08.
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その夜、夢を見た。
真っ白な空間。
周りが見えないほど白く輝く空間に、私はひとり横になっていた。
「っ、…あれ?」
目を開ければ、その目映さに反射的につむってしまう。
明るく、眩む視界に私は疑問ばかりうかべていた。
どうしてこんなところにいるのだろう。
すごく明るい場所。"彼"のところに来てからはずっと世界は暗かったのに。
これは夢?…夢のはず。
こんな場所は知らないし、来たこともない。
昨日は手紙をしまってから、ベッドに横になった。
でも、これが夢だとしてもいつも見ている夢とはどこか違う。
私の、しっかりとした意志が働いている。
夢は、第三者のような目線がほとんどだったのに。
とりあえず、ここがどういう場所なのか、見るだけでもしなきゃ。
地面と思われる、冷たいような温かいような不思議な感覚の場所に手をついた。
まぶたに突き刺さる光を感じながら、私はおもむろに上体を起こす。
大丈夫。少し目は慣れてきた。
ゆっくりと瞳を開けようとした、ちょうどその時だった。
「初めまして、かの。アリス・八神嬢。」
「っ、!」
聞いたことのあるような、独特の雰囲気をした話口調。
突然、すぐ目の前から声をかけられ、私は肩を跳ねさせた。
思わず目を開けてしまう。
突き刺すような明るさが目の奥を突いたけれど、気にならなかった。
目の前に立っていたのは、白く豊かな髭を蓄えた老人だった。
半月型の眼鏡をしていて、その奥にはキラキラした淡いブルーの瞳があった。
その瞳を見た瞬間、思わずはっと息を呑んだ。
それなりの年のはずなのに、そうは思えないほど綺麗な瞳をしていたから。
子供の無邪気さのような、輝く瞳。それでいて、その中に燻った強い意志。
無意識のうち、私は口を開いていた。
「アル、バス…ダンブルドア…。」
その自分の声を聞いて、相手のことをわかることができた。
そうだ。この人は、アルバス・ダンブルドアだ。
半月型の眼鏡。淡いブルーの瞳。
蓄えた白髪混じりの立派な髭。それと似た髪。
間違いない。
そう確信して、私は彼を見つめていた。
不思議な気持ちに包まれる。優しい面持ちをした彼から目が離せない。
穏やかな顔をした彼は、ふっと息を吐いて口を開いた。
「やはり、知っておるようじゃの。」
「っ、」
その声を聞いて、はっと我に返った。
ここはどこだろう。どうしているのだろう…私も、彼も。
その疑問が、またあふれてくる。
自然と私は不安げに彼を見上げていて、呟くように言っていた。
「あの…ここは、どこですか…?」
夢なのだろうか。それとも本当に違う場所にいるのだろうか。
彼は優しく微笑み、ぺたんと座り込んだままの私に近づいてきた。
その足取りはしっかりとしていて、流れるようにゆったりとした雰囲気があった。
彼が近づくたび、私の心は落ち着いてくる。
眩しくて仕方がなかった周りも、気にならないほどだ。
彼は半月型の眼鏡の奥にある瞳を、スッと細めた。
「突然のことで驚いたじゃろう。
これは夢じゃよ。現実を伴った夢じゃ。」
「え?」
現実を伴った夢?
どういうことだろう。巧みなその言葉に、戸惑ってしまう。
困ったように彼を見つめていると、彼は瞳を閉じた。
「君を呼んだのは、他でもない。このわしじゃ。
恐らく時間も限られておる。トムが感づくのにそれほど時間はかかるまい。」
「っ、!」
「知っておるよ。君がトムの所におり、そして…異世界から来たということも。」
驚きのあまり、声も出せなかった。
この人はどこまで知っているのだろう。恐怖とも呼べる感情が、胸の中に表れる。
絶句したように言葉を失った私に、彼は穏やかに語りかけた。
「魔法とは不思議なものじゃ。使える者もいれば使えない者もいる。
魔力は力を示すものであり、魔力を得れば得るほど強力な魔法を生み出すことができる。
使い方を間違えれば取り返しのつかない罪を犯すことになるが、うまく使えばこのように出会いを作ることもできる。
そして、大切な者を守り、救うこともできるのじゃ。」
「!」
ゆったりとした口調。
それでも、瞳の中に輝く力強さが威圧するようにこちらに向かってくる。
圧されたようにぼうっとしている私を、彼は優しく立ち上がらせた。
"大切な者を守り、救うこともできる"
その言葉が、何度も私の心に響いていた。
まるで私の心の中にある全てのものを知っているかのような口ぶり。
恐怖からかそれとも歓喜からか、ドクンドクンと脈が大きく打っていた。
なぜか、彼のキラキラとした瞳にとてつもなく惹きつけられる。ある一種の、魔法のように。
あぁ…だから、彼は私にホグワーツからの手紙を送ってきたんだ。
私がこの外に出て、様々な魔法を学びたがっているのを知っていて。
私が、あの人──ヴォルデモート卿──を守りたがっているのを知っていて。
なんて狡い人なんだろう。
