ふたりで、未来を走る
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夜の公園。
誰もいないベンチに、ひとり啓介が座っていた。
スマホの画面には、なまえからの「元気してる?」というメッセージの通知。
未読のまま、画面を伏せる。
「今さら、何なんだよ…」
誰にでも分け隔てなく優しいなまえ。
でも啓介にとってその優しさは、毒みたいに胸を締めつける。
なまえの全部が好きだった。
無理して笑うとこも、怒るときに言葉が詰まるとこも。
全部わかってて、全部守りたかった。
けど――選ばれたのは、涼介だった。
(アニキなら、なまえをちゃんと幸せにできる。頭では分かってる。けど、心が「嫌だ」って、まだ叫んでんだ…)
自分がもっと早く動いてたら――
もっと強引に伝えていたら――
そんな“もしも”が、頭の中で何度もループする。
啓介は空を見上げた。
星も月もない夜。
だけど、見上げる先には、あの日なまえと笑いあった空が確かにあった。
「なあ、なまえ。オレ、まだお前が好きだ。でもそれは、もう口にしたらダメだって気がしてる」
声は、夜に溶けるほど、小さかったけれど。
「でも――せめていつか…お前が泣いたとき真っ先に支えられるように、オレは、遠回りでもちゃんと強くなるよ」
拳を握って、立ち上がる。
笑顔で手放せるほど、まだ強くない。
でも、見守ることならきっとできる。
なまえの幸せを、ずっと祈ることくらいは。
いつか、心の奥で叫んでる「好きだ」って気持ちが、ちゃんと昇華される日まで。
(つづく)