冒頭のみ
おなまえへんこう
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「初めまして皆さん、今日からこの授業を担当する、非常勤講師の印南です!未来の希望に溢れた皆と共に、この時間を過ごせることを嬉しく思う!どうぞよろ……」
言葉を最後まで言う前にゴホッと咳き込み、生徒達の前で赤い血を吐き出す。私が数時間前に外で見た光景と同じ。──そう、答えが出るのは思ったよりも早かった。彼は先輩ではなく、先生だったのだ。
「先生大丈夫!?」「病院行きますか!?」
焦る生徒達と「心配してくれてありがとう!君たちは優しい心を持っていて素晴ら……」何を話しても最後には血を吐いてしまう印南先生。そんな彼と生徒達のやり取りを遠目で見ていると、ひとしきり咳をして顔を上げた先生と目が合う。
先生は私を見つけると口角を上げて、挨拶をするかのように手を小さく左右に振る。きっとこうなることを予想していたんだろう。私も手を振り返すべきかと迷ったが、一応相手は先生という立場であることがわかったばかり。さっき一瞬会っただけで、そんな馴れ馴れしい態度を取っていいものなのか瞬時の判断ができず、軽く会釈をするので精一杯だった。
それから週に一回程度で印南先生の授業があった。すぐに血を吐くところを見ると戦闘には向いていないのかな、なんて勝手に思っていたけど、外での実践をメインに授業をすることに驚く。私と同じ事を思っていた生徒は何人かいたようで、最初の頃は大丈夫なのかと先生という立場なのに逆に心配されていたり。
それでも印南先生の授業はとても雰囲気が良かった。基本的に前向きな性格なこともあり生徒を褒めるのはもちろん上手で、失敗してしまった生徒のフォローも優しく、全力で励ましてくれる。私達は“鬼”として生きている限り、戦闘で死ぬことだってある世界を前にしている。だから一定数厳しい先生も多い中、比較的温厚な先生はすぐに生徒達の人気者になった。
「今の動きは素晴らしい!君には戦闘のセンスがある!」「失敗は学びを得るチャンスだ、落ち込まなくて大丈……」
ゲホッ、と相変わらず血は吐き続けているが、生徒達の面倒をそばで見る先生の目はとてもいきいきとしていた。そして私はそんな印南先生のことを、いつのまにか目で追うようになっている。
思い返せば、一目惚れだったのかもしれない。あの日、桜を見つめていた先生の姿が今でも鮮明に思い出される。今は当たり前にみんなの印南先生としているけれど、あの瞬間に出会えたのは私だけだった。そんな風に思ってしまえば、なんだか特別な気分にさせられる。
「──さん」
「は、はい!」
印南先生に突然名前を呼ばれ、肩が跳ねる。先生との出会いを振り返ってぼーっとしていたのか、さっきまで少し先にいた先生がいつの間にか私の目の前に来ていた。
「大丈夫かい?元気が無いように見えて」
先生はこうやって周りをよく見てくれている。生徒一人一人の名前もすぐに覚えていた。生徒の理解を早く深めて、より良く指導できるようにだと話していたのを思い出す。そうやって平等に接しようとしてくれているからだとわかっているのに、自分を見ていてくれたのかと都合の良い錯覚を起こしてしまいそうだ。
「……ぜ、全然大丈夫です」
「そうかい、それなら良いのだけど。もし具合が悪かったりしたらすぐに言ってくれ!僕が助けにな……」
ゲホッ、ゴホッとお決まりの咳き込みをする先生を支えようと手を伸ばしたところで、ちょうど他の生徒が自分の技を見て欲しいと駆け寄ってくる。私の手は行き場を無くしてしまい、ぷらんと下に降ろすだけになった。咳をして下を向いていた先生がそんな私の様子に気付くわけがなく、あとから来た生徒とまた戻って行く。“みんなの印南先生”だから仕方がない事なのに、触れることもできないこの距離感が少し寂しいと感じてしまった。
言葉を最後まで言う前にゴホッと咳き込み、生徒達の前で赤い血を吐き出す。私が数時間前に外で見た光景と同じ。──そう、答えが出るのは思ったよりも早かった。彼は先輩ではなく、先生だったのだ。
「先生大丈夫!?」「病院行きますか!?」
焦る生徒達と「心配してくれてありがとう!君たちは優しい心を持っていて素晴ら……」何を話しても最後には血を吐いてしまう印南先生。そんな彼と生徒達のやり取りを遠目で見ていると、ひとしきり咳をして顔を上げた先生と目が合う。
先生は私を見つけると口角を上げて、挨拶をするかのように手を小さく左右に振る。きっとこうなることを予想していたんだろう。私も手を振り返すべきかと迷ったが、一応相手は先生という立場であることがわかったばかり。さっき一瞬会っただけで、そんな馴れ馴れしい態度を取っていいものなのか瞬時の判断ができず、軽く会釈をするので精一杯だった。
それから週に一回程度で印南先生の授業があった。すぐに血を吐くところを見ると戦闘には向いていないのかな、なんて勝手に思っていたけど、外での実践をメインに授業をすることに驚く。私と同じ事を思っていた生徒は何人かいたようで、最初の頃は大丈夫なのかと先生という立場なのに逆に心配されていたり。
それでも印南先生の授業はとても雰囲気が良かった。基本的に前向きな性格なこともあり生徒を褒めるのはもちろん上手で、失敗してしまった生徒のフォローも優しく、全力で励ましてくれる。私達は“鬼”として生きている限り、戦闘で死ぬことだってある世界を前にしている。だから一定数厳しい先生も多い中、比較的温厚な先生はすぐに生徒達の人気者になった。
「今の動きは素晴らしい!君には戦闘のセンスがある!」「失敗は学びを得るチャンスだ、落ち込まなくて大丈……」
ゲホッ、と相変わらず血は吐き続けているが、生徒達の面倒をそばで見る先生の目はとてもいきいきとしていた。そして私はそんな印南先生のことを、いつのまにか目で追うようになっている。
思い返せば、一目惚れだったのかもしれない。あの日、桜を見つめていた先生の姿が今でも鮮明に思い出される。今は当たり前にみんなの印南先生としているけれど、あの瞬間に出会えたのは私だけだった。そんな風に思ってしまえば、なんだか特別な気分にさせられる。
「──さん」
「は、はい!」
印南先生に突然名前を呼ばれ、肩が跳ねる。先生との出会いを振り返ってぼーっとしていたのか、さっきまで少し先にいた先生がいつの間にか私の目の前に来ていた。
「大丈夫かい?元気が無いように見えて」
先生はこうやって周りをよく見てくれている。生徒一人一人の名前もすぐに覚えていた。生徒の理解を早く深めて、より良く指導できるようにだと話していたのを思い出す。そうやって平等に接しようとしてくれているからだとわかっているのに、自分を見ていてくれたのかと都合の良い錯覚を起こしてしまいそうだ。
「……ぜ、全然大丈夫です」
「そうかい、それなら良いのだけど。もし具合が悪かったりしたらすぐに言ってくれ!僕が助けにな……」
ゲホッ、ゴホッとお決まりの咳き込みをする先生を支えようと手を伸ばしたところで、ちょうど他の生徒が自分の技を見て欲しいと駆け寄ってくる。私の手は行き場を無くしてしまい、ぷらんと下に降ろすだけになった。咳をして下を向いていた先生がそんな私の様子に気付くわけがなく、あとから来た生徒とまた戻って行く。“みんなの印南先生”だから仕方がない事なのに、触れることもできないこの距離感が少し寂しいと感じてしまった。
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