穏やかなその容姿にはそぐわない、計算高さ。狡猾さ。
導かれたように、私は自然と口を開いていた。
「そのためには…私は、どうしたらいいですか?」
用意されたかのような言葉。目の前にある扉を開くための呪文のような。
彼は半月型の眼鏡の奥で、あの瞳を輝かせた。
豊かな髭に囲まれた口が、ゆっくりと弧を描く。
彼が何を言うかはわかっていた。
私がどうしたいのか、知っているはずだから。
「もちろん、ホグワーツじゃよ。」
その瞬間、この光に満ちた世界に、闇が現れた。
太陽が雲に覆われ、その光が遮られていくかのように、世界が暗くなっていく。
あの人がしていることだと、無意識に理解していた。
現れる闇を見て、私の心に戸惑いが生まれる。
いずれは戻るつもりでも、あの人から離れなければいけない。
離れた後、どうなるのか。想像つくようでつかなくて、恐ろしい。
それでも、その彼を守りたいと想う心は変わらないだろう。
そう感じ、私はどんどんと暗くなっていく世界を見ながらはっきり言った。
「アルバス・ダンブルドア…。
私を、ホグワーツへ連れていってください。」
「その言葉を、待っておったよ。」
彼は穏やかに微笑み、そう言いながら瞳を閉じた。
ごめんなさい。私はもっと多くのことを学びたいんです。
いつか必ず帰ってきます。たとえ、貴方が受け容れてくれなくても。
あの未来にだけは、させないために。
そう思ったとき、闇に包まれ始めていた世界が一段と明るくなった。
目を突くような光を感じ、眩む視界に瞳を閉じる。
ふっと身体が軽くなったと思うと、身体の内側に巻き込まれるかのような衝撃を感じた。
渦の中に入ったような、目の回る世界。姿くらましに似た感覚だ。
四肢が、頭が、遠心力で飛んでしまいそう。
とてつもない嘔吐感に襲われて、だんだんと気が遠くなっていった。
ガンガンと痛む頭に、私は堪らず意識を手放していた。
真っ白な空間。
周りが見えないほど白く輝く空間に、私はひとり横になっていた。
「っ、…あれ?」
目を開ければ、その目映さに反射的につむってしまう。
明るく、眩む視界に私は疑問ばかりうかべていた。
どうしてこんなところにいるのだろう。
すごく明るい場所。"彼"のところに来てからはずっと世界は暗かったのに。
これは夢?…夢のはず。
こんな場所は知らないし、来たこともない。
昨日は手紙をしまってから、ベッドに横になった。
でも、これが夢だとしてもいつも見ている夢とはどこか違う。
私の、しっかりとした意志が働いている。
夢は、第三者のような目線がほとんどだったのに。
とりあえず、ここがどういう場所なのか、見るだけでもしなきゃ。
地面と思われる、冷たいような温かいような不思議な感覚の場所に手をついた。
まぶたに突き刺さる光を感じながら、私はおもむろに上体を起こす。
大丈夫。少し目は慣れてきた。
ゆっくりと瞳を開けようとした、ちょうどその時だった。
「初めまして、かの。アリス・八神嬢。」
「っ、!」
聞いたことのあるような、独特の雰囲気をした話口調。
突然、すぐ目の前から声をかけられ、私は肩を跳ねさせた。
思わず目を開けてしまう。
突き刺すような明るさが目の奥を突いたけれど、気にならなかった。
目の前に立っていたのは、白く豊かな髭を蓄えた老人だった。
半月型の眼鏡をしていて、その奥にはキラキラした淡いブルーの瞳があった。
その瞳を見た瞬間、思わずはっと息を呑んだ。
それなりの年のはずなのに、そうは思えないほど綺麗な瞳をしていたから。
子供の無邪気さのような、輝く瞳。それでいて、その中に燻った強い意志。
無意識のうち、私は口を開いていた。
「アル、バス…ダンブルドア…。」
その自分の声を聞いて、相手のことをわかることができた。
そうだ。この人は、アルバス・ダンブルドアだ。
半月型の眼鏡。淡いブルーの瞳。
蓄えた白髪混じりの立派な髭。それと似た髪。
間違いない。
そう確信して、私は彼を見つめていた。
不思議な気持ちに包まれる。優しい面持ちをした彼から目が離せない。
穏やかな顔をした彼は、ふっと息を吐いて口を開いた。
「やはり、知っておるようじゃの。」
「っ、」
その声を聞いて、はっと我に返った。
ここはどこだろう。どうしているのだろう…私も、彼も。
その疑問が、またあふれてくる。
自然と私は不安げに彼を見上げていて、呟くように言っていた。
「あの…ここは、どこですか…?」
夢なのだろうか。それとも本当に違う場所にいるのだろうか。
彼は優しく微笑み、ぺたんと座り込んだままの私に近づいてきた。
その足取りはしっかりとしていて、流れるようにゆったりとした雰囲気があった。
彼が近づくたび、私の心は落ち着いてくる。
眩しくて仕方がなかった周りも、気にならないほどだ。
彼は半月型の眼鏡の奥にある瞳を、スッと細めた。
「突然のことで驚いたじゃろう。
これは夢じゃよ。現実を伴った夢じゃ。」
「え?」
現実を伴った夢?
