ヒメ先輩が言うので、俺は電源を入れた。

  •  それは、カメラ付きの携帯端末だった。しかも。

  • 世請《よせい》

    えっ、懐かしっ!

  • 世請《よせい》

    コレ、スマフォじゃなくて、スライド式携帯じゃないですか!

  • 世請《よせい》

    えぇ、懐かしい!

  •  今や、日常ではネットや中古ショップでしか滅多にお目に掛かれない、携帯電話と言うヤツだ。

  • ヒメ先輩

    見ても良いよ

  • 世請《よせい》

    えー、良いんですか? ってか、コレ、ヒメ先輩のですか?

  •  だとしたら通信規格がもう無いし、現役では無いと思うけど。ゆるされても、他人のものを見て良いものか悩む。

  • だけれどヒメ先輩は、ううんと首を振った。ぇえ? それ見て平気なの?

  • ヒメ先輩

    私のじゃないけど……

  • ヒメ先輩

    もう持ち主もいないから

  • 世請《よせい》

    じゃあ駄目なんじゃ

  • 世請《よせい》

    ……つーか、コレ電源入るんですか?

  •  傷だらけの端末は、余り状態が良いと見えない。けど、ヒメ先輩は宣う。

  • ヒメ先輩

    さっきまで動いていたから、動くでしょ

  •  ヒメ先輩が言うので、俺は電源を入れた。

  •  電源が入り、起動画面が表示されたあと、待ち受け画像が映る。

  •  3.7インチ液晶の待ち受け画像は、幸せそうな家族と、一匹の斑《ぶち》猫の写真だった。

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