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え、と僕は思うが、声が出ない。
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何でだろう。声を出そうとしているのに。
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手が、ぶるぶると、震える。持っているカメラも、当然ブレる。
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おかしい。僕はさっきまでヒメ先輩と喋っていたはずだ。撮影の許可を得て、地下歩道で踏切事故の話を聞いて。
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公園? には自殺者が多いとか、この辺は市自体が軍都だし、仕方ないとか……
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あれ?
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僕、あのとき何て話してた?
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……。
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僕は、いつから話せなかったのかな?
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僕は、僕は、僕は、僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は────……
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ヒメ先輩
……あのね
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僕の反応を待っていたっぽいヒメ先輩が、一呼吸置いてから口火を切った。
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ヒメ先輩
私ね、世請くんのこと、名字で呼ばないのよ
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僕はヒメ先輩を見詰めた。
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ヒメ先輩
寸沢嵐くん、なんて、呼ばないってこと
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“で、どうしたの……|寸沢嵐くん《・・・・・》”
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出会い頭のころ。詰まるところ、最初から。
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僕はヒメ先輩へ手を伸ばし端末を落とす。
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くるくると、回って落下した端末の液晶に一瞬映った僕は首が、くの字に曲がっていた。
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