「────ここはね昔、踏切だったのよ」

  •  薄暗い、地下歩道に僕たちは来ていた。

  • 高校の在った場所から二駅離れた、駅のすぐ横の地下歩道。

  • ヒメ先輩

    ────ここはね昔、踏切だったのよ

  • へぇ、と僕は相槌を打った。

  • 天井を見上げて、カメラにも、薄汚れた天井が映る。

  • ヒメ先輩

    ここね、

  • ヒメ先輩へカメラフォーカスが戻る。

  • ヒメ先輩は薄く微笑んでいた。

  • ヒメ先輩

    急ピッチで出来たのよ

  • ヒメ先輩

    ……どうしてだと思う?

  •  ヒメ先輩の言葉に僕は、わからないと答えた。

  • ヒメ先輩

    人が死んだの。中年男性が、白昼堂々と飛び込んだらしいわ。

  • ヒメ先輩

    駅を発車した上りと駅に到着するところだった下りが、踏切で交差したとき

  •  人身事故────僕は、ヒメ先輩の説明に息を飲んだ。

  • ヒメ先輩

    轢いたのは、下り電車だった。でもね、上りも、揺れたのよ……

  • ヒメ先輩

    何でかしらね?

  •  上り電車はまた一つ先の隣駅で長時間停車したって。

  • ヒメ先輩

    ……ただの時間合わせだと、良いわね

  • 先輩は笑って、来た道を引き返した。

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