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翼
遅くなりました。
今から帰ります。
もうご飯食べちゃいましたか? -
あかね
おつかれさま
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あかね
お夕飯はまだ食べてないよ。
一緒に食べたいと思って。 -
翼
よかった!
カレー貰ったので一緒に食べましょう! -
翼
輝さんがよかったらってくれたんです!
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あかね
え、カレー?
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思わず思ったままに返信してしまう。
目の前には、彼が帰ってきたら一緒に食べようと思って作っていた夕飯のカレーがあった。 -
翼
あれ?あかねさんカレー好きですよね?
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翼
輝さんのカレー、すっごく美味しいんです!あかねさんにも1回食べてみて欲しくて!
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あかね
天道さん、料理上手だもんね
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天道さんのカレーの話は彼から何度も聞いていた。
私が市販のルーで作ったカレーなんて、きっと適いっこない。これは、彼には見せずに明日1人で食べよう。 -
翼
……あかねさん?
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翼
どうかしたんですか?
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あかね
え、どうして?
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翼
なんだかいつもより返信が元気がない気がして……
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翼
俺の気のせいだったらごめんなさい!
急いで帰りますね! -
あかね
実は……
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あかね
私もお夕飯にカレー作ってたんだけど
せっかく天道さんがくれたのならそっちの方がいいかなって思って -
正直すごくもやもやするけど……
天道さんは好意でくれているのだし、私の料理より美味しいであろうことは、どうしたって変わらない。 -
あかね
作ってたのは明日のお昼にするから大丈夫!
帰ってきたら天道さんのカレー一緒に食べよう! -
言い訳みたいに、大丈夫と続けてしまう。
本当は、私が作ったカレーを食べて欲しかったけど…… -
翼
え!
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翼
カレー作っててくれたんですか!!
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翼
今すぐ帰りますね!
もうすぐ着くので -
あかね
そんな、急がなくていいよ!
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翼
ダメです!
俺あかねさんのカレー食べたいです! -
翼
輝さんのも、あかねさんのもどっちも食べますから!
温めて待っててください。 -
翼
ほんと、もう家着くんで
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あかね
急がなくていいってば!
それに私が作ったのは私が後で食べるから、気を使わなくていいよ -
翼
気なんて遣ってませんよ
俺はあかねさんが作ったものが食べたいんです -
翼
彼女が作った料理なら、おなかいっぱいでも、いつだって残さず食べますから
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翼
だから待っててくださいね。
すぐに帰ります -
ぽかんと、返信するのも忘れてメッセージ画面を眺めてしまう。
私は料理上手で彼に慕われている天道さんに、ちょっぴり嫉妬してしまっていたというのに、彼はこんなにも簡単にそんな気持ちを拭い去ってしまう。 -
あかね
ありがと。
待ってます。 -
翼
はい!
カレー楽しみです!
あかねさん大好きですよー! -
そうして私は、玄関から彼のただいまの声が聞こえるのを待ちながら冷えたカレーを温め直すのだった。
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