をそっとなでると、ゲストは小さく首を傾げて渡瀬を見る。
大きく息を吐き出してから渡瀬はゲストの体を抱き起こし、そして強く抱きしめた。
「若さ――…に、…焦ったんや」
ぽつり呟かれた言葉の意味が分からず、ゲストは渡瀬を見上げる。
親にさえ愛された記憶がなく、卒業と同時に逃げるように家を出た。
たどり着いた大阪で渡瀬と出逢い、そこで初めて人に愛され人を愛することを知ったゲスト。
渡瀬を愛する喜びしか知らないゲストは、嫉妬という感情をもったことがなかったから。
それを理解している渡瀬が胸の内を誤魔化さずに口にすると、聞いていたゲストの表情が少しずつ曇っていく。
「私と…別れた方がいいと、考えていたのですか…?」
今まで聞いたことのないわずかに怒りを含んだ声音に、渡瀬はすぐに答えることができない。
しかしゲストは渡瀬の返事を待つことなく強い口調で続けた。
「そんなの嫌です!私には、渡瀬さんだけなのに…!」
渡瀬はその体をもう一度強く抱きしめてから、ゲストに真っ直ぐ向き合った。
「自惚れと言われてもええ、けど心の何処かではお前はそう言ってくれるような気がしとった。嫉妬なんかする必要ない、馬鹿馬鹿しいと思うのに尚そう思ってしまうほど…」
そこまで言って渡瀬はいったん言葉を切り、困ったように笑う。
「俺はお前に惚れてんねやな」
渡瀬のその真っ直ぐな言葉と普段は決して見せない表情にゲストは驚く。
少し恥ずかしくて、どこかくすぐったくて。
――…だけどとても愛しくて。
「愛しています…、勝さん…」
渡瀬の体にきゅっと抱きつき、ゲストはその耳もとにそっと囁いた。
→あとがき。
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