2023年没作品詰め合わせ

オーシュットは自前の毛皮コートを身体に巻きつけ、雪原を駆け回っていた。否、正確には獲物を追っていた。

「オーシュット! あいつ、逃げ足が早いわ。雪に紛れるのも、臭いを消すのもとっても上手!どうするつもり!?」

マラマフクロウのマヒナが、小さな氷粒を羽に纏わり付かせて、羽を平行に、自身の横までやってくる。外から見たらただ可愛らしい鳴き声で囀っているようにしか見えないだろう。
だが、明確な言語として音は組み合わされて、オーシュットの耳を揺らす。

「マヒナ! 羽が凍っちゃうから肩にいなよ」

問いかけには答えず、オーシュットは彼女の負担を減らすための心遣いを言葉にする。
考えなどない。匂いは僅かながらにもまだ感ずるし、この視界の悪さにも慣れた。
トトハハは一年通して暖かな気候であり、寒さや雪なんかとは無縁である。オーシュットははじめて見るものたちに関心が尽きなかったが、今となっては凪いでいた。
どこに行ったって、魔物たちは同じようなものなのだ。弱気は食われ、強きは食らう。自然の流るるままに生き、時に蹂躙される。
人が絡むと、その秩序も乱れるが。されど逆に、刷新されることもあろう。助けとなることもある。何が起こるかはわからない。あるがままで良い。

オーシュットは悪い足場をものともせず、むしろ味方に付けてすいと滑っていった。
マヒナが驚いて、小さく羽ばたいた。「速いわっ」
人間の作った靴。ツルツルの床でも、上手く制御すれば、このように速度をつけて進むことが可能になる。

「新しい靴を作ったんだよ! これで楽ちんだね」

ちょっと得意になる。雪街で見つけたピカピカの靴をパルテティオに勧められたのだが、履いてみたらピッタリで、よく馴染む。デザインはちょっと変わっていて、履きこなせる人がなかなか見つからなかったらしい。ただ、足裏の刃物を抜き取るのが、ちょっと手間だが。

さて、獲物は少し焦っているようだ。鼻を動かせばわかる。
オーシュットは背中の弓を抜き取り、手頃な矢も合わせて、迷いなく打ち込む。
風の呼吸に合わせて、フッと指を離す感じ。

「ん、当たった!」

「まあ、本当? 全然、見えなかったわ!」

右腕の、肘の手前あたりに矢が突き刺さっている。血の匂いが香るのがわかる。

「マヒナ、魔法は使える? 風のやつ」

「ええ、少しなら。何をするつもり?」

「まあまあ見てなって。くるっとお願いね〜」

「くるっと? こう、かしら?」

「そうそう〜えいやっ、と」
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