一緒に食べたい
お風呂から上がると、鋼はソファーに座っており、その前のローテーブルにはアイスが置いてあった。
アイスには茶色いデザートソースのようなものがかかっている。横に茶色と緑で綺麗にデザインされている瓶が置いてあるので、きっとそれだろう。
「美味しそうだね」
目の前のアイスを食べるでもなくぼうっとしてる鋼に後ろから声をかけると、鋼はゆっくりと振り向いて、貰ったんです、と呟いた。
「レポート手伝ったお礼にって、国近と当真に」
どこかほわほわとしながら話す鋼は、先輩は、明日お休みですよね?と確認してくる。
ぼくは、そうだよ、と返事をしたあと、鋼を観察しつつソファーへと座った。
どうやら、鋼の顔は少し赤いようだ。
「鋼、それって」
「リキュールだそうです。アイス専用の」
「アイス専用……」
思った通りソースに見えたそれはお酒で、先に少し味見をしたから赤いのだろう、と納得すると同時に、アイス専用という言葉が気になった。珍しいな、と思ったのだ。
「はい。バニラアイスとあうから、先輩と食べなよ。って貰いました」
ぼくも鋼も、苦いお酒がそんなに得意ではないことを知っている2人の気遣いなのだろう。
見た目からも甘そうなそれは、一見してお酒だとはわからない。
「だから、最初は2つ用意しようと思ったんですが、なんだか、ふたりで1つを食べたいなって思って……」
「ん…?」
鋼は全部言い切る前に、スプーンでリキュールのかかったアイスを掬った。そして、腕を持ち上げ……。
「だから、せんぱい、あーん」
同棲をはじめた当初の鋼ははりきりすぎて心配だったのだけど、慣れた今は逆に遠慮がなくなったというか、ぼくに対して無防備すぎて心配になる。もちろん、嫌ではない。でも、こういう時は、ちょっと困る。
「じ、じふんで食べるよ」
「……」
「……わかったよ、はい」
無言でじっと見つめられ、敗北したぼくは口を開ける。これは、やる方よりやられる方が絶対恥ずかしい。
しかし、次の瞬間口の中に広がる複雑な甘みに、恥ずかしさも吹き飛んだ。
「美味しいね、これ」
「ですよね」
そう嬉しそうに笑ってから、今度はアイスを自分の口にも含んだ鋼は、そのままぼくの顔に近付いてきた。
これは……。
「んっ……」
条件反射で開いたぼくの口に、鋼の口が重なり、さっきと同じ、……のはずが、さらに一層甘さを増したように感じるアイスが口の中を満たす。
鋼の舌が丁寧にアイスとリキュールを口の中に運び、ゆっくりと溶かすように舌を動かしていた。
ぼくはどうするか一瞬迷って、それでもこの状況を逃すこともないなと鋼の舌を受け入れた。
口の中のアイスがなくなったら、今度はぼくが、鋼にあげよう。
アイスには茶色いデザートソースのようなものがかかっている。横に茶色と緑で綺麗にデザインされている瓶が置いてあるので、きっとそれだろう。
「美味しそうだね」
目の前のアイスを食べるでもなくぼうっとしてる鋼に後ろから声をかけると、鋼はゆっくりと振り向いて、貰ったんです、と呟いた。
「レポート手伝ったお礼にって、国近と当真に」
どこかほわほわとしながら話す鋼は、先輩は、明日お休みですよね?と確認してくる。
ぼくは、そうだよ、と返事をしたあと、鋼を観察しつつソファーへと座った。
どうやら、鋼の顔は少し赤いようだ。
「鋼、それって」
「リキュールだそうです。アイス専用の」
「アイス専用……」
思った通りソースに見えたそれはお酒で、先に少し味見をしたから赤いのだろう、と納得すると同時に、アイス専用という言葉が気になった。珍しいな、と思ったのだ。
「はい。バニラアイスとあうから、先輩と食べなよ。って貰いました」
ぼくも鋼も、苦いお酒がそんなに得意ではないことを知っている2人の気遣いなのだろう。
見た目からも甘そうなそれは、一見してお酒だとはわからない。
「だから、最初は2つ用意しようと思ったんですが、なんだか、ふたりで1つを食べたいなって思って……」
「ん…?」
鋼は全部言い切る前に、スプーンでリキュールのかかったアイスを掬った。そして、腕を持ち上げ……。
「だから、せんぱい、あーん」
同棲をはじめた当初の鋼ははりきりすぎて心配だったのだけど、慣れた今は逆に遠慮がなくなったというか、ぼくに対して無防備すぎて心配になる。もちろん、嫌ではない。でも、こういう時は、ちょっと困る。
「じ、じふんで食べるよ」
「……」
「……わかったよ、はい」
無言でじっと見つめられ、敗北したぼくは口を開ける。これは、やる方よりやられる方が絶対恥ずかしい。
しかし、次の瞬間口の中に広がる複雑な甘みに、恥ずかしさも吹き飛んだ。
「美味しいね、これ」
「ですよね」
そう嬉しそうに笑ってから、今度はアイスを自分の口にも含んだ鋼は、そのままぼくの顔に近付いてきた。
これは……。
「んっ……」
条件反射で開いたぼくの口に、鋼の口が重なり、さっきと同じ、……のはずが、さらに一層甘さを増したように感じるアイスが口の中を満たす。
鋼の舌が丁寧にアイスとリキュールを口の中に運び、ゆっくりと溶かすように舌を動かしていた。
ぼくはどうするか一瞬迷って、それでもこの状況を逃すこともないなと鋼の舌を受け入れた。
口の中のアイスがなくなったら、今度はぼくが、鋼にあげよう。
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