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学業や買い出しをこなすうちにあっという間に新歓合宿の日がやってきた。様々な経験をしてきた中でも初めての緊張感が陸遜を包む。しかしそれは不安よりも期待がほとんどを占めている。一つ深呼吸をしてから家を出た。時刻は20時。孫呉の合宿の始まりである。
狭い部室に収まらないので駐車場にて部員らが集まり、最後の荷物の確認が行われた。
「おし、準備いいな。運転手には必ず一人つけよ」
甘寧が声を張っている。レンタカーは3台で、うち2台は大きなバンだった。免許を持たない陸遜は初めて乗る車種である。続々と車に乗り込んでいくメンバーを見ながら新人二人はおろおろと立ち尽くしていた。そこへ徐盛が声を掛けてくれる。
「せっかくだ。二人は別の車に乗ってくれ。途中助手席の仕事を担ってもらう」
「俺らにも出来ることがあるんですね!」
「あぁ。今回は夜通し移動になる。安全確保のため、助手は適宜運転手への声かけや目視の手伝いをしてもらうぞ。免許を取るときにも役立つからしっかりな」
「分かりました」
朱然がシルバーを選んだので、陸遜はもう一方の白いバンに乗り込んだ。後ろはゴムボートがぎゅうぎゅうに積まれ、独特な臭いが充満している。決して綺麗ではない環境が、これまで味わったことのないもので、また陸遜をわくわくさせた。運転席の後ろに徐盛が乗り、陸遜は助手席後ろに来たが、徐盛に手招きされて更に詰めた。後部座席中央に座るのも人生初である。運転手が振り向いた。
「お、陸遜こっち来たんだ。野郎しか乗らないけど大丈夫かい」
「凌統殿が運転して下さるんですか。最高学年なのに」
「運転好きだし気にしなさんな。院生も多いから、なーんか上って感じしないんだよね」
「凌統、俺に文句があるのか?」
「いや違いますよ。子義さんが隣乗ってくれんのはほんっと頼もしいってね」
二人が軽口を言い合っているのが可笑しく、陸遜の少しの緊張がほぐれていく。既に四人乗っているが、助手席後ろを空けさせられたということは誰かが乗るはずである。まさか、という予感はすぐに本物となった。
「すまん、遅刻ぎりぎりか」
「呂蒙さんなら1時間でも待ちますよ。っつうか家行ったのに」
「後輩に示しが付かんだろう」
「呂蒙殿、昨日は眠れたんですか?」
「寝とらん……今寝たいから甘寧車は止めた」
「そりゃ賢明だ。あいつの喋りも音楽もうるさいですからね」
「お前甘寧車乗ったことあったか」
「あいつが新人の時、散々嫌な思いしましたよ。もう絶対乗らないっつの」
先輩らが話す内容は、膜一枚張ったようにぼんやりと聞こえた。体の左側がとても熱い。呂蒙に負担にならないように密着を避けているはずなのに、やはりカイロに触れているような熱を感じた。陸遜がそろそろと呂蒙を覗き見る。ばっちりと目が合って、心臓が壊れそうな程跳ね上がった。
「陸遜、約束通り一緒に合宿だな」
「は、はい。この日を、とても心待ちにしておりました」
陸遜の本音である。それも昨日今日から楽しみにしていたなんて温いものではない。呂蒙に出会ったあの日から、陸遜の中心は呂蒙である。その人物と行動を共に出来る日を長く願っていた。呂蒙が目尻に皺を作って笑み、陸遜の頭を撫でた。左側だけだった熱が頭部にも乗る。
「俺こそだ。良い合宿にしよう」
声は出せなくなって、陸遜はただこくこくと頭を上下させた。誰にでも物怖じしないで話せるのに、こと呂蒙が絡むと上手くいかない。これまで恋愛経験がないこともあるが、こうも人体に影響があるとは、と陸遜はあえて思考を遠ざけて体の熱を冷まそうと試みた。
凌統の運転する車はスムーズに進み、高速道路をひた走る。時々背後のシルバーバンが煽ってきて、口ではぐちぐちと甘寧に対する嫌味を言っていたが、決して運転が乱れることはなかった。助手席に座る太史慈は凌統とあれこれ話しながら、周囲の状況やジャンクションでの進路を伝えている。自身に務まるのかと一抹の不安を覚えた。
そんな陸遜の左腕に、ふと重みが乗った。シートベルトに掛かりながら、腕を組んだ呂蒙が陸遜に寄ってきたのだった。
陸遜は瞳を左右させた。後部座席の人間の距離感など、当事者以外には分からない。
