ふたりで、未来を走る
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なまえは涼介のことが好きだった。
好きで、信じていて、だからこそ今の関係を大切にしたいと思っていた。
だけど──その日、大学の構内で耳に入ってしまった。
「え、涼介ってあの子と付き合ってるの?なんで?」
「マジで?あんな大人しい子、趣味か?」
「正直もっと釣り合う子いそうなのに…」
軽口混じりの、涼介の同級生たちの会話。
彼らは悪気がないのかもしれない。
でもなまえには、突き刺さるように聞こえた。
自分じゃ、釣り合わないのかもしれない──
そう思ってしまった瞬間、胸の奥がズンと沈んだ。
その夜、なまえの部屋。
なまえは普段通りに振る舞おうとしたけれど、どこかぎこちなくて。
笑っているのに、目が笑っていないことに、涼介はすぐ気づいた。
「…なまえ」
「ん、なに?」
「今日、何かあった?」
なまえは、ふと目を伏せてから、小さく首を横に振った。
「…ううん、なにも。…なにもない、けど」
言い終えた後、自分の声が少し震えていることに気づいた。
涼介はすぐに言葉を重ねない。
静かにソファの隣に座り、なまえの手をそっと握った。
手の温度が、じんわりと心に沁みてくる。
「俺の友達に、何か言われた?」
なまえは、一瞬驚いた顔をして、それから…ゆっくり頷いた。
「ちょっとだけ、ね。“なんであんな子が”って言われて…別に、本気で気にしてるわけじゃないけど…でも、涼介くんの隣にいるのがわたしで、いいのかなって…少しだけ、思ってしまったの」
言い終えた時には、涙がひとつふたつ、頬を伝っていた。
涼介はその涙を指先でそっと拭ったあと、こう言った。
「俺は、なまえが隣にいることに、誇りを持ってるよ」
なまえの目が、はっとして涼介を見る。
「誰がどう言おうと、俺の目に映ってるなまえは、優しくて、強くて、頑固で、ちゃんと自分で選んで歩ける子だから」
なまえの胸に、ふっと何かが溶けるような感覚が広がった。
さっきまでの不安が、少しずつ、静かに流れていく。
涼介は、なまえをそっと抱き寄せた。
「心配するな。もしまた誰かに何か言われたら、俺が全部黙らせる。…だから、なまえ自身が、自分を疑うことだけはしないで」
その言葉に、なまえはこくりと頷いた。
この人が隣にいてくれるなら、きっと大丈夫。
そう思えた。
誰よりも静かに、けれど誰よりも深く。
涼介は、なまえの不安を包み込んでいく。
それは派手じゃないけれど、ずっと続いていくような、確かな愛の形だった。
(つづく)