“絶対に秘密だよ”

  • ヒメ先輩

    “絶対に秘密だよ”

  •  ヒメ先輩は不思議な存在だった。

  •  学校にはいるし認知もされているけど、生徒じゃないっぽい。

  •  何だったら、人間ですら、無い。

  • 『A高校郷土史研究会』と名の同好会が宛行わられた、二階突き当りの狭い部屋に住まう、超常的な存在。

  •  ヒメ先輩の“ヒメ”は、────『秘女《ひめ》』なのだと言う。

  •  いつから存在しているのか、自身にも不明だそうだ。

  • ヒメ先輩

    “もう、大丈夫だから”

  • ヒメ先輩

    “おかえりなさい”

  •  俺は巻き添えを食らっていた間の記憶が無かったけども、どうも大事なことも忘れてしまった気がする……

  • も、ポケットに在った自分のスマートフォンに在った通知の山に、瞬時に掻き消された。

  •  俺が消えたあと、ヒメ先輩は石段へ腰を下ろし、携帯端末を撫でていた。

  •  無事に学校へ戻れた俺は、落ち葉の敷き詰められた土の上に寝転がっていたために、泥と葉っぱに塗れていて担任から事件へ巻き込まれたのではないかと心配された。

  • ……補習は後日になった。

  •  それから。

  • にゃー……ん……

  •  A高校郷土史研究会の部屋には、時折どこからかやって来た斑猫が、出入りするようになった。

  • 【 了 】

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