ショート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
予約していた高級フレンチも、輝くイルミネーションも、今日はもう関係ない。
部屋の照明を落とした、薄暗い寝室。
聞こえてくるのは、加湿器が蒸気を吐き出す音と、少し荒い呼吸音だけ。
ベッドの上、真っ白なシーツに沈み込んでいるのは、あの高橋涼介だ。
「…すまない、なまえ」
熱に浮かされた瞳が、潤んで揺れている。
普段の冷静沈着な『赤城の白い彗星』の面影は、今の彼にはない。
激務とプレッシャー。
張り詰めていた糸が、このクリスマスの日にぷつりと切れてしまったみたいだ。
「謝らないでください。わたしが涼介さんの看病できるなんて、光栄なんですから」
なまえは洗面器で絞った冷たいタオルを、彼の火照った額にそっと乗せた。
「…ん」
涼介が気持ちよさそうに目を細める。
その無防備な表情を見ていると、胸の奥がキュンと締め付けられた。
(不謹慎だけど…嬉しい)
みんなが憧れるカリスマ・高橋涼介。
けれど、こんなに弱くて、子どもみたいに熱い彼を知っているのは、世界中でわたしだけ。
この部屋には、誰も入ってこられない。
今日は彼を、わたしだけで独占できる。
そう思うと、心配する気持ちの裏側で、暗い喜びがふつふつと湧き上がってしまう。
「…なまえ」
熱い手が、なまえの手首を弱々しく掴んだ。
「どこにも…行くな」
うわごとのような、けれど縋るようなそのひと言。
なまえは彼の手を両手で包み込み、頬を寄せた。
伝わってくる高い体温さえ、愛おしい。
「行きません。…ずっと、ここにいます」
「…そうか」
安心したように、涼介の呼吸が少しずつ深くなっていく。
華やかなデートは消えてしまったけれど。
彼の弱さを守れるなら、どんな宝石よりも価値がある。
(早くよくなってくださいね。…でも、もう少しだけ…)
この甘美な時間を噛みしめながら、なまえは聖夜が明けるまで、彼の手を握り続けていた。
(おわり)