きみの隣で、夜が明ける
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なまえは誰にでも気さくに話しかけられるタイプだった。
男女問わず友達が多く、この日もいつもの仲間たちと峠に集まっていた。
笑い声が絶えない賑やかな時間のなかで、なまえは自然体のまま、皆と打ち解けていた。
「おい、なまえ!お前、今日もモテモテじゃん!」
「なにそれ、意味わかんないし!」
軽口を叩かれて、なまえが笑う。
その笑顔につられて、周囲の空気がふっと明るくなる。
啓介も変わらずその輪にいて、冗談を交えながら場を盛り上げていた。
けれど、ふとした瞬間。
その何気ないやりとりの向こうで、なまえは一瞬、心の中で呟く。
(男女の友情って、ちゃんとあると思う)
そう信じているからこそ、誰に対しても変わらず接してこられた。
もちろん、啓介に対しても。
──けれど。
夜が更け、少しだけ静けさが訪れた頃。
その空気のなかで、啓介が急になまえの方を見た。
「なあ、お前…男女の友情ってさ、本気で信じてんの?」
軽く笑っているように聞こえたその声。
だけど、目だけが真っ直ぐで、どこか本気だった。
「…信じてるよ?」
戸惑いながらも、なまえはそう答える。
啓介はほんの少し目を伏せて、ぽつりと笑った。
「そっか」
その笑顔が、どこか寂しげで──なまえの胸が、静かにざわめいた。
「…オレはさ、お前のこと、ただの友達とは思えねぇんだけどな」
思わず息をのむ。
さっきまでみんなと笑っていた彼とは違う、落ち着いた声。
熱を含んだその響きに、なまえの心臓が跳ねた。
「…啓介?」
呼びかける声に、彼は肩をすくめて言う。
「ま、深く考えんなよ。お前がどう思ってるかは自由だし。でも…オレの気持ちは、ちょっとだけ違うってこと」
そのまま立ち上がって、いつもの調子で笑う。
「さて、帰るかー!」
軽く伸びをしながら車へ向かっていく啓介の背中を、なまえは黙って見つめていた。
さっきまで確かだったはずの“友情”という言葉が、ふいに揺らいだ気がして──
胸の奥に芽生えた感情を、そっと抱きしめるしかなかった。
(つづく)
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