16.
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何日かが経ったある日、卿が邸を空けて仕事へ出て行った。
ルシウスもそれに着いて行ったようで、ナギニは空いた邸の見回りをすることになった。
私はひとり部屋でじっとしたまま、暇を持てあましていた。
どうやら私は、ひとりでいるのが苦手らしい。何をしたらいいのかわからなくなる。
ずいぶん、私は甘えん坊になったと思う。
どうしてだろう。
どうしてこんなにも、ひとりが落ち着かないのだろう。
そう思うと、心の中に微かな不安があるのを見つけた。
この不安は、何だろう。ひとりになると無性に疼き始める。
無意識に胸を押さえていた。きゅっと胸が苦しくなる。
どうしてだろう。もう一度、胸の中で自分に問いかけた。
すると、ぼんやりとした形のものがはっきりと見えるようになる。
そうだ。怖いんだ。失うのが怖いんだ。
皆が、私の知らないところで消えてしまうのが怖いんだ。
ひとりでいると、その思考を止めることができなくなる。
不安が自分の中で大きくなり、呑み込まれそうになる。
止まらない。暴走しているかのようだ。
やめて。止まって。考えたくなんかないの。
あの原作通りに進んだ未来なんか見たくないの。
私は無意識に頭を抱え、息を乱していた。
少しでも気を抜けば、この感情に乗せて涙があふれ出しそうだ。
ベッドの上で蹲りながら私は必死に思考を止めようとする。
するとその時、訪ねてくる人物がこの邸にいないのにも関わらず、扉がノック音を立てた。
「っ、!」
私は飛び跳ねるように肩をびくつかせ、身体を起こした。
反射的に手が杖にのびる。
意識すらしていないその行動は、私の警戒心を表していた。
杖をしっかりと右手に持ち、その手をさり気なく背中に隠す。
扉を食い入るように見つめながら、先ほどの音が幻聴ではないことを感じていた。
「…誰、ですか。」
私はぎゅっと心臓が縮んでいる感覚のまま、静かに口を開いた。
今までこの部屋に訪れたことがあるのは卿とルシウス、そしてナギニだけ。
それ以外の人物が訪ねてきたことはない。
この扉の向こうにいるのは誰だろう。
第一に考えられるのは死喰い人 だ。
けれど、それが誰かがわからない。何の用があるのかも。
部屋のドアノブがゆっくりと回り、扉の軋む音と共に向こうの闇が見えた。
コツと鋭い靴音が聞こえ、開いた扉から誰かが入ってきた。
女性だ。その女性の豊かな艶のある黒髪は結い上げられ、パーマがかったその髪は歩くたびに揺れていた。
女性の身体はしなやかな猫のようで、豊かな胸を強調させるかのような艶めかしい黒のドレスを着ていた。
私は呆然と女性を見つめる。
彼女は端整な顔立ちをしていて、厚ぼったいまぶたがその魅力を引き出しているようにも見えた。
灰色に鋭く輝くその瞳は私をとらえ、背中に隠された右手を見てスッと細められた。
その視線に私はドキリとし、彼女の様子を上目でうかがった。
彼女はそんな私を見て笑うような表情をうかべ、静かに膝を折る。
「お初にお目にかかります。
ベラトリックス・レストレンジでございます。」
彼女は流れるようにそう言い、整った髪をした頭を少し下げた。
この人が、ベラトリックス・レストレンジ?
