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滅亡九日前
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ぼく
やべぇよ
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きみ
どした
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ぼく
スーパー、マジ戦場
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昨日の放送から一夜明け。出掛けたはものの目的は果たせず、ついでに食料が心許無いので買い出しへ向かった。
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その先で、殺到する主婦の群れから洗礼を受ける羽目になった。
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何をそんなに買い込むのか、買い貯めするのかわからないが、いったいどこから湧いて出たんだと言う風でスーパーに犇めく人々。
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この内約八割と言えそうな主婦の皆さんは、血眼になって商品を鷲掴み、入れた籠は守りつつ次の獲物……もとい商品へ向かって行った。
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その姿、飢えた獣の如し。
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若い人たちも必死に手を伸ばし商品を掴むけれども、掴んだそばから横から掻っ攫われる。
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主婦の皆さんが去ったあとは、床に死屍累々ならぬ、彼女たちが落としただろう無惨な姿と化した商品や何の切れ端か不明な布切れなどが散乱するだけで、棚も段ボールも底を晒している。
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この主婦の皆さんが進行するたびにスーパーの空虚スポットは範囲を拡げて行った。
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その状況、蝗《いなご》が畑を丸裸にするが如し。
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昔オイルショックとか地震とかで買い貯めが問題になったけれども、成程、こんなときも同じみたいだった。
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きみ
マジか
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ぼく
マジ
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きみ
で、買えたん?
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ぼく
醤油ラーメン五個入り袋麺が、一袋
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きみ
おっ
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きみ
やったやん
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ぼく
がんばって引っ掴んで抱え込みましたよ。でないと取られるもんよ
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きみ
収穫ゼロとかならんで良かった良かった
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ぼく
けどラーメン守るのに集中してて、野菜とか肉も買えなかった。いや、無かったかもしれんけど
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きみ
おっと
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ぼく
米は端からあきらめてたけどさー! せめて肉か野菜は欲しかった! 缶詰も無いんやで?
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ぼく
さすがにこれから具無しで朝昼晩醤油ラーメンだけは無理ンゴ
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ぼくの嘆きが表示される。
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「……」
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それからしばらく、画面は動かなかった。
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「……」
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完全な沈黙。
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「……」
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ぼくのつらつら連ねられた嘆きから、たっぷり一分後。
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やっと現れた、きみの返信。
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きみ
乙
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「……」
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たった一言どころか、たった一文字だった。
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