14.
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それが夢ではないことに気づいたのは、とてつもない嘔吐感に襲われたからだった。
激しいめまいと酷い頭痛。
ぼんやりと夢見心地だった私は我に返り、現実であることに驚きをうかべていた。
ぐるぐると目の回る感覚。いつだって慣れないこれは…そう、姿現わしをする感覚だ。
身体が内側に引き込まれ、遠心力で手足が飛んでしまいそうになる。
これは、夢ではない。現実だ。
"俺様の元に戻れ、アリス"
あの人が…卿が言った言葉が耳の奥で反響した。
あれは、現実。
気持ちの悪い感覚に溺れながら、ただそれだけを感じていた。
この感覚と同じように、頭の中もぐちゃぐちゃに乱れている。
混乱する頭のままでいると、バシッという音と共に身体がふわりとした場についた。
「っは…はぁ…っ。」
荒い息を繰り返し、私は薄く瞳を開ける。
ぼんやりと歪んで見えたのは、懐かしいあの部屋。
黒で整えられたその部屋に、思わずほっと身体の力が抜けた。
帰ってきた。あの邸に。卿の所に。
力なくベッドの上に横たわったまま、開いた瞳をふと閉じる。
夢では、なかった。
それを感じると、様々な感情が胸にあふれてくる。
卿の元へ戻ってきた喜び、先ほどのことが現実であったことへの羞恥。
ホグワーツを離れたことへの空虚感、接してきた人々の未来への不安。
頭の中が巡りに巡って、何も考えることができない。
もしかしたらこれも夢なのではないか。
そう思うが、瞳を開ければこの場所を離れたときと何も変わっていない部屋。
そして微かに香る卿と似た香り。それらが夢ではないことを確かに告げていた。
私は自然と口元に笑みを描いていて、ぎゅっと身体を丸めた。
もう、体力の限界だ。くらくらする視界に、私はゆっくりと瞳を閉じ始める。
ぼうっとする視界を閉じる中、隅の方で何かがズルと這った気がした。
「……、んぅ…。」
次に目を開けた時、カーテンからもれた光が部屋を明るく輝かせていた。
その光が朝日だということを、無意識に理解する。
身体を小さく捩り、おもむろに上体を起こした。
ぼんやりと瞬きをしながら、目の前の空間をしっかりと認識する。
卿の邸にある、私の部屋。確かに私は、そこにいる。
ぐるりと周りを見回すと、ふと机の上に私の杖があるのを見つけた。
よかった。こっちについてきてたんだ。
そう思いながら、ゆっくりと杖に手をのばす。
ベッドと机との隙間。そこを目にした瞬間、私は思わず身を引いていた。
「っ、ひ…!」
蛇がいた。胴回り数十センチはあるであろう大蛇が。
独特の斑のついた身体をまとめ、その隙間でとぐろを巻いている。
黄金に輝く鋭い瞳はじっとこちらを見つめていた。
驚きにより跳ね上がった心臓が、ドクドクと身体中に響く。
どうして、こんな所に蛇がいるのだろう。しかもこんなにも大きな蛇が。
混乱して、うまく状況を掴むことができない。
反射的に呑んでいた息を吐き、必死に状況を読もうとした。
ここは、彼の──ヴォルデモート卿の──邸 だ。そこに大きな蛇。
全長四メートルはあるであろう、黄金の瞳を輝かせた蛇がいる。
そこまで認識して、私ははっとした。
この大蛇は、もしかして。
「ナ、ギニ…?」
卿のペットである大蛇のナギニ。
卿の唯一の理解者であり、大きな信頼を置かれている存在。
そして、卿の分霊箱のうちの一つとなる存在だ。
私はちらとベッドの隅から顔をのぞかせる。
彼女はまだこちらを見つめていて、気まぐれにチロチロと舌を出していた。
目が合うと、彼女はその首を上げる。
夢中になったようにじっと見つめている私に、彼女の瞳孔が細くなった。
『主人の言っていた通りのようだね。』