艶っぽい声が言ったその言葉を聞き、目を丸く見開く。
卿を、敬愛という言葉では収まらないほど溺愛している死喰い人。
その愛情は、夫に向けるものよりも深いという。
シリウス・ブラックの従姉であり、そのシリウス・ブラックを殺害する張本人。
私は釘付けになったかのように見つめてしまった。
彼女は短く息を吸い、言葉を続けるように口を開く。
「我が君のご命令により参りました。」
「ぇ…?」
卿の命令?一体何だろう。
小さく首を傾げるが、思いあたるものは何もない。
無意識に下げていた視線を彼女に移せば、彼女は値踏みするようにこちらを見ていた。
その瞳の深さに、私は肩を跳ねさせる。
うかんでいるのは、好意ではない。
私のことを訝しむ疑心。そして大きく存在しているのは、嫉妬だ。
睨めつけられているかのような視線に、私は背中の後ろで杖を持つ手に力を込めていた。
彼女が嫉妬する原因。思いあたるのはただひとつ。
あの人──ヴォルデモート卿──のことだろう。
卿の命令の内容はわからないが、"女"のところへ行けと言われたこと。
しかもその部屋が卿の部屋と繋がっている。
それだけで彼女が嫉妬する理由は十分なはずだ。
私はドクンドクンと跳ね上がっている心臓を感じながら、小さく呟くように声を出した。
「命令、は…なんて…?」
「あなたの傍にいろと。」
「そ、ぅ…です、か。」
彼女の視線から送られる緊張でうまく話すことができない。
唇は震え、まともに彼女の目を見ることすらできない。
彼女はどんな表情をしているのだろう。
私を見て、何を感じているのだろう。
それを考えると、胸が切なく締め付けられた。
小説を読んでる頃から、彼女のことも気になっていた。
卿に強く惹かれている女性。彼女が卿にそこまで惹かれている理由は何だろう。
話をしたら楽しいだろうか。彼女は感情的で激しい性格だが、話をしてみたいと思っていた。
けれど彼女は私をよく思っていない。
それをひしひしと感じ、私は顔を俯かせた。
どうにか、できないだろうか。
無意識に杖をぎゅっと握りしめ、じっと考えていた。
ふと顔を上げて彼女を見れば、細められた瞳と目が合う。
「あのっ…!」
自分でも驚くほど咄嗟に彼女に声をかけていた。
私は唇を震わせながら、彼女の瞳を見つめる。
そこにうかぶのは驚きと訝しみ。
私はそれを呑み込みながら、声を絞り出した。
「私、は…アリス・八神です。
敬語は、しなくていいですから…っえっと、…よろしくお願いしますっ。」
私が詰まりながらもそう言うと、少しの間静寂が訪れた。
そろそろと顔を上げれば、目を見開いた彼女がいた。
その長い睫毛が瞬きをし、私を唖然と見つめている。
その瞳には先ほどの強い嫉妬はなく、不思議そうな色がうかんでいた。
彼女は私を見ながら、考えるように顎に手をあてる。
そしてフッと笑うと、首をもたげて私を見た。
「あぁ。じゃあそうさせてもらうよ。」
ルシウスもそれに着いて行ったようで、ナギニは空いた邸の見回りをすることになった。
私はひとり部屋でじっとしたまま、暇を持てあましていた。
どうやら私は、ひとりでいるのが苦手らしい。何をしたらいいのかわからなくなる。
ずいぶん、私は甘えん坊になったと思う。
どうしてだろう。
どうしてこんなにも、ひとりが落ち着かないのだろう。
そう思うと、心の中に微かな不安があるのを見つけた。
この不安は、何だろう。ひとりになると無性に疼き始める。
無意識に胸を押さえていた。きゅっと胸が苦しくなる。
どうしてだろう。もう一度、胸の中で自分に問いかけた。
すると、ぼんやりとした形のものがはっきりと見えるようになる。
そうだ。怖いんだ。失うのが怖いんだ。
皆が、私の知らないところで消えてしまうのが怖いんだ。
ひとりでいると、その思考を止めることができなくなる。
不安が自分の中で大きくなり、呑み込まれそうになる。
止まらない。暴走しているかのようだ。
やめて。止まって。考えたくなんかないの。
あの原作通りに進んだ未来なんか見たくないの。
私は無意識に頭を抱え、息を乱していた。
少しでも気を抜けば、この感情に乗せて涙があふれ出しそうだ。
ベッドの上で蹲りながら私は必死に思考を止めようとする。
するとその時、訪ねてくる人物がこの邸にいないのにも関わらず、扉がノック音を立てた。
「っ、!」
私は飛び跳ねるように肩をびくつかせ、身体を起こした。
反射的に手が杖にのびる。
意識すらしていないその行動は、私の警戒心を表していた。
杖をしっかりと右手に持ち、その手をさり気なく背中に隠す。
扉を食い入るように見つめながら、先ほどの音が幻聴ではないことを感じていた。
「…誰、ですか。」
私はぎゅっと心臓が縮んでいる感覚のまま、静かに口を開いた。
今までこの部屋に訪れたことがあるのは卿とルシウス、そしてナギニだけ。
それ以外の人物が訪ねてきたことはない。
この扉の向こうにいるのは誰だろう。
第一に考えられるのは
けれど、それが誰かがわからない。何の用があるのかも。
部屋のドアノブがゆっくりと回り、扉の軋む音と共に向こうの闇が見えた。
コツと鋭い靴音が聞こえ、開いた扉から誰かが入ってきた。
女性だ。その女性の豊かな艶のある黒髪は結い上げられ、パーマがかったその髪は歩くたびに揺れていた。
女性の身体はしなやかな猫のようで、豊かな胸を強調させるかのような艶めかしい黒のドレスを着ていた。
私は呆然と女性を見つめる。
彼女は端整な顔立ちをしていて、厚ぼったいまぶたがその魅力を引き出しているようにも見えた。
灰色に鋭く輝くその瞳は私をとらえ、背中に隠された右手を見てスッと細められた。
その視線に私はドキリとし、彼女の様子を上目でうかがった。
彼女はそんな私を見て笑うような表情をうかべ、静かに膝を折る。
「お初にお目にかかります。
ベラトリックス・レストレンジでございます。」
彼女は流れるようにそう言い、整った髪をした頭を少し下げた。
この人が、ベラトリックス・レストレンジ?
