15.
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その行為がどういうものかなんて、その時の私は考えてもいなかった。
喜びが胸いっぱいに広がる。
動物もどき になれたんだ。成功したんだ。
美しい銀色。整ったその姿に感激してしまう。
この喜びを誰かに伝えたかった。
この信じられないような熱い気持ちを、誰かに。
そう思った時にはもう私は行動していて、ふっと一瞬で大きく息を吸うと体勢を整えた。
そして流れるように上を向き、その気持ちを口から外に放つ。
言葉ではない。これはただの遠吠えだ。
けれど私にとってそれはとても意味のあるものだった。
長くしっかりと通る自分の声。
その声に、やはり私は狼になったのだと再認識させられる。
部屋中に響く声はそれなりに大きいものだ。
この私の熱い感情を抑えることなんてできない。
それは木霊のように響き、反響する。
自然と声が切れても、それは確かに余韻を残して存在していた。
満足そうにナギニに視線を移す。
気づけば、私の尾はふさふさと左右に揺らされていた。
ナギニはおかしそうにクスクスと笑いながらこちらを見ている。
私もこぼれる微笑みに口を開きかけた。
『ナギ、っ…!』
その瞬間、私の部屋の扉が突然開いた。
勢いよく開いた扉は半円を描き、壁にぶつかり鈍い音を立てる。
バンという大きな音が耳に響き、その大きさと不快感に顔を顰めた。
キュウと情けない声が鼻先からもれ、無意識に身体を低くする。
一体どうしたのだろう。
扉の方向を見てみればその先は底なしの闇が広がっているだけで何も見えない。
誰もいないし何もない。
なぜ扉が開いたのだろう。
すると、その扉の向こうの闇がいっそう濃くなった気がした。
そう思ったのと同時に、その闇の理由がわかる。
薄暗い扉の傍で輝いたのは、鋭く危険な色をした真紅の双眸。
その紅を見た瞬間、本能的な恐怖に落ち着きがなくなった。
切なくか細い声が何度も鼻先からもれる。
ふとあの卿の香りが鼻に届いた。
『おや、主人じゃないか。』
ナギニの楽しんでいるかのような声に、はっと息を呑んだ。
闇の中に目を凝らせば、そこには確かに卿の姿があった。
卿はギラギラと紅い瞳を光らせ、そこに立っていた。
流れるような足取りで部屋の中へ一歩、また一歩と踏み込んでくる。
卿は私を見ていた。警戒したように、真紅の瞳を細めながら。
『ナギニ。』
甘く囁くような蛇語 が聞こえたかと思うのと同時に、それが卿のものであると理解する。
卿の蛇語は初めて聞いた。なめらかな、歌うような蛇語だ。
卿はナギニを呼んだけれど、私から視線を外さなかった。
その威圧するような視線に、恐怖が心に大きく巣くった。
落ち着かないように四肢が震え、びくびくと後ずさる。
いつもより感情が高ぶる。良い意味でも、悪い意味でも。
情けない声が鼻先からこぼれ続け、ナギニは咎めるような声色で言う。
『主人、アリスを恐がらせないでおくれよ。』
『アリスだと?』
その時、初めて卿は私から視線を外してナギニを見た。
卿の声は猫撫で声のような甘いものではなく、訝しむようなものだった。
ナギニは満足そうに頷き、卿は私に視線を戻す。
真紅に輝く瞳から警戒の色は薄れ、興味深げな色がのぞいていた。
私はビクッと身体を跳ねさせて、戸惑いに視線を泳がせた。
ふとナギニを見てみれば、笑ったように瞳孔が細くなり、そのまま静かにベッドから下りて扉へと這っていってしまった。
キュン、と呼び止めるかのような声が反射的に出るが、ナギニは扉の向こうの闇に消えてしまった。
何とも言えない緊張感に、尾が内側に丸まる。
身体を低くしながら、私は上目で卿の様子をうかがっていた。
卿はなめるような視線で私を見つめ続けている。
卿から感じる危険な雰囲気 を本能的に察し、ざわざわと心が落ち着かない。
しかし、それと同時にじっと見られていることにドクンと心臓が跳ね上がっていた。
ゆっくりと後ずさりながら、私は静かなその空気に毛を逆立たせていた。
身体の血がサッと引いて冷たくなる感覚、そして胸が熱く熟れるような感覚が同時に現れていた。
私は混乱したように耳をたれさせた。
自分の感情が自分でもわからない。
大きく増した感情がそのまま混ざり合い、理解すらできない。
