ふたりで、未来を走る
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その日、涼介はなまえの部屋にいた。
晩ご飯を一緒に食べようということになっていたけど、なまえの箸の動きはどこかぎこちなく、笑顔も少しだけ硬かった。
(大丈夫。もう泣いたんだし。大丈夫、大丈夫…)
そう言い聞かせていたなまえの心の隙間に、涼介の言葉が静かに入り込んだ。
「なまえ、今日、なんか…違う?」
「…え?」
「無理に笑おうとしてる顔、ちゃんとわかる」
なまえの手が止まる。
驚きと、戸惑いと、少しの…安堵。
「何があった?」
涼介はそれ以上なにも言わずに、ただなまえの顔を見つめていた。
その目は、まっすぐで、静かで、あたたかい。
隠そうとしていた心の奥にまで、優しく触れてくる。
「…涼介くんの、同級生の人に会ったの。…きれいな人」
「…結月、だね」
なまえの目が見開かれる。
「知って…たの?」
「ああ。彼女、昔から“俺のことは自分が一番よく知ってる”って思ってる節があって。でも、俺はちゃんと自分で決めてきた。誰と一緒にいたいか、誰を守りたいか──それは、全部」
涼介はなまえの手をそっと取った。
「なまえ。俺がお前を好きになったのは、“誰かの代わり”なんかじゃない。“なまえ”だから、好きになったんだ」
「…っ」
なまえの目に、涙がにじむ。
けれど今度は、痛みじゃなく、安心のせいだった。
涼介は立ち上がると、なまえの隣に腰を下ろした。
「辛い時に無理して笑わないで。全部ひとりで抱え込まないで。俺を頼って。…そうしてくれるのが、何より嬉しい」
ゆっくりと、包み込むように抱きしめられて、なまえの心はふわりと軽くなった。
「涼介くん…ありがとう」
その日、なまえはようやく心の底から笑うことができた。
やっぱり──どうしても、「この人がいい」と思えた、その笑顔だった。
(つづく)