艶っぽい声が言ったその言葉を聞き、目を丸く見開く。
卿を、敬愛という言葉では収まらないほど溺愛している死喰い人。
その愛情は、夫に向けるものよりも深いという。
シリウス・ブラックの従姉であり、そのシリウス・ブラックを殺害する張本人。
私は釘付けになったかのように見つめてしまった。
彼女は短く息を吸い、言葉を続けるように口を開く。
「我が君のご命令により参りました。」
「ぇ…?」
卿の命令?一体何だろう。
小さく首を傾げるが、思いあたるものは何もない。
無意識に下げていた視線を彼女に移せば、彼女は値踏みするようにこちらを見ていた。
その瞳の深さに、私は肩を跳ねさせる。
うかんでいるのは、好意ではない。
私のことを訝しむ疑心。そして大きく存在しているのは、嫉妬だ。
睨めつけられているかのような視線に、私は背中の後ろで杖を持つ手に力を込めていた。
彼女が嫉妬する原因。思いあたるのはただひとつ。
あの人──ヴォルデモート卿──のことだろう。
卿の命令の内容はわからないが、"女"のところへ行けと言われたこと。
しかもその部屋が卿の部屋と繋がっている。
それだけで彼女が嫉妬する理由は十分なはずだ。
私はドクンドクンと跳ね上がっている心臓を感じながら、小さく呟くように声を出した。
「命令、は…なんて…?」
「あなたの傍にいろと。」
「そ、ぅ…です、か。」
彼女の視線から送られる緊張でうまく話すことができない。
唇は震え、まともに彼女の目を見ることすらできない。
彼女はどんな表情をしているのだろう。
私を見て、何を感じているのだろう。
それを考えると、胸が切なく締め付けられた。
小説を読んでる頃から、彼女のことも気になっていた。
卿に強く惹かれている女性。彼女が卿にそこまで惹かれている理由は何だろう。
話をしたら楽しいだろうか。彼女は感情的で激しい性格だが、話をしてみたいと思っていた。
けれど彼女は私をよく思っていない。
それをひしひしと感じ、私は顔を俯かせた。
どうにか、できないだろうか。
無意識に杖をぎゅっと握りしめ、じっと考えていた。
ふと顔を上げて彼女を見れば、細められた瞳と目が合う。
「あのっ…!」
自分でも驚くほど咄嗟に彼女に声をかけていた。
私は唇を震わせながら、彼女の瞳を見つめる。
そこにうかぶのは驚きと訝しみ。
私はそれを呑み込みながら、声を絞り出した。
「私、は…アリス・八神です。
敬語は、しなくていいですから…っえっと、…よろしくお願いしますっ。」
私が詰まりながらもそう言うと、少しの間静寂が訪れた。
そろそろと顔を上げれば、目を見開いた彼女がいた。
その長い睫毛が瞬きをし、私を唖然と見つめている。
その瞳には先ほどの強い嫉妬はなく、不思議そうな色がうかんでいた。
彼女は私を見ながら、考えるように顎に手をあてる。
そしてフッと笑うと、首をもたげて私を見た。
「あぁ。じゃあそうさせてもらうよ。」