「…っ!」
突然女性の声が聞こえ、私はビクリと肩を跳ねさせた。
一体誰の声だろう。
そう思い反射的に扉の方を向く。けれど誰もいなかった。
重く閉ざされた扉に、私は首を傾げる。
今の声はどこから聞こえたのだろう。
きょろきょろと周りを見回していると、またあの声が聞こえた。
『あんた…私の言葉がわかるのかい?』
「え…?」
驚きの混じった、よく通る綺麗な声。
どこから聞こえてきたのだろう。
けれどその言葉に、私ははっとした。
言葉がわかるのか、とその声は聞いた。
ということは、普通は理解のできない言葉だということだ。
それで思いうかぶこと。それは一つしかない。
私はゆっくりと、彼女の方へ顔を向けた。
うそ。そんなはずがない。
私が、蛇語 を理解できるなんて。
床の上でとぐろを巻いている彼女の瞳が、一瞬笑ったような気がした。
『へぇ。本当に、主人の言っていた通りだ。
不思議な娘。力を持つ娘。』
彼女は語るようにそう言いながら、ベッドの上へ這い上がってきた。
ズル、とシーツとその身体が擦れる音が静かに響く。
独特な波を描きながら、彼女は私の周りをぐると囲んだ。
聞こえる声は、本当に彼女のものなのだろうか。
しかし、その声の裏で聞こえる、微かなシューシューという音。
それが意味することは、自然と理解していた。
彼女の声だ。これは、蛇語。
「…ぅ、そ…。」
信じられない。信じられるはずがない。
なぜ私が蛇の言葉を理解できるのだろう。
呆然とベッドの上に座っていると、彼女はクスクスと笑った。
その笑い声にビクと反応すると、またあの声がかけられた。
『そんなに怯えなくても、私はあんたを食べたりしないよ。
主人に、見張るよう言われただけさ。』
「見張り…。」
『そんなことより、あんたは話せないのかい?』
話せる、というのは蛇語をということであっているだろう。
彼女はどこか楽しんでいる様子で、こちらをじっと見つめていた。
私が、蛇語を話せるか。そんなことあり得ないだろう。
しかし彼女の視線に落ち着かないように心臓が跳ね上がっていた。
試してみたい。好奇心のような気持ちが、胸いっぱいに広がる。
すると彼女は誘うように首を傾げた。
その瞬間さらに鼓動は大きく跳ね上がり、私は彼女に釘付けになる。
彼女をしっかりと瞳に映し、彼女と話すことだけを考えた。
話すことができるだろうか。
不安に思いながらも、私は夢中で口を開いていた。
『あの…あなたは、ナギニさん…ですよね?』
その声を聞いて、私は自分で目を見開いた。
私の口から出たのは、歯と歯の間からこぼれる空気の音。
シューシューというその音は、舌をうまく使い聞き分けられる"声"となっていた。
私は感激に唇を震わせる。信じられない。
私が、蛇語使い だなんて。
何も言えずにいる私を見て、彼女はクスクスと笑った。
『あぁ、そうだよ。
やっぱり話せるようだね。』
「…っ。」
『言葉が通じるのなら、そんなに身構える必要はないだろうね。
私はあんたに危害を加えるつもりはないよ、安心をし。』
卿に見張るように言われただけだ、とナギニは静かに言った。
綺麗な瞳を向けてくるナギニに、自然と安心感がわき上がる。
私の周りを囲んでいるその大きな身体に、私はそっと手をのばした。
彼女の身体は見たとおりになめらかで、ひんやりと冷たかった。
流れるような身体に触れながら、小さく微笑む。
彼女はチロチロと舌を出しながら、そんな私を見ていた。
彼女といると、どこか落ち着く。見守られている感覚に幸福感すらうかぶ。
彼女とは、とてもうまくやっていけそうだ。
『ナギニ、さん…私はアリス・八神です。
これから、よろしくお願いしますね。』
『さんはいらないよ。よろしく、アリス。』
