二章
夢小説設定
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最終選別を終えた二人は、それぞれ別の道を前にして立ち尽くしていた。
名前の身体は、まだ傷だらけだった。
足元はふらつき、肩と背の包帯に血が滲む。
それでも、背筋だけは凛と伸びていた。
「……ほんとに、一人で、行くの?」
綾斗の声には、不安がにじんでいた。
名前は小さく頷いた。
「……静水様のところへ、戻る」
その瞬間、綾斗の表情が歪んだ。
「でも……そんな体で……!」
「立ってるのだって、やっとじゃないか!?」
「ふつうじゃないよ、それ……!」
「俺……俺は、まだ一緒にいたいとか、それはそうなんだけど、でもそれだけじゃなくてっ…!」
「怖いんだよ……!」
拳を握りしめながら、綾斗は叫ぶように言った。
そんな綾斗に、名前は静かに返す。
「……藤の香のお守りは、綾斗ももらったよね?」
「いや道中鬼に襲われるのが怖いから一緒にいたいとかって話ではなく!!」
ビシッ!と名前にツッコミを入れた綾斗が、傷だらけの名前の手をそっと握った。
「名前ちゃん、俺さ……」
「戦いの中で、やっと気づいたんだ。名前ちゃんは、本当にすごい女の子だよ。強くて、誰かの盾になろうとして…誰よりも先に立って、俺を守って……」
「でも今は、誰が名前ちゃんを守るの?」
「……お願いだから、ほんの少しで良いから、俺に守らせてよ……」
その声は震えていた。
心配と恐れ――そして、誰よりも名前のことを思っての叫びだった。
名前はしばらく無言のまま、綾斗の目を見つめていた。
そして、静かに言った。
「……ありがとう。そう言ってくれて、嬉しいよ」
「でも、私は大丈夫」
「自分の足で戻って、“生きていた”って、ちゃんと伝えなきゃ」
綾斗は、何かを言いかけて、俯いた。
そして、涙ぐみながら言った。
「……嘘だ。大丈夫そうに見えないのに……」
名前は、微かに微笑んだ。
「……綾斗。貴方は、貴方の帰る場所にちゃんと帰って。育手に、家族に、ちゃんと、ただいまって言ってあげて」
「さようなら、綾斗。色々とありがとう。貴方はきっと、強い剣士になる」
そこで、ふら、と名前の体が揺れる。
思わず綾斗が手を伸ばしたが――
名前はそれを緩やかに拒絶すると、ゆっくりと、綾斗に背を向け歩き始めた。
「……ああもう……!」
綾斗は唇を噛み、視線を逸らした。
「絶対、転ぶなよ……!」
返事はなかった。
けれど、去りゆく背中が――ほんのわずかだけ、肩を揺らした気がした。
綾斗は、その場に立ち尽くしたまま、しばらく拳を握っていた。
そして、声の限り叫んだ。
「さようならじゃなくて!“また”絶対会おう……っ!!」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
藤の葉が風にそよぐ、小さな庵の庭先。
その門前に、傷だらけの少女が一人――ゆっくりと、歩いてきた。
足取りはぎこちなく、呼吸も浅い。
肩と背には包帯、腰には一振りの剣。
そしてその背筋は、まっすぐだった。
庭で箒を持っていた静水が、ぴたりと動きを止める。
――そして、次の瞬間。
「名前……っ」
静水は箒を落とし、まるでらしくもないほど慌てた足取りで庵を飛び出す。
「……っ!」
名前が驚く間もなく、ふわりとその身体が抱きしめられた。
「……よく、……よく、戻ってきてくれました……!」
小柄な身体が、震えていた。
静水の声も、呼吸も、涙ぐんでいた。
普段は厳格で、言葉少なく――
感情を見せることなど、ほとんどなかった静水。
けれど今だけは、年老いたその腕が、
まるで宝物を包み込むように、名前の背を強く、強く抱いていた。
名前はしばらく、その温かな腕を受け止めるように、じっとしていた。
そして、ようやく、そっと小さく返す。
「……ただいま、戻りました。静水様」
その声はかすれていたけれど――
しっかりと、届いていた。
静水の目尻に、一筋の涙が光る。
「……ええ。おかえりなさい。名前」
藤の葉が、さらさらと鳴いた。
風が吹く中、二人は静かに、肩を寄せ合っていた。
誰もいない山奥の庵に――
確かに、ひとつの“帰る場所”があった。
●●●●●
〜大正コソコソ噂話〜
「能無し、木偶の坊」
「テメェ………っ!!」
「死ね」
「犬死しろ」
「ギィイイイイイッ!!!」
「(ええええ何この子いきなり饒舌になったと思ったら何で煽り出したの!?やめてくれる!?言っとくけど俺斬る自信ないからね!?)」
