片道切符
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お人好しな父親が連帯保証人になった親友が借金をした相手は、泰平一家の息がかかった金融会社だった。
その親友が父を裏切り姿を消した。
連日やって来る取り立てに怯え憔悴しきった父を夕凪は見ていられなかった。
異常な早さで膨らんでいく利子だけでもなんとかできないかと、父を助けたい一心で夕凪は泰平一家へと出向いていた。
突き付けられる条件は想像に難くなく、遠回しなそれを夕凪は単刀直入に言い換える。
「私が言うことをきけば、父を助けてくれるんですね?」
ソファにふんぞり返ったまま、泰平一家組長の阿波野大樹は満足げに口角を上げた。
「理解が早くて助かるぜ、お姉ちゃんよ」
***
経験がないわけじゃないのだけが救いだった。
今だけ、今この時間さえ我慢すれば、お父さんが助かるんだから…!
夕凪は必死に自分にそう言い聞かせ、用意された部屋で阿波野に抱かれた。
苦痛でしかなかったそれの後、利子に対する交渉をしようとする夕凪に、阿波野は手にしたリモコンを操作しながら言った。
「まさかとは思うが、一度で終わると思ってるわけじゃねえよな?」
直後、部屋に備え付けられたテレビの画面に信じられない光景が映し出された。
先ほどの情事。
あられもない姿で阿波野に組み敷かれ声を上げる自分。
「うそ…」
言葉が出ない夕凪に阿波野はにやりと笑いながら言う。
「俺の呼び出しには大人しく従っとけ。そうすりゃ悪いようにはしねえからよ」
夕凪にとってこれ以上の悪い状況などひとつしか思い浮かばなかったが、今は阿波野の言葉を信じるしか道はない。
重い体を引きずり帰路につきながら、夕凪は精一杯の覚悟を決めるのだった。
***
それから何度目かの呼び出しを受けた日、夕凪はいつものようにいつもの部屋に向かった。
先に行ってシャワーを浴びておけと言われたままに、そのための支度を整える。
しかしバスルームから部屋に戻ったところで夕凪の足が止まった。
そこにはふたりの男がいたからだった。
ひとりは阿波野。
そしてソファに腰掛ける見知らぬ男。
「おう、紹介しとくぜ」
戸惑う夕凪に気付いた阿波野が男を指して言う。
「久瀬拳王会の久瀬大作。俺の兄弟分だ」
兄弟分、そう聞いた夕凪の中には悪い予感しか浮かばない。
そしてそれは、直後に現実となって夕凪を襲うのだった。
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