卿はゆっくりと私に近づきながら、不意に手元に力を入れた。
はっとして見てみれば、卿の手の中には杖が握られている。
私は思わず怯えたように鼻を鳴らし、床にペタンと身体をつけた。
卿には、抗えない。それをひしひしと感じる。
自然と身体を伏せたことが、それを思い知らしめていた。
彼はクッと喉の奥で笑って私に杖を向ける。
何かを呟いたかと思うと、私の身体が瞬間的に熱く燃えたような感覚に陥った。
先ほどと同じだ。身体の内側から溶けるように熱くなる。
それは中枢から末梢に広がり、私は無意識に身体を床に擦りつけていた。
甲高い鳴き声がぼんやりとしてくる意識に響く。
熱い、熱い、熱い。我慢できないくらいの感覚に、涙すらうかぶ。
心なしか、変身したときよりもそれは酷く思えた。
また顔が燃えたかのように感じ、手で押さえる。
堪らずその口からこぼれたのは、狼の苦しがる声ではなく、私自身の荒い息だった。
身体も熱くなり、身を捩りながらその感覚に堪える。
苦しい、痛い、熱い。その悲痛の感覚はだんだんと治まり、私の気持ちも落ち着いてきた。
信じられないくらい辛かったものが、大げさのように思えてくる。
だいぶそれが治まった頃には、私は床の上でぐったりとしていた。
目を開けることさえ、ぼんやりとしかできない。
そんな私に、上からあのベルベットのような声がかけられた。
「アリス。」
誘うかのような声に、私は虚ろに視線を向けた。
卿の真紅に輝く妖しいまでの妖艶な瞳がこちらを見ている。
ぐったりとしているまま、心臓だけが活発に働いていた。
ぼうっと身体が熱くなり、私は外気の寒さに身を震わせる。
ひんやりと冷たい感覚が床から触れている身体に伝わっていく。
染み込むような冷たさに、思わず身を捩らせた。
寒い。冷たい。その不快感に、眉を寄せる。
どうしてだろう。こんなにこの部屋が冷たいなんて感じたことなかったのに。
ぼんやり霞んで見える瞳を、卿の足元から自分の身体の方へと移した。
「っ、きゃ…ぅ!」
自分の身体を見て、思わず絶句した。
何も身体に纏っていない。率直に言えば、裸だった。
私は跳びはねるように身体を縮め、卿の視線から逃げるように近くの服を寄せ集める。
一瞬のうちに心臓は破裂してしまいそうなほど跳ね上がった。
顔だけでなく身体中にまで熱が上がり、戸惑いにうなり声をもれさせた。
どうして。どうして何も着ていないのだろう。
ぎゅっと身体を固くしながら顔を俯かせる。
先ほどの変身の時、無意識に服を脱いでいたことを思い出した。
けれどよくよく考えてみれば動物もどきが変身する時、服は着たままでよかったはず。
なぜ、私は服を脱いだのだろう。脱いでしか変身できなかったのだろう。
堪らないほどの羞恥心に、情けないくらいだ。
「あ、ぅ…ゃ…。」
唇が震え、どうしようもない気持ちが心の中で渦を巻く。
だめ。見ないで。
身体がぷるぷると止まることを知らずに震え続ける。
卿がすぐ目の前に立っていることを感じながら、ひたすら願っていた。
卿の前となると、自分の身体が──元から立派なものでもないが──とても貧相なものに思える。
そんな身体を見られたくない。早く、出て行ってほしい。
ぎゅっと瞳をつむり、身体を隠しているホグワーツの制服を抱きしめた。
「…アリス。」
「ゃ、あ…っ。」
もう一度名前を呼ばれたと思ったら、冷たいものが太もものあたりに触れた。
びくっと身体を跳ねさせると、サラリとした何かが顔にかかる。
おもむろに瞳を開ければ、卿のあの整った顔がすぐ目の前にあった。
太ももに触れているのが卿の指であることを、同時に理解する。
ひやとしたその感覚に、身体がぶると震えた。
髪から香る卿の香りに包まれていると、背中にもあの冷たい指が当たる。
息を呑むのとほぼ同時に、卿はそのまま私を抱き上げた。
体重なんて関係ないかのように抱き上げられ、私は目を瞬く。
なめらかな卿の肌を、膝裏と背中に感じていた。
私は服を掛けられたまま、卿の腕にちゃんとおさまる。
無意識に卿の胸板に手を当てていて、ドキンと心臓が跳ねた。
抱き寄せられる腕、そして身体が温かく、包み込まれるかのような感覚に襲われる。
卿はさらとした綺麗な漆黒の髪を揺らし、足を歩ませた。
私は顔を真っ赤にしながら、居心地悪そうに視線を泳がす。