縄鬼との決戦時、実は綾斗は内心冷や汗ダラダラだったらしい。
終。
名前の身体は、まだ傷だらけだった。
足元はふらつき、肩と背の包帯に血が滲む。
それでも、背筋だけは凛と伸びていた。
「……ほんとに、一人で、行くの?」
綾斗の声には、不安がにじんでいた。
名前は小さく頷いた。
「……静水様のところへ、戻る」
その瞬間、綾斗の表情が歪んだ。
「でも……そんな体で……!」
「立ってるのだって、やっとじゃないか!?」
「ふつうじゃないよ、それ……!」
「俺……俺は、まだ一緒にいたいとか、それはそうなんだけど、でもそれだけじゃなくてっ…!」
「怖いんだよ……!」
拳を握りしめながら、綾斗は叫ぶように言った。
そんな綾斗に、名前は静かに返す。
「……藤の香のお守りは、綾斗ももらったよね?」
「いや道中鬼に襲われるのが怖いから一緒にいたいとかって話ではなく!!」
ビシッ!と名前にツッコミを入れた綾斗が、傷だらけの名前の手をそっと握った。
「名前ちゃん、俺さ……」
「戦いの中で、やっと気づいたんだ。名前ちゃんは、本当にすごい女の子だよ。強くて、誰かの盾になろうとして…誰よりも先に立って、俺を守って……」
「でも今は、誰が名前ちゃんを守るの?」
「……お願いだから、ほんの少しで良いから、俺に守らせてよ……」
その声は震えていた。
心配と恐れ――そして、誰よりも名前のことを思っての叫びだった。
名前はしばらく無言のまま、綾斗の目を見つめていた。
そして、静かに言った。
「……ありがとう。そう言ってくれて、嬉しいよ」
「でも、私は大丈夫」
「自分の足で戻って、“生きていた”って、ちゃんと伝えなきゃ」
綾斗は、何かを言いかけて、俯いた。
そして、涙ぐみながら言った。
「……嘘だ。大丈夫そうに見えないのに……」
名前は、微かに微笑んだ。
「……綾斗。貴方は、貴方の帰る場所にちゃんと帰って。育手に、家族に、ちゃんと、ただいまって言ってあげて」
「さようなら、綾斗。色々とありがとう。貴方はきっと、強い剣士になる」
そこで、ふら、と名前の体が揺れる。
思わず綾斗が手を伸ばしたが――
名前はそれを緩やかに拒絶すると、ゆっくりと、綾斗に背を向け歩き始めた。
「……ああもう……!」
綾斗は唇を噛み、視線を逸らした。
「絶対、転ぶなよ……!」
返事はなかった。
けれど、去りゆく背中が――ほんのわずかだけ、肩を揺らした気がした。
綾斗は、その場に立ち尽くしたまま、しばらく拳を握っていた。
そして、声の限り叫んだ。
「さようならじゃなくて!“また”絶対会おう……っ!!」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
藤の葉が風にそよぐ、小さな庵の庭先。
その門前に、傷だらけの少女が一人――ゆっくりと、歩いてきた。
足取りはぎこちなく、呼吸も浅い。
肩と背には包帯、腰には一振りの剣。
そしてその背筋は、まっすぐだった。
庭で箒を持っていた静水が、ぴたりと動きを止める。
――そして、次の瞬間。
「名前……っ」
静水は箒を落とし、まるでらしくもないほど慌てた足取りで庵を飛び出す。
「……っ!」
名前が驚く間もなく、ふわりとその身体が抱きしめられた。
「……よく、……よく、戻ってきてくれました……!」
小柄な身体が、震えていた。
静水の声も、呼吸も、涙ぐんでいた。
普段は厳格で、言葉少なく――
感情を見せることなど、ほとんどなかった静水。
けれど今だけは、年老いたその腕が、
まるで宝物を包み込むように、名前の背を強く、強く抱いていた。
名前はしばらく、その温かな腕を受け止めるように、じっとしていた。
そして、ようやく、そっと小さく返す。
「……ただいま、戻りました。静水様」
その声はかすれていたけれど――
しっかりと、届いていた。
静水の目尻に、一筋の涙が光る。
「……ええ。おかえりなさい。名前」
藤の葉が、さらさらと鳴いた。
風が吹く中、二人は静かに、肩を寄せ合っていた。
誰もいない山奥の庵に――
確かに、ひとつの“帰る場所”があった。
●●●●●
〜大正コソコソ噂話〜
「能無し、木偶の坊」
「テメェ………っ!!」
「死ね」
「犬死しろ」
「ギィイイイイイッ!!!」
「(ええええ何この子いきなり饒舌になったと思ったら何で煽り出したの!?やめてくれる!?言っとくけど俺斬る自信ないからね!?)」
縄鬼との決戦時、実は綾斗は内心冷や汗ダラダラだったらしい。
終。