07.
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あの後、私は部屋に戻った。
この甲にある印が、とても大切なものに思える。
緩んだ口元のまま、ベッドに腰を沈める。
ふわんとしたベッドが、今はとても温かく感じた。
私はパタンと、そのまま身体を後ろに倒していった。
背中から包まれる感覚に、私は安心を覚えていた。
「…、」
ふう、と肺に入っていた空気を全て吐き出す。
空になった肺には新しく冷たい空気が送り込まれ、私の中を満たしていった。
ちらと部屋に視線を送れば、いつもと変わらない黒を基調とした景色が広がる。
もう、夜は遅い。暗い部屋と同じような空を外はしていることだろう。
闇に身を任せて眠ってしまおうかとも考えたが、まだその時ではないと感じた。
目は冴えているし、何より昨日は眠りすぎた。
そう思えば、過度の睡眠による身体のダルさが身を襲ってくる。
起きていたとしても、今から何をすればいいのだろう。
ルシウスを呼ぶのはさすがに悪く感じる。
隣室には本がたくさんあるが、この邸 の物には無闇に触れないと決めた。
この部屋には、時間をつぶせるようなものはないだろう。
考えても、これから起きていられるのに使えるものはなかった。
そんなとき、ふと、外に出られたらと思ってしまう。
先程までそれでいいと思っていたけれど、気が変わるのは一瞬だと身にしみて感じた。
「ひま、だなぁ…。」
小さな声で呟いても、音のないここでは大きく響いて聞こえる。
どうにもならない状況に、私は自然と身体を起こしていた。
立ち上がって、部屋をもう一度見回す。
本当に何もないかと確かめるようにうろうろと歩きまわった。
ない。本当に、何もない。
あるといったら机に椅子、タンスとクローゼット、鏡、ベッドくらいだ。
一瞬、掃除でもしようかと思ったけれど、するまでもなく全て整っている。
落胆したようにため息を吐き、ベッドになだれ込んだ。
ばたんと横になり、自分の手の甲に目を移す。
相変わらず綺麗に開ききった薔薇の花。
舌を出しながらシュルシュルと這っている蛇。
「ねぇ、君はひまにならないの?」
答えを求めるわけもなく、私は甲にいる蛇に話しかけていた。
やはり、反応は何もない。
なんとなく虚しくなって、自嘲気味に笑みをこぼした。
私は何をしているんだろう。そう思いながら、ゆっくりと瞳を閉じる。
すごく静かな部屋。何の音も聞こえない。
不思議な感覚だった。孤立した気分。
ふと、彼のあのベルベットのような声が頭に響き、ほっと身体の力が抜けた。
彼のあの冷たい瞳。見つめているだけで、見つめられているだけで身体が凍えてしまいそう。
けれどたまに、あの瞳が燃え上がるときがある。
熱く、我慢できないくらい魅力的になるときが。
思い出すだけでも、顔が熱くなっていった。
あの魔性の瞳には誰もかなわないに違いない。
「ふふっ。」
なんとなく小さく笑ってしまった。何がおかしいのか自分でもわからない。
ただ胸があたたかく落ち着く。嬉しいのかと思った。
私は、闇の陣営にいるのに。闇の帝王に囚われているようなものなのに。
自分の何かが違うところに動き出すのがわかった。この世界の"光"ではないところに。
この気持ちはもうどうしようもないだろう。けれど、闇に沈む気持ちもない。
「ハリー、ポッター…。」
あなたにはいつか会えるだろうか。
少しだけ、楽しみ。小説のように成長してくれるだろうか。
両親が死んで、叔母のところで育てられ。
ホグワーツ魔法魔術学校に入学し、友達と出会って。
なんだか、すごく楽しみになってきた。
"闇"にいても"光"のことを気にしている私は、きっとおかしいのだろう。
「ヴォルデモート卿、私は…。」
"あなたの傍にはいたいです。
けれど、ダンブルドア校長の言う光も見てみたい。"
あぁ、私はおかしいんだ。求めすぎているんだ。
この生活にも、すっかり慣れてしまった。いろいろな、魔法にも。
少しだけドキリとすることはあるけれど、大きな衝撃はない。
それでも、慣れないことが一つだけある。
彼を見たとき。彼と話をするとき。