どういうことだろう。巧みなその言葉に、戸惑ってしまう。
困ったように彼を見つめていると、彼は瞳を閉じた。
「君を呼んだのは、他でもない。このわしじゃ。
恐らく時間も限られておる。トムが感づくのにそれほど時間はかかるまい。」
「っ、!」
「知っておるよ。君がトムの所におり、そして…異世界から来たということも。」
驚きのあまり、声も出せなかった。
この人はどこまで知っているのだろう。恐怖とも呼べる感情が、胸の中に表れる。
絶句したように言葉を失った私に、彼は穏やかに語りかけた。
「魔法とは不思議なものじゃ。使える者もいれば使えない者もいる。
魔力は力を示すものであり、魔力を得れば得るほど強力な魔法を生み出すことができる。
使い方を間違えれば取り返しのつかない罪を犯すことになるが、うまく使えばこのように出会いを作ることもできる。
そして、大切な者を守り、救うこともできるのじゃ。」
「!」
ゆったりとした口調。
それでも、瞳の中に輝く力強さが威圧するようにこちらに向かってくる。
圧されたようにぼうっとしている私を、彼は優しく立ち上がらせた。
"大切な者を守り、救うこともできる"
その言葉が、何度も私の心に響いていた。
まるで私の心の中にある全てのものを知っているかのような口ぶり。
恐怖からかそれとも歓喜からか、ドクンドクンと脈が大きく打っていた。
なぜか、彼のキラキラとした瞳にとてつもなく惹きつけられる。ある一種の、魔法のように。
あぁ…だから、彼は私にホグワーツからの手紙を送ってきたんだ。
私がこの外に出て、様々な魔法を学びたがっているのを知っていて。
私が、あの人──ヴォルデモート卿──を守りたがっているのを知っていて。
なんて狡い人なんだろう。
穏やかなその容姿にはそぐわない、計算高さ。狡猾さ。
導かれたように、私は自然と口を開いていた。
「そのためには…私は、どうしたらいいですか?」
用意されたかのような言葉。目の前にある扉を開くための呪文のような。
彼は半月型の眼鏡の奥で、あの瞳を輝かせた。
豊かな髭に囲まれた口が、ゆっくりと弧を描く。
彼が何を言うかはわかっていた。
私がどうしたいのか、知っているはずだから。
「もちろん、ホグワーツじゃよ。」
その瞬間、この光に満ちた世界に、闇が現れた。
太陽が雲に覆われ、その光が遮られていくかのように、世界が暗くなっていく。
あの人がしていることだと、無意識に理解していた。
現れる闇を見て、私の心に戸惑いが生まれる。
いずれは戻るつもりでも、あの人から離れなければいけない。
離れた後、どうなるのか。想像つくようでつかなくて、恐ろしい。
それでも、その彼を守りたいと想う心は変わらないだろう。
そう感じ、私はどんどんと暗くなっていく世界を見ながらはっきり言った。
「アルバス・ダンブルドア…。
私を、ホグワーツへ連れていってください。」
「その言葉を、待っておったよ。」
彼は穏やかに微笑み、そう言いながら瞳を閉じた。
ごめんなさい。私はもっと多くのことを学びたいんです。
いつか必ず帰ってきます。たとえ、貴方が受け容れてくれなくても。
あの未来にだけは、させないために。
そう思ったとき、闇に包まれ始めていた世界が一段と明るくなった。
目を突くような光を感じ、眩む視界に瞳を閉じる。
ふっと身体が軽くなったと思うと、身体の内側に巻き込まれるかのような衝撃を感じた。
渦の中に入ったような、目の回る世界。姿くらましに似た感覚だ。
四肢が、頭が、遠心力で飛んでしまいそう。
とてつもない嘔吐感に襲われて、だんだんと気が遠くなっていった。
ガンガンと痛む頭に、私は堪らず意識を手放していた。
