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お礼画面

ビルス様夢 ※恋人設定



「まだー?」

「も、もう少しだけ待ってください!」

ビルス様に料理を振る舞おうと地球から持ち寄った食材を調理していた私は今、カボチャと格闘を繰り広げていた。

「…だめだ…抜けない…。」

…深々と突き刺した包丁はカボチャにホールドされ、びくともしない。

諦めて他の食材を調理しようとも思ったけど、生憎此処にある包丁はカボチャにぶっ刺さっているこれ一本しかない。

「………押してダメなら…引いてみろっ!!…う…!くぅ…!!…………はぁ…。」

うーん…だめだな…。押してもだめ、引いてもだめとなると…。

「…割る…?」

足元には狙ったとしか思えない位置に漬物石が鎮座している。

「まあ、一か八か…。…よっ、と…重…。」

漬物石を抱えて大きく振りかぶる。

「よし、せー、」

「ねぇ、待ちくたびれたんだけ…」

「あ…。うわっ、とっ、と!!!」

ビルス様と目が合い、着地点を失ってしまった漬物石に引っ張られよろける。

ビルス様が漬物石を片手で掴み私から取り上げた。

「……何やってんの?」

「えっと…料理、です…。」

手元の漬物石に目を滑らせて「ふうん?」と一言だけ返された。
今、絶対鼻で笑われた…。

「初めて見る調理方法だったね。ボクはてっきり事件現場にでも遭遇したのかと思ったよ。」

小さく上に放り、漬物石をまるでボールの様に弄んでいる。

「まあ、そうですね…ちょっとカボチャの頭蓋をかち割ろうと…。包丁が…その…。」

私の背後、包丁が突き刺さっているカボチャにビルス様が目を丸くする。

「……トドメでも刺したかったの?」

「違いますよ。抜けないんです。包丁が。」

はぁ、とため息をつく。
このままじゃ料理続行は不可能だ。

ビルス様が手を貸してくれればなぁ…。

物言いたげな目でビルス様を見てみる。
私のその視線に気付いたビルス様の顔がニヤついたものに変わった。

「高くつくぞ。」

そう言って漬物石を置き、カボチャからいとも簡単に包丁を引き抜いた。

「えっ!そんなにあっさり…。」

「当然だろう。ボクを誰だと思ってるんだ?…さて、じゃあどうしようかな。」

顎に手を当て、楽しげに見返りを考えているビルス様が怖くてたまらない…。
高くつく代償…料理で許してもらえないかな…。

ビルス様の影が揺れ、目の前が陰る。
あ…、と思う頃には唇が触れていた。

触れるだけ…それ以上深く入り込む事は無く、軽いリップ音を響かせて直ぐに離れた。



「とりあえず、これでいいよ。いい加減お腹空いてきたしね。」

呆然としていた私もその言葉で我に帰る。

「そ、そうですね。直ぐに作ります。」

高鳴る胸を必死で抑え、ドタバタと慌ただしく料理に取り掛かる。
不意打ちは心臓に悪い…。

チラッと背中越しに盗み見たビルス様は何かをつまみ食いでもしたのか満足気に口の端を舐めている。

…それにしても、高くつくと言っていた代償が存外可愛いもので済んで良かった。

ひっそりとそう安堵していた私の耳元で、すれ違いざまビルス様が囁いた。




「残りの分はちゃんと夜に払ってもらうから。」



「早くしてよね。」と、ご機嫌に台所から去っていくビルス様にぱくぱくと口を動かすことしか出来ず、結局抗議の言葉を発する事は叶わなかった。



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