彼に、見つめられたときだ。
その時だけは心臓が跳ね上がる。落ち着きを失ってしまう。
空を見つめながら、私は深く息を吐いた。
吐ききると、身体がぶると震える。
何にしろ、彼から離れられないのだから、こんなことを考えるのはやめよう。
一度だけでも、ホグワーツに行ってみたいだなんてことは。
きっと、それは叶わない。
私は頭を振って、今まで考えていたことを振り払った。
だめ。考えちゃ、だめ。
自分に言い聞かせながら、何とか新しいことを思い浮かべる。
「…。」
今までの生活の中で、今が一九七三年だということはわかった。
彼がゴドリックの谷へ行く"あの夜"までは、あと八年ある。
小説の通りに進んだ未来を思い浮かべる。
身体を失い、魂を破壊され、分霊箱 に残された魂に縋りながら森を彷徨う彼を。
それを考えると、身体が冷たくなっていくのがわかった。
だめ。それだけは、だめ。
無意識に身体が震える。
どうしようもない絶望感と苛立ちがこみ上げてきた。
私には、何ができるの。
彼には魔法を教えてもらった。
けれど、教わった魔法はもちろん彼が知っているものだ。そうでなければ、教えることなんてできない。
なかには、私に教えていない魔法もあるだろう。
「もっと、知りたいのに…。」
あの未来には、なりたくない。
そう思った瞬間、私の中にある欲が生まれた。
もっと別の、様々な魔法を知りたい。
闇の魔術ではなく、攻撃するためではない、大切に想う人を守る魔法を。
その欲によりもやもやとザワつく心のまま、私は枕に顔をうずめた。
ホグワーツではどんな魔法を学べるのだろう。
大切に想う人──彼、ヴォルデモート卿──を守る魔法を学べるだろうか。
"あの未来にはさせない。私が、守ってみせる。"
どんなに思っても、私には学ぶすべも守るすべもないのに。
私に、何ができるの。
自嘲気味に、そう心の中で呟いた。
顔をうずめた枕をぎゅっと握った。
悔しい。何もできない自分が。流れに身を任せている自分が。
自然とこわばる身体。
深く息を吐いて、必死に心を落ち着けた。
すると、いつの間にか私の意識は闇に沈んでいった。
ホグワーツに行ってみたい。ただただ、そう願いながら。
この甲にある印が、とても大切なものに思える。
緩んだ口元のまま、ベッドに腰を沈める。
ふわんとしたベッドが、今はとても温かく感じた。
私はパタンと、そのまま身体を後ろに倒していった。
背中から包まれる感覚に、私は安心を覚えていた。
「…、」
ふう、と肺に入っていた空気を全て吐き出す。
空になった肺には新しく冷たい空気が送り込まれ、私の中を満たしていった。
ちらと部屋に視線を送れば、いつもと変わらない黒を基調とした景色が広がる。
もう、夜は遅い。暗い部屋と同じような空を外はしていることだろう。
闇に身を任せて眠ってしまおうかとも考えたが、まだその時ではないと感じた。
目は冴えているし、何より昨日は眠りすぎた。
そう思えば、過度の睡眠による身体のダルさが身を襲ってくる。
起きていたとしても、今から何をすればいいのだろう。
ルシウスを呼ぶのはさすがに悪く感じる。
隣室には本がたくさんあるが、この
この部屋には、時間をつぶせるようなものはないだろう。
考えても、これから起きていられるのに使えるものはなかった。
そんなとき、ふと、外に出られたらと思ってしまう。
先程までそれでいいと思っていたけれど、気が変わるのは一瞬だと身にしみて感じた。
「ひま、だなぁ…。」
小さな声で呟いても、音のないここでは大きく響いて聞こえる。
どうにもならない状況に、私は自然と身体を起こしていた。
立ち上がって、部屋をもう一度見回す。
本当に何もないかと確かめるようにうろうろと歩きまわった。
ない。本当に、何もない。
あるといったら机に椅子、タンスとクローゼット、鏡、ベッドくらいだ。
一瞬、掃除でもしようかと思ったけれど、するまでもなく全て整っている。
落胆したようにため息を吐き、ベッドになだれ込んだ。
ばたんと横になり、自分の手の甲に目を移す。
相変わらず綺麗に開ききった薔薇の花。
舌を出しながらシュルシュルと這っている蛇。
