ふたりで、未来を走る
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「泣いちゃうじゃん…」
ぽろりとこぼれた涙を、啓介は慌てて指先でぬぐおうとした。
けれど、なまえ2はその手を取って、小さく首を振った。
「…泣いていいって、言ってくれてるんだよね」
「…ああ」
「じゃあ、今日は…少しだけ、甘えさせて」
そう言って、なまえ2は啓介の肩にそっと寄り添った。
体温が伝わる。
小さく震えていたはずの彼女の指が、今はちゃんと、啓介の服の袖をつかんでいた。
「…ねぇ、啓介くん」
「ん?」
「わたし、ずっと“うまく笑えない”自分が嫌だったの。でも、それをどうにかしなきゃって思えば思うほど、余計に自分がどんどん苦しくなってた」
「……」
「でもね──今日、啓介くんが来てくれて、わたしのことを見てくれて、なんかちょっとだけ、自分のことも許せた気がしたんだ」
「…なまえ2」
「好き、だよ。わたしも。すごく、すごく嬉しかった。こんなふうに、ちゃんと好きになってもらえるなんて、思ってなかったから…」
その言葉に、啓介の心が熱くなる。
迷いも、過去も、何もかもを肯定するような「好き」だった。
「オレも、ちゃんと向き合うよ。不器用だけど、なまえ2のこと、ちゃんと笑わせたい。たくさんの、“初めて”を、一緒に見たい」
「…うん。わたしも」
風が、ふたりの髪をやさしく揺らした。
さっきまで知らなかった“あたたかさ”が、胸いっぱいに広がっていく。
ふたりの間に流れる沈黙は、もう気まずさなんかじゃない。
寄り添いあえる静けさだった。
「じゃあ、さ…次の休み、一緒に出かけない?」
「…うん。行きたい。行く」
なまえ2が笑った。
それは、啓介が見たかった“本当の笑顔”だった。
(つづく)