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いつもとは少し違う豪華なディナーを終え、いつもの峠ではなく夜景の見える静かな駐車場にFDを停める。
エンジンを切ると、車内には少し緊張した空気が流れた。
今日はクリスマス。
この日のために用意したプレゼントを、いつ渡そうか。
なまえがタイミングを計っていると、隣の啓介もどこかそわそわしているのが伝わってきた。
「…あのさ」
「…あのね」
ふたりの声が、見事に重なる。
「なんだよ、お前から言えよ」
啓介はバツが悪そうに視線を逸らしたが、その頬はほんのりと赤い。
なまえはバッグの中から、リボンのかかった小さな包みを取り出した。
「これ、啓介さんに」
「…ああ、オレもだ」
啓介もまた、ダッシュボードから同じくらいのサイズの箱を取り出す。
「せーので開けるか」
「ふふ、うん」
子どものように
ふわりと漂ったのは、鼻をくすぐる上質な革の香りだった。
「あ…」
なまえの手元に現れたのは、なまえの柔らかい雰囲気にぴったりの、優しいキャメル色のキーケース。
そして、啓介の手元にあるのは──艶のある黒革に、FDのボディを思わせる深いイエローのステッチが走る、クールなキーケース。
カラーリングこそ違えど、その滑らかなフォルムも、手に吸い付くような質感も、まったく同じブランドの、同じデザイン。
「…まさか」
なまえが目を丸くして、啓介の手元と自分の手元を交互に見比べる。
「フッ、マジかよ」
啓介も思わず口元を緩めた。
なまえは啓介の愛車を想って。啓介はなまえの笑顔を想って。
別々の場所で、別々の時間を過ごしながら選んだはずなのに、結局は同じ答えに辿り着いていた。
「…示し合わせたわけでもねぇのにな」
「ふふ、すごい偶然。…ううん、必然かな?」
「かもな」
啓介は自分のFDのキーを、なまえから貰ったばかりの黒いケースに丁寧に付け替える。
その手つきがとても愛おしくて、なまえも自分の鍵をキャメルのケースに収めた。
「大事にする。…サンキュな」
「わたしも。…ありがとう、啓介さん」
新しい革の感触を確かめるように、ふたつのキーケースを並べてみる。
それはまるで最初から対になることを知っていたかのように、しっくりと寄り添っていた。
これから先、この鍵を持って、ふたりでいろんな場所へ行くのだろう。
偶然が生んだ奇跡は、どんな高価な宝石よりも輝いて見えた。
最高のクリスマスプレゼントを握りしめ、なまえは啓介の肩にそっと頭を預けた。
(おわり)
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