「ねぇ、君はひまにならないの?」
答えを求めるわけもなく、私は甲にいる蛇に話しかけていた。
やはり、反応は何もない。
なんとなく虚しくなって、自嘲気味に笑みをこぼした。
私は何をしているんだろう。そう思いながら、ゆっくりと瞳を閉じる。
すごく静かな部屋。何の音も聞こえない。
不思議な感覚だった。孤立した気分。
ふと、彼のあのベルベットのような声が頭に響き、ほっと身体の力が抜けた。
彼のあの冷たい瞳。見つめているだけで、見つめられているだけで身体が凍えてしまいそう。
けれどたまに、あの瞳が燃え上がるときがある。
熱く、我慢できないくらい魅力的になるときが。
思い出すだけでも、顔が熱くなっていった。
あの魔性の瞳には誰もかなわないに違いない。
「ふふっ。」
なんとなく小さく笑ってしまった。何がおかしいのか自分でもわからない。
ただ胸があたたかく落ち着く。嬉しいのかと思った。
私は、闇の陣営にいるのに。闇の帝王に囚われているようなものなのに。
自分の何かが違うところに動き出すのがわかった。この世界の"光"ではないところに。
この気持ちはもうどうしようもないだろう。けれど、闇に沈む気持ちもない。
「ハリー、ポッター…。」
あなたにはいつか会えるだろうか。
少しだけ、楽しみ。小説のように成長してくれるだろうか。
両親が死んで、叔母のところで育てられ。
ホグワーツ魔法魔術学校に入学し、友達と出会って。
なんだか、すごく楽しみになってきた。
"闇"にいても"光"のことを気にしている私は、きっとおかしいのだろう。
「ヴォルデモート卿、私は…。」
"あなたの傍にはいたいです。
けれど、ダンブルドア校長の言う光も見てみたい。"
あぁ、私はおかしいんだ。求めすぎているんだ。
この生活にも、すっかり慣れてしまった。いろいろな、魔法にも。
少しだけドキリとすることはあるけれど、大きな衝撃はない。
それでも、慣れないことが一つだけある。
彼を見たとき。彼と話をするとき。
彼に、見つめられたときだ。
その時だけは心臓が跳ね上がる。落ち着きを失ってしまう。
空を見つめながら、私は深く息を吐いた。
吐ききると、身体がぶると震える。
何にしろ、彼から離れられないのだから、こんなことを考えるのはやめよう。
一度だけでも、ホグワーツに行ってみたいだなんてことは。
きっと、それは叶わない。
私は頭を振って、今まで考えていたことを振り払った。
だめ。考えちゃ、だめ。
自分に言い聞かせながら、何とか新しいことを思い浮かべる。
「…。」
今までの生活の中で、今が一九七三年だということはわかった。
彼がゴドリックの谷へ行く"あの夜"までは、あと八年ある。
小説の通りに進んだ未来を思い浮かべる。
身体を失い、魂を破壊され、
それを考えると、身体が冷たくなっていくのがわかった。
だめ。それだけは、だめ。
無意識に身体が震える。
どうしようもない絶望感と苛立ちがこみ上げてきた。
私には、何ができるの。
彼には魔法を教えてもらった。
けれど、教わった魔法はもちろん彼が知っているものだ。そうでなければ、教えることなんてできない。
なかには、私に教えていない魔法もあるだろう。
「もっと、知りたいのに…。」
あの未来には、なりたくない。
そう思った瞬間、私の中にある欲が生まれた。
もっと別の、様々な魔法を知りたい。
闇の魔術ではなく、攻撃するためではない、大切に想う人を守る魔法を。
その欲によりもやもやとザワつく心のまま、私は枕に顔をうずめた。
ホグワーツではどんな魔法を学べるのだろう。
大切に想う人──彼、ヴォルデモート卿──を守る魔法を学べるだろうか。
"あの未来にはさせない。私が、守ってみせる。"
どんなに思っても、私には学ぶすべも守るすべもないのに。
私に、何ができるの。
自嘲気味に、そう心の中で呟いた。
顔をうずめた枕をぎゅっと握った。
悔しい。何もできない自分が。流れに身を任せている自分が。
自然とこわばる身体。
深く息を吐いて、必死に心を落ち着けた。
すると、いつの間にか私の意識は闇に沈んでいった。
ホグワーツに行ってみたい。ただただ、そう願いながら。
