晩秋の雑想

 若い頃はともかく頭のいい男性が好きだった。
 彼らの知性の鋭さ。高速で出力される、示唆に富んだ言葉。深い教養に裏打ちされたユーモア。
 わたしは彼らにあらゆる面で魅了されていた。彼らと一緒にいると自分まで賢くなったような錯覚を味わうことができた。
 
 しかし、頭のいい男性はわたしを愛してくれなかった。思いの丈を打ち明けたこともあった。でも、彼らから返ってきたのは、あいまいな微笑だけだった。

「きみの気持ちは嬉しいよ。ソレにこたえるつもりは全くないけどね。まあ、いいから引き続き、僕のファンのひとりでいたまえ」

 こんな風に明言されたわけではない。でも、彼らの高級な脳みそに詰まっていたのは、愚かな女を見くびり、その気持ちを軽んじる不誠実な心だけだろう。

 年を重ねたいまなら分かる。
 賢さだけが男性の美点ではない。

 46歳になったわたしは、みずからピエロの役を引き受け、時には自虐をかまし、周囲の笑いを誘うおバカキャラこそ、真のいい男だと思う。

 実名を挙げることは控えるが、お笑い芸人の某氏がわたしの理想とするいい男だ。ロケ先で一般人にツッコミを入れられて苦笑している姿を見ると、つい応援したくなる。

 それにしても、娘時代というのはあっという間に過ぎてしまうものですね。ものの道理が分かった頃には時すでに遅し。
 時間を巻き戻せたらという益体のない空想に浸るとしたら、頭脳自慢の男性は全員スルーして、みずからを笑いものにできる男性にチョコレートを渡したい。

 優しいピエロ氏はきっと、わたしが彼に告白をしたら、その気持ちを重々しく受け止めてるに違いない。
 そして彼ははっきりと「あなたとは残念ながらお付き合いはできません」とフッてくれることだろう。
 間違っても自分の女性ファンを集めた生け簀でわたしを飼い殺すことはない。

 読者諸氏は、いまから優しいピエロを演じられる男性を探せばいいと思ったかもですが、人生の秋を生きているわたしにはリアルの恋愛は難しい。
 身近な男性のいいところを見つけて、明るいスマイルを彼らに返せればそれで充分です。
 
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