卿に、それも裸で抱かれていると思うと、どうしても恥ずかしくて堪らなかった。
卿は狼の私を、そして裸になった私を見て、どう思ったのだろうか。
ぼんやりと考えていると、クッと卿が笑いを噛み殺したのがわかった。
喜びが胸いっぱいに広がる。
美しい銀色。整ったその姿に感激してしまう。
この喜びを誰かに伝えたかった。
この信じられないような熱い気持ちを、誰かに。
そう思った時にはもう私は行動していて、ふっと一瞬で大きく息を吸うと体勢を整えた。
そして流れるように上を向き、その気持ちを口から外に放つ。
言葉ではない。これはただの遠吠えだ。
けれど私にとってそれはとても意味のあるものだった。
長くしっかりと通る自分の声。
その声に、やはり私は狼になったのだと再認識させられる。
部屋中に響く声はそれなりに大きいものだ。
この私の熱い感情を抑えることなんてできない。
それは木霊のように響き、反響する。
自然と声が切れても、それは確かに余韻を残して存在していた。
満足そうにナギニに視線を移す。
気づけば、私の尾はふさふさと左右に揺らされていた。
ナギニはおかしそうにクスクスと笑いながらこちらを見ている。
私もこぼれる微笑みに口を開きかけた。
『ナギ、っ…!』
その瞬間、私の部屋の扉が突然開いた。
勢いよく開いた扉は半円を描き、壁にぶつかり鈍い音を立てる。
バンという大きな音が耳に響き、その大きさと不快感に顔を顰めた。
キュウと情けない声が鼻先からもれ、無意識に身体を低くする。
一体どうしたのだろう。
扉の方向を見てみればその先は底なしの闇が広がっているだけで何も見えない。
誰もいないし何もない。
なぜ扉が開いたのだろう。
すると、その扉の向こうの闇がいっそう濃くなった気がした。
そう思ったのと同時に、その闇の理由がわかる。
薄暗い扉の傍で輝いたのは、鋭く危険な色をした真紅の双眸。
その紅を見た瞬間、本能的な恐怖に落ち着きがなくなった。
切なくか細い声が何度も鼻先からもれる。
ふとあの卿の香りが鼻に届いた。
『おや、主人じゃないか。』
ナギニの楽しんでいるかのような声に、はっと息を呑んだ。
闇の中に目を凝らせば、そこには確かに卿の姿があった。
卿はギラギラと紅い瞳を光らせ、そこに立っていた。
流れるような足取りで部屋の中へ一歩、また一歩と踏み込んでくる。
卿は私を見ていた。警戒したように、真紅の瞳を細めながら。
『ナギニ。』
甘く囁くような
卿の蛇語は初めて聞いた。なめらかな、歌うような蛇語だ。
卿はナギニを呼んだけれど、私から視線を外さなかった。
その威圧するような視線に、恐怖が心に大きく巣くった。
落ち着かないように四肢が震え、びくびくと後ずさる。
いつもより感情が高ぶる。良い意味でも、悪い意味でも。
情けない声が鼻先からこぼれ続け、ナギニは咎めるような声色で言う。
『主人、アリスを恐がらせないでおくれよ。』
『アリスだと?』
その時、初めて卿は私から視線を外してナギニを見た。
卿の声は猫撫で声のような甘いものではなく、訝しむようなものだった。
ナギニは満足そうに頷き、卿は私に視線を戻す。
真紅に輝く瞳から警戒の色は薄れ、興味深げな色がのぞいていた。
私はビクッと身体を跳ねさせて、戸惑いに視線を泳がせた。
ふとナギニを見てみれば、笑ったように瞳孔が細くなり、そのまま静かにベッドから下りて扉へと這っていってしまった。
キュン、と呼び止めるかのような声が反射的に出るが、ナギニは扉の向こうの闇に消えてしまった。
何とも言えない緊張感に、尾が内側に丸まる。
身体を低くしながら、私は上目で卿の様子をうかがっていた。
卿はなめるような視線で私を見つめ続けている。
卿から感じる危険な
しかし、それと同時にじっと見られていることにドクンと心臓が跳ね上がっていた。
ゆっくりと後ずさりながら、私は静かなその空気に毛を逆立たせていた。
身体の血がサッと引いて冷たくなる感覚、そして胸が熱く熟れるような感覚が同時に現れていた。
私は混乱したように耳をたれさせた。
自分の感情が自分でもわからない。
大きく増した感情がそのまま混ざり合い、理解すらできない。
卿はゆっくりと私に近づきながら、不意に手元に力を入れた。
はっとして見てみれば、卿の手の中には杖が握られている。
私は思わず怯えたように鼻を鳴らし、床にペタンと身体をつけた。
