夢小説的な台詞で20題
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「…っ、勝手にすれば?」
そう言い捨てて、なまえはリビングから出ていった。
啓介は追いかけなかった。
いや──追いかけられなかった。
胸の奥で、何かがぐらぐら揺れてて、それをうまく言葉にできなくて、結果、つい強い言い方でなまえを傷つけてしまった。
──なんで、あんな言い方しかできなかったんだよ。
夜になっても、なまえは自室から出てこない。
ノックもできないくせに、なまえの部屋の前から離れられなかった。
何がきっかけだったのか、もう思い出せないくらい小さなことだった。
たぶん、なまえが涼介のことを「やっぱりすごいね」と言った、それだけ。
分かってる。
彼女の尊敬は、決して恋愛感情じゃない。
けど──
「腹が立ったんだ。…自分に」
ふとそうつぶやいたとき、ドアがそっと開いた。
バツが悪そうに立ち尽くす啓介を見つめるなまえの目が、少し潤んでいた。
「…怒った、の?わたしにじゃなくて、“自分”に?」
「ああ」
低く、静かに、言葉が落ちる。
「オレってマジでさ、コンプレックスの塊なんだよな。アニキと比べられたくないのに、自分の中じゃずっと比べてる。アニキの方がすげーとか、頭いいとか、冷静だとか。おまえに言われると、それが正しい気がして…」
啓介は苦笑する。
「認めたくねぇのに、認めてる自分にムカついて…。で、余裕ないまま、おまえにキツいこと言って、逃げるように背中向けて。…ほんっと、ダサいよな」
沈黙が落ちる。
だけど、その沈黙はさっきみたいに冷たくなかった。
「…ばか」
ぽつりと、なまえが言った。
「…ほんと、そういうとこ、めんどくさいんだから」
啓介の瞳が、少しだけ揺れる。
「…でも、ちゃんと話してくれて、よかった」
「…なまえ」
「怒ったけど、わたしも…言い方、気をつけるね。知らずに傷つけてたなら、謝る。ごめんね」
「…オレの方こそ、マジで悪かった」
啓介が歩み寄ると、なまえがそっと手を伸ばした。
その手を、ぎゅっと掴む。
「…オレ、誰に何言われてもいいけど、おまえにだけは、ちゃんと見ててほしい。カッコ悪いとこも、ぜんぶ知っててほしい。…それでも、隣にいてほしいって、思ってる」
「…うん。いるよ、ちゃんと、隣に」
ふたりの手が、しっかり絡み合った。
不器用で、まっすぐで、だからこそ──こうして心が重なる瞬間が、何より愛しい。
(3.「腹が立ったんだ。…自分に」)