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地上200メートル。
眼下に広がるのは、宝石箱をひっくり返したような東京の夜景。
予約困難なホテルの最上階、その中でもたった一席しかない特等席で、なまえは夢見心地でグラスを傾けていた。
「…すごい。魔法みたい」
なまえがため息をつくと、向かいに座る涼介が、優雅にグラスを揺らした。
「気に入ってくれたかな」
落ち着いた低い声。
オーダーメイドのスーツを完璧に着こなす彼は、夜景よりも遥かに美しく、目を奪われる。
ホテルへの送迎、料理が出てくるタイミング、流れるピアノの旋律。
すべてが緻密に計算されたかのように、流れるような時間が過ぎていく。
あまりにも完璧すぎて、少しだけ胸が苦しくなるほどだ。
「涼介さん、こんな素敵な場所、予約するの大変だったんじゃ…」
なまえが恐縮して尋ねると、涼介はふっと口元を緩めた。
「公道最速の理論を組み立てることに比べれば、デートのロジックなんて単純なものだよ」
さらりととんでもないことを言う。
けれど、その瞳は穏やかだ。
「なまえが何時にここに来て、どの角度で夜景を見て、どの瞬間に笑顔になるか。…すべての変数をシミュレーションしてきた」
「えっ」
「俺の描いたシナリオ通りだ。…いや」
涼介は言葉を切り、テーブル越しになまえの手へと指を伸ばした。
その指先が、なまえの薬指に触れる。
「君の笑顔は、俺の想定値を遥かに超えているな」
(…っ!)
心臓が大きく跳ねた。
どんな難解な医学書も、峠の攻略法も頭に入っている彼が、たったひとりの女の子を喜ばせるために、ここまで真剣になってくれている。
その事実が、なによりも極上のプレゼントだった。
涼介は、なまえの手の甲にうやうやしく口づけた。
まるで、王子様が姫に
「メリークリスマス、なまえ。君に出会えたことだけが、俺の人生で最大の『嬉しい誤算』だ」
完璧な彼が、愛おしそうに目を細める。
揺るぎない自信と、包容力。
この人の掌の上でなら、一生転がされていたい。
なまえは熱くなる頬を隠すことも忘れ、彼の手をぎゅっと握り返した。
それは、どんな数式でも解き明かせない、世界で一番幸せな夜だった。
(おわり)
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