卿には、抗えない。それをひしひしと感じる。
自然と身体を伏せたことが、それを思い知らしめていた。
彼はクッと喉の奥で笑って私に杖を向ける。
何かを呟いたかと思うと、私の身体が瞬間的に熱く燃えたような感覚に陥った。
先ほどと同じだ。身体の内側から溶けるように熱くなる。
それは中枢から末梢に広がり、私は無意識に身体を床に擦りつけていた。
甲高い鳴き声がぼんやりとしてくる意識に響く。
熱い、熱い、熱い。我慢できないくらいの感覚に、涙すらうかぶ。
心なしか、変身したときよりもそれは酷く思えた。
また顔が燃えたかのように感じ、手で押さえる。
堪らずその口からこぼれたのは、狼の苦しがる声ではなく、私自身の荒い息だった。
身体も熱くなり、身を捩りながらその感覚に堪える。
苦しい、痛い、熱い。その悲痛の感覚はだんだんと治まり、私の気持ちも落ち着いてきた。
信じられないくらい辛かったものが、大げさのように思えてくる。
だいぶそれが治まった頃には、私は床の上でぐったりとしていた。
目を開けることさえ、ぼんやりとしかできない。
そんな私に、上からあのベルベットのような声がかけられた。
「アリス。」
誘うかのような声に、私は虚ろに視線を向けた。
卿の真紅に輝く妖しいまでの妖艶な瞳がこちらを見ている。
ぐったりとしているまま、心臓だけが活発に働いていた。
ぼうっと身体が熱くなり、私は外気の寒さに身を震わせる。
ひんやりと冷たい感覚が床から触れている身体に伝わっていく。
染み込むような冷たさに、思わず身を捩らせた。
寒い。冷たい。その不快感に、眉を寄せる。
どうしてだろう。こんなにこの部屋が冷たいなんて感じたことなかったのに。
ぼんやり霞んで見える瞳を、卿の足元から自分の身体の方へと移した。
「っ、きゃ…ぅ!」
自分の身体を見て、思わず絶句した。
何も身体に纏っていない。率直に言えば、裸だった。
私は跳びはねるように身体を縮め、卿の視線から逃げるように近くの服を寄せ集める。
一瞬のうちに心臓は破裂してしまいそうなほど跳ね上がった。
顔だけでなく身体中にまで熱が上がり、戸惑いにうなり声をもれさせた。
どうして。どうして何も着ていないのだろう。
ぎゅっと身体を固くしながら顔を俯かせる。
先ほどの変身の時、無意識に服を脱いでいたことを思い出した。
けれどよくよく考えてみれば動物もどきが変身する時、服は着たままでよかったはず。
なぜ、私は服を脱いだのだろう。脱いでしか変身できなかったのだろう。
堪らないほどの羞恥心に、情けないくらいだ。
「あ、ぅ…ゃ…。」
唇が震え、どうしようもない気持ちが心の中で渦を巻く。
だめ。見ないで。
身体がぷるぷると止まることを知らずに震え続ける。
卿がすぐ目の前に立っていることを感じながら、ひたすら願っていた。
卿の前となると、自分の身体が──元から立派なものでもないが──とても貧相なものに思える。
そんな身体を見られたくない。早く、出て行ってほしい。
ぎゅっと瞳をつむり、身体を隠しているホグワーツの制服を抱きしめた。
「…アリス。」
「ゃ、あ…っ。」
もう一度名前を呼ばれたと思ったら、冷たいものが太もものあたりに触れた。
びくっと身体を跳ねさせると、サラリとした何かが顔にかかる。
おもむろに瞳を開ければ、卿のあの整った顔がすぐ目の前にあった。
太ももに触れているのが卿の指であることを、同時に理解する。
ひやとしたその感覚に、身体がぶると震えた。
髪から香る卿の香りに包まれていると、背中にもあの冷たい指が当たる。
息を呑むのとほぼ同時に、卿はそのまま私を抱き上げた。
体重なんて関係ないかのように抱き上げられ、私は目を瞬く。
なめらかな卿の肌を、膝裏と背中に感じていた。
私は服を掛けられたまま、卿の腕にちゃんとおさまる。
無意識に卿の胸板に手を当てていて、ドキンと心臓が跳ねた。
抱き寄せられる腕、そして身体が温かく、包み込まれるかのような感覚に襲われる。
卿はさらとした綺麗な漆黒の髪を揺らし、足を歩ませた。
私は顔を真っ赤にしながら、居心地悪そうに視線を泳がす。
卿に、それも裸で抱かれていると思うと、どうしても恥ずかしくて堪らなかった。
卿は狼の私を、そして裸になった私を見て、どう思ったのだろうか。
ぼんやりと考えていると、クッと卿が笑いを噛み殺したのがわかった。
