世界の終わりと、きみとぼく。 5

  • 四日前
  • きみ

    ねぇ

  • ぼく

    どした

  • きみ

    テレビ観た?

  • ぼく

    んにゃ。最近緊急放送ばっかだし、ニュースはネットでも見れるかなって

  • ぼく

    専ら動画ばっかり

  • ぼく

    何で?

  • きみ

    至るところでさ

  • きみ

    暴動起きてるの

  • きみ

    海外もだけどさ。日本でも

  • ぼく

    ま?

  • きみ

  •  観てみ、今生放送、と言うメッセージにテレビを点けた。

  •  電源が入り画面には映像が映し出された。

  • ぼく

    わぁお

  •  フザケたメッセージを打ったけど、決してフザケた訳では無い。

  •  終末と言う表現も生ぬるい光景に、他に言葉が無かっただけだ。

  • ぼく

    酷いね

  • きみ

    うん

  •  日本も映った。

  •  高速道路では玉突き事故を更に複雑に、規模を大きくしたような状態が報道されていた。

  •  無機質に読み上げられる死傷者、行方不明者は数を増やしている。

  • ぼく

    マジか

  • きみ

    あのさ

  • ぼく

  • きみ

    絶対外に出るなよ

  •  文字なのに、きみのトーンが下がった気がした。

  • ぼく

    急に何

  • きみ

    この前、駅前で喧嘩が在ったって言ってたじゃん

  • きみ

    絶対外出るなよ

  • ぼく

    うーん

  • ぼく

    まぁ、気を付けるよ

  • きみ

    絶対出るな

  • ぼく

    どうしたのよ、急に

  •  普段なら、余りお目に掛かれない真剣な、そして威圧的で命令口調なきみのメッセージに、ぼくは何だか焦る。

  • ぼく

    何か在った?

  • きみ

    ……

  • ぼく

    ねぇ

  • きみ

    何でも無い

  • ぼく

    え?

  • きみ

    何でも無い

  •  画面が更新されなくなって僅か数秒。

  •  逡巡するには充分な間のあと、きみは何も語らなかった。

  • きみ

    でも、心配だから

  •  明らかに何か在ったのに、何も言わないきみの返答はどこか拒絶を含んでいたので。

  • ぼく

    そっか

  •  ぼくは、何も言わなかった。

  • ぼく

    わかった

  •  










     

  •  このとき敢えて尋ねなかったことを、ぼくは、後悔していない。

  •  きっと、きみは教えてくれなかったから。

  •  ぼくにも、掛けられる言葉なんか無かったから。

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