2026甘寧誕生日
甘寧にとって、大切なものはそう多くない。気合を入れるための鉢巻、仲間の印の羽根、存在を知らしめる鈴――あとは己を慕う手下たち。
血の気が多く、突っ走りがちな男らを拳で制して徒党を組むうちに、なぜだか懐いて大軍になった。
『兄貴っ! この塗料が鈴に良いらしいですぜ!』
『良いってなんだよ、何に良いんだ?』
『そりゃあ……分かりやせん! ピッカピカに光るか、鳴りが良くなるんじゃあねぇでしょうか』
『んだそりゃ。適当なモン掴まされてたらぶん殴るぞ』
合っているかも分からない生誕日を知られ、その祝いにと手下達が怪しい器を持ってきた。先程の宴会でのやり取りが思い出され、ふと唇が緩む。布巾で取って鈴に付け磨いてみるが、やはりただの精油のようだった。
「へっ、野郎共が揃って騙されやがって」
こうなれば、意地でもピカピカにしてやりたい。いや、やらねば男が廃る。甘寧の手に一層力が入る。玻璃を砕いた自前の研磨剤も全力出動だ。
「鈴の甘寧、全力でいっくぜぇ!」
翌日、甘寧が光輝く鈴を連ねて軍の調練に現れた。
「兄貴ぃ! 今日はなんだかいつもより派手ですぜ!」
「あぁ? 俺ぁいつでも目立つだろうが。あれかぁ? どっか腰辺りが眩しいとか」
「こりゃもしかして、俺らのアレですかい!」
「さぁなぁ。おい、どうだ鈴一、鈴二も」
甘寧の茶番に、手下たちはきらきらした目でわくわくと眺めてくる。噴き出しそうになるのを堪えて、甘寧が顔を上げた。
「すんげえ良い塗料で拭かれて喜んでるとよ」
「おっしゃあ! 有り金はたいた甲斐あったな!」
「馬鹿お前ら、てめえの女子供に取っとけよ」
「へへっ、兄貴は家族以上の存在でさぁ!」
野太い声ではしゃぐ男たちに呆れつつ、甘寧は気合いの号令を掛けた。その日は、より甘寧軍の声出しが派手だったという。