彼女は私の手が触れているまま身体をすべらせた。
そして私の身体に、それほど強くない力で絡みつく。
私の顔にスッと顔を寄せながら、彼女は優しく囁いた。
激しいめまいと酷い頭痛。
ぼんやりと夢見心地だった私は我に返り、現実であることに驚きをうかべていた。
ぐるぐると目の回る感覚。いつだって慣れないこれは…そう、姿現わしをする感覚だ。
身体が内側に引き込まれ、遠心力で手足が飛んでしまいそうになる。
これは、夢ではない。現実だ。
"俺様の元に戻れ、アリス"
あの人が…卿が言った言葉が耳の奥で反響した。
あれは、現実。
気持ちの悪い感覚に溺れながら、ただそれだけを感じていた。
この感覚と同じように、頭の中もぐちゃぐちゃに乱れている。
混乱する頭のままでいると、バシッという音と共に身体がふわりとした場についた。
「っは…はぁ…っ。」
荒い息を繰り返し、私は薄く瞳を開ける。
ぼんやりと歪んで見えたのは、懐かしいあの部屋。
黒で整えられたその部屋に、思わずほっと身体の力が抜けた。
帰ってきた。あの邸に。卿の所に。
力なくベッドの上に横たわったまま、開いた瞳をふと閉じる。
夢では、なかった。
それを感じると、様々な感情が胸にあふれてくる。
卿の元へ戻ってきた喜び、先ほどのことが現実であったことへの羞恥。
ホグワーツを離れたことへの空虚感、接してきた人々の未来への不安。
頭の中が巡りに巡って、何も考えることができない。
もしかしたらこれも夢なのではないか。
そう思うが、瞳を開ければこの場所を離れたときと何も変わっていない部屋。
そして微かに香る卿と似た香り。それらが夢ではないことを確かに告げていた。
私は自然と口元に笑みを描いていて、ぎゅっと身体を丸めた。
もう、体力の限界だ。くらくらする視界に、私はゆっくりと瞳を閉じ始める。
ぼうっとする視界を閉じる中、隅の方で何かがズルと這った気がした。
「……、んぅ…。」
次に目を開けた時、カーテンからもれた光が部屋を明るく輝かせていた。
その光が朝日だということを、無意識に理解する。
身体を小さく捩り、おもむろに上体を起こした。
ぼんやりと瞬きをしながら、目の前の空間をしっかりと認識する。
卿の邸にある、私の部屋。確かに私は、そこにいる。
ぐるりと周りを見回すと、ふと机の上に私の杖があるのを見つけた。
よかった。こっちについてきてたんだ。
そう思いながら、ゆっくりと杖に手をのばす。
ベッドと机との隙間。そこを目にした瞬間、私は思わず身を引いていた。
「っ、ひ…!」
蛇がいた。胴回り数十センチはあるであろう大蛇が。
独特の斑のついた身体をまとめ、その隙間でとぐろを巻いている。
黄金に輝く鋭い瞳はじっとこちらを見つめていた。
驚きにより跳ね上がった心臓が、ドクドクと身体中に響く。
どうして、こんな所に蛇がいるのだろう。しかもこんなにも大きな蛇が。
混乱して、うまく状況を掴むことができない。
反射的に呑んでいた息を吐き、必死に状況を読もうとした。
ここは、彼の──ヴォルデモート卿の──
全長四メートルはあるであろう、黄金の瞳を輝かせた蛇がいる。
そこまで認識して、私ははっとした。
この大蛇は、もしかして。
「ナ、ギニ…?」
卿のペットである大蛇のナギニ。
卿の唯一の理解者であり、大きな信頼を置かれている存在。
そして、卿の分霊箱のうちの一つとなる存在だ。
私はちらとベッドの隅から顔をのぞかせる。
彼女はまだこちらを見つめていて、気まぐれにチロチロと舌を出していた。
目が合うと、彼女はその首を上げる。
夢中になったようにじっと見つめている私に、彼女の瞳孔が細くなった。
『主人の言っていた通りのようだね。』
「…っ!」
突然女性の声が聞こえ、私はビクリと肩を跳ねさせた。
一体誰の声だろう。
