きみがおかしかったことを、ぼくは気にしていた。

　しかし訊く気は無かった。

　だから変わらず軽い調子でメッセージを投げていた。

　あれから報道番組は世界各地の暴動や避難所の様子やお偉いさんの発表を繰り返していた。

　こんなときだからなのか、こんなときもなのか。今でも政治家やら研究者やらは議論をしているらしい。

　問われて、はたと思い出す。

　十日前、実はあの日は何十回目かの面接に落ちた日で。

　だからやる気が起きなくて。

　カップ麺で良いや、なんて。

　やさぐれていたのに、今やすっかり忘れていた。

　終活、と言う単語にそっかー、とぼくは頷いた。

　今から丁度一箇月前。詰まるところこの世界滅亡が宣言される二十五日前、ぼくは仕事を辞めた。

　ずっと地道にコツコツやって来たつもりだったけど、認められなかったのだ。

　ある日寄って集って上司連中に莫迦にされ、辞表を叩き付けてやった。

　そこからは就活に精を出していたけども惨敗。

　ぼくの職業で、ポジションはどこも空きが無かった。

　だけど年齢や、性別も問題だったが、一番は成果を出せていなかったこと。

　がんばって大学まで行き、部屋を借りて作業を続けたり、教授や先生を訪ねて就職の伝てを探したりしたけど。

　最悪だった。十日前まで。

　あははと、ぼくの空笑いが聞こえて来そうなメッセージに、きみが少し時間を掛けて返した。

　ぼくのメッセージが止まった。

　ぼくの────『ぼく』こと千木優菜のメッセージは止まったままだ。

　それでも、きみは────公塚《きみづか》佳彦《よしひこ》はメッセージを打ち続けた。

　日付が変わった。

　世界が終わるまで、あと、一日。