17:偶然見てしまったので
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「お邪魔、しまーす…」
返事はないと分かっている部屋に、可那子は合鍵を使って入る。
ここは錦栄町の品田のアパート。
遠距離のふたりはいつもなら駅前で待ち合わせるのだが、品田から仕事が遅くなりそうだから先に部屋へ行っててほしいという連絡がありこうしてひとり部屋へとやって来たのだった。
相変わらず散らかった部屋に品田らしさを感じてふふっと笑った可那子は、その品田の匂いに包まれほっとしながらひと息つく。
その後、コーヒー切らしてないかな…と思い立ち上がるために手をついたクッションの下に、何か固い物があることに気付いた。
見るとそれはリモコンで、同時に聞こえた機械音で可那子はそれがビデオデッキのものであることを知る。
デッキの小さな窓の数字が動いているのを見て再生ボタンを押したらしいことに気付いた可那子は、
「品田さんはいつもどんなの観てるんだろ」
少しの好奇心から、テレビの電源をオンにした。
『ああんっ!!あっ、ああっ、もう、イっちゃう…っ!!』
「!!?」
直後突然響いた女の嬌声と、その後画面に映し出された裸の男女。
驚きすぎて固まってしまった可那子はテレビを消すこともできず、その後も目の前で繰り広げられる営みから目を逸らせなくなってしまっていた。
どのぐらいそうしていたのか、玄関の鍵が開く音で我に返った可那子は慌ててテレビの電源を落とした。
「はぁー疲れたー。ただいまー、ごめんねひとりにさせちゃって…、って、どしたの?」
「え!?どうもしないですよ、お帰りなさい品田さん、お疲れさまでした」
「うん、ただいま。それから、来てくれてありがと」
焦りから明らかに挙動不審になってしまっていた可那子だったが、ビデオデッキのカウンターが動いているのに気付いた品田はそれ以上は何も言わなかった。
「ごめんね、ちょっとトイレ」
その時品田がそう言って席を外したのを幸いにと、可那子はビデオデッキの電源を落とした。
という可那子の行動を的確に想像しながらトイレで時間を潰すうちに、品田は少しだけ意地悪したくなってしまう。
トイレを出た後、証拠も消せて内心安堵しているだろう可那子をきゅっと抱きしめた。
「久しぶりだから、さ…もう、抱いていい?」
「っ、シャワー…、浴びたいです…」
品田が訊くと、可那子は恥ずかしそうに訴える。
「可那子ちゃんの匂い消したくないから、ダメ」
「、でもやっぱり…っ」
それを却下されしかしそれでも食い下がる可那子に、品田はもうひとつ訊いた。
「もう濡れちゃってるから?」
「…っ!!」
その言葉で全部バレていたことに気付いた可那子は、瞬間的に真っ赤になり涙目になる。
「ごめん、幻滅した?」
そんな可那子をもう一度強く抱きしめて訊く品田に、しかし可那子はいいえ、と答える。
「私が、待たせてるんですし…。それに…」
手掛けているプロジェクトが終わったら、可那子は今の職場を辞め名古屋に引っ越して来ることになっていた。
「それに私も…たぶん、欲求不満…、ですから…」
「――…っ、」
その言葉に自分の限界を感じた品田は、可那子の顔を覗き込んで言う。
「やっぱほんとに抱くよ?いいよね?」
可那子は返事の代わりに品田の首に腕を回すと、その唇にそっとキスをした。
偶然見てしまったので
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