20:そんなところが愛しくて
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「一緒に暮らしませんか」
そんな峯の申し出に、可那子はすぐに答えることができなかった。
返事はいつでも結構ですからと言って帰って行く峯を見送った可那子は、小さくため息を吐く。
そしていつでもいいとは言われたものの、いつ返事を聞かれるかと緊張しながら峯と逢っていれば、否が応でもそれは態度にも表れてしまう。
「一緒に暮らしませんか、と言ったことですが…」
それから何度目かのデートの時、峯は申し訳なさそうに切り出した。
可那子の肩がびくりと震えるのを見て、その頬にそっと手を添えながら続ける。
「断ってくれていいんですよ?困らせてしまってすみませんでした」
「違います困ってなんか…っ!」
すると可那子は慌ててその言葉を否定する。
「困ってなんか、ないです…」
「理由を、訊いても?」
頬に添えた手を握りしめる可那子の手をそっと握り返して訊ねると、俯いたまま可那子はぽつりぽつりと話し出した。
「私、料理も掃除も得意じゃありません。…あの、夜、も…峯さんに満足してもらえてる自信が、ないですし…。それに朝寝坊もするし、お弁当をさぼったりもします…」
そこで一旦言葉を切ってから可那子は、だから…と続ける。
「だからこんな状態で一緒に暮らしたりなんかしたら、峯さんに幻滅されてしまう…。そう思ったら、こわかったんです…」
峯は最後まで黙って可那子の言葉を聞いていた。
そして少しの沈黙の後ふっと笑い、可那子の髪を優しくなでながら口を開く。
「あなたは本当に可愛い人ですね。俺はあなたのそんなところが愛しくてたまらないのですよ」
「そんな…ところ?」
訊き返す可那子に、峯はふわりと笑って頷いて見せる。
「あなたが俺を見て俺のことだけを考えてくれる。全身で俺を好きだと言ってくれる。――…そんなところ、です」
「峯、さ…」
頬を染めた可那子を峯は自分の胸に抱き寄せた。
「俺はね、可那子さん。料理とか掃除とかセックスがうまい女性と付き合いたいわけじゃないんですよ。あなたが…可那子さんがいいんです」
ゆっくりとした口調でそう言った後、僅かに自嘲気味に笑って続ける。
「ですが、一緒に暮らそうと言ったのは可愛いあなたをずっと見ていたい俺のわがままですし、夜は俺が…かなり無理させてると思ってます。愛想を尽かされるのはどちらかと言うと俺、じゃないですか?」
そう訊かれた可那子は、首を強く横に振った。
峯の胸を押し体を少し離してその顔を見上げると、可那子にしては珍しい強い口調で言う。
「私だって峯さんがいいです!峯さんじゃなきゃ、いやです…っ」
瞬間的に峯は、その唇を奪っていた。
噛みつくように口づけて舌を絡め取り、蹂躙する。
「私、無理なんてしてませんから…、峯さんが好きなように…抱いて、ください…」
懸命に応えてくれる可那子が愛しすぎてめちゃくちゃに愛したい衝動を抑えようとする峯の理性は、唇を解放され小さく息を吐いた可那子のひとことに容易く奪い取られてしまう。
寝室のベッドへと可那子を運びその体を組み敷いた峯は、熱を帯びた瞳で可那子を見つめた後耳もとに寄せた唇で囁いた。
「いつもならもう少し余裕があるんですが…すみません、今日は覚悟、してくださいね…」
そんなところが愛しくて
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