そう思い反射的に扉の方を向く。けれど誰もいなかった。
重く閉ざされた扉に、私は首を傾げる。
今の声はどこから聞こえたのだろう。
きょろきょろと周りを見回していると、またあの声が聞こえた。
『あんた…私の言葉がわかるのかい?』
「え…?」
驚きの混じった、よく通る綺麗な声。
どこから聞こえてきたのだろう。
けれどその言葉に、私ははっとした。
言葉がわかるのか、とその声は聞いた。
ということは、普通は理解のできない言葉だということだ。
それで思いうかぶこと。それは一つしかない。
私はゆっくりと、彼女の方へ顔を向けた。
うそ。そんなはずがない。
私が、
床の上でとぐろを巻いている彼女の瞳が、一瞬笑ったような気がした。
『へぇ。本当に、主人の言っていた通りだ。
不思議な娘。力を持つ娘。』
彼女は語るようにそう言いながら、ベッドの上へ這い上がってきた。
ズル、とシーツとその身体が擦れる音が静かに響く。
独特な波を描きながら、彼女は私の周りをぐると囲んだ。
聞こえる声は、本当に彼女のものなのだろうか。
しかし、その声の裏で聞こえる、微かなシューシューという音。
それが意味することは、自然と理解していた。
彼女の声だ。これは、蛇語。
「…ぅ、そ…。」
信じられない。信じられるはずがない。
なぜ私が蛇の言葉を理解できるのだろう。
呆然とベッドの上に座っていると、彼女はクスクスと笑った。
その笑い声にビクと反応すると、またあの声がかけられた。
『そんなに怯えなくても、私はあんたを食べたりしないよ。
主人に、見張るよう言われただけさ。』
「見張り…。」
『そんなことより、あんたは話せないのかい?』
話せる、というのは蛇語をということであっているだろう。
彼女はどこか楽しんでいる様子で、こちらをじっと見つめていた。
私が、蛇語を話せるか。そんなことあり得ないだろう。
しかし彼女の視線に落ち着かないように心臓が跳ね上がっていた。
試してみたい。好奇心のような気持ちが、胸いっぱいに広がる。
すると彼女は誘うように首を傾げた。
その瞬間さらに鼓動は大きく跳ね上がり、私は彼女に釘付けになる。
彼女をしっかりと瞳に映し、彼女と話すことだけを考えた。
話すことができるだろうか。
不安に思いながらも、私は夢中で口を開いていた。
『あの…あなたは、ナギニさん…ですよね?』
その声を聞いて、私は自分で目を見開いた。
私の口から出たのは、歯と歯の間からこぼれる空気の音。
シューシューというその音は、舌をうまく使い聞き分けられる"声"となっていた。
私は感激に唇を震わせる。信じられない。
私が、
何も言えずにいる私を見て、彼女はクスクスと笑った。
『あぁ、そうだよ。
やっぱり話せるようだね。』
「…っ。」
『言葉が通じるのなら、そんなに身構える必要はないだろうね。
私はあんたに危害を加えるつもりはないよ、安心をし。』
卿に見張るように言われただけだ、とナギニは静かに言った。
綺麗な瞳を向けてくるナギニに、自然と安心感がわき上がる。
私の周りを囲んでいるその大きな身体に、私はそっと手をのばした。
彼女の身体は見たとおりになめらかで、ひんやりと冷たかった。
流れるような身体に触れながら、小さく微笑む。
彼女はチロチロと舌を出しながら、そんな私を見ていた。
彼女といると、どこか落ち着く。見守られている感覚に幸福感すらうかぶ。
彼女とは、とてもうまくやっていけそうだ。
『ナギニ、さん…私はアリス・八神です。
これから、よろしくお願いしますね。』
『さんはいらないよ。よろしく、アリス。』
彼女は私の手が触れているまま身体をすべらせた。
そして私の身体に、それほど強くない力で絡みつく。
私の顔にスッと顔を寄せながら、彼女は優しく囁いた。