少しだけですから、と神に言い訳しながら、陸遜は腿の筋肉を少しずつ動かしていく。数分掛けてじりじりと呂蒙側に詰めた。徐盛とは拳二つ分も距離があるのに、呂蒙とはすっかり密着している。拍動の音が漏れ聞こえるのではと思う程、陸遜の心臓はばくばくしていた。
熱い。触れていなくてもあんなにも熱かったのに、今は全身が燃えてしまいそうだ。陸遜はなんだか泣きそうになった。
その内、呂蒙は近くなった陸遜の肩に頭を預けるようになった。少しでも休まってほしい。その願いは本心だが、このままくっついていたいという欲が透けていて、自覚するたび羞恥を覚えた。
出発してから2時間半。3台の車はサービスエリアに進入した。比較的大きなところで、夜でも煌々と輝いている。その直前で目を覚ました呂蒙が、陸遜にだけ聞こえるように謝罪した。肩を借りていたのが分かったのだろう。意図的にそうしたのは自身だと心で詫びながら、陸遜こそ頭を下げた。
停車すると皆が降りていく。陸遜も続いて地に足を着けた。同じ姿勢で固まっていたので、手を組んで上に伸ばすと若者にあるまじき音が鳴る。ストレッチをしていると、陸遜の元に朱然が駆けてきた。
「……疲れた……」
「えっ、もうですか?何かあったのですか」
「両隣が、大喬殿と小喬殿だったんだ。絶対に触れるべからずと言われて……体が、攣りそうだ」
状況を把握して陸遜は苦笑した。朱然も二人が婚姻していて、夫がOBであることは聞き及んだようだ。加えて、運転手の甘寧が「裾でも当たったらすげー目に遭うぜ」と吹き込んだらしい。陸遜以上に硬直の続いた体はバキバキと恐ろしい音を立てていた。
「次はきっと助手席ですよね。仕事はありますが、席は広いですよ」
「そうだな。俺の方は誰が運転するんだろう……姉妹のどちらかだろうか」
新人同士で話しながら手洗いへ向かう。呂蒙への感情とは別に、同期である朱然と話すときは最も気がほぐれる。陸遜はふわふわした意識で聞いていた凌統と太史慈の会話などを伝えながら歩いて行った。
駐車場に戻ると、先輩らが輪を作っていた。次の運転手などを決めていたようで、新人二人も助手席に命じられた。思わず拳を握りかけたのを、陸遜は理性で抑えて恭しくその任を承った。晴れて呂蒙の助手になったのである。朱然の方は徐盛が運転することになったらしい。となると、一人陸遜側の車に移ってくる。
「なーんであんたがこっち来るんだよ。ただでさえ狭いんだから勘弁してくれ」
「あーん?丁奉の方がごついだろ、後部中央に居てみろ、バックあいつの顔面しか映んねえよ」
どうやら甘寧が来るようだ。またすぐ喧嘩に発展するのでは、と内心陸遜は冷やついたが、甘寧の返答に凌統が腹を抱えて笑っている。仲が良いのか悪いのか分からない。
呂蒙車には助手席が陸遜、後部には凌統と太史慈が甘寧を挟む形で座るようだ。徐盛車は朱然が助手席、後ろは二喬と丁奉である。花の綺麗な公園の話題ですでに盛り上がっている。もう一方の乗用車は孫尚香が運転することになったらしい。練師が続けての助手席となるようだ。単なる移動だけでも賑やかで楽しい雰囲気が、陸遜の肩の力を抜いてくれた。次に停まるサービスエリアを決めてから全員が乗り込んでいく。
「陸遜、よろしくな」
「はいっ。未熟者ですが、よろしくお願いいたします」
「まあ、そう意気込むな。不安にさせる運転はしないと誓おう。リラックスして乗ってくれ」
「ですが、寝不足でお疲れのところを運転させてしまいますし、私に出来ることがあればさせてください」
呂蒙はシートの位置を調整しながら笑顔で頷いている。
「そうだな。せっかくだ、色々話すか。お前と話せると思うと、眠気も飛ぶ」
その一言に、陸遜こそ眠気が飛んだ。夜中とは思えない程アドレナリンが出ている。正々堂々仕事と言い張って呂蒙と話せることになろうとは、と何度目か分からない感動を覚えた。
「凌統、後ろ大丈夫か?少し詰めたが」
「ええ。脚が長くてすみません」
「お前、ウゼえ越してウケるな。痛ってえ!」
「横に脚やっとくんで、大丈夫ですよ」
「スネ狙って蹴ってんじゃねえよ!」
「ええい、やかましい!さっさと寝ろお前ら」
「だってこいつが!」
陸遜がちらっと後ろを見る。両手も両脚も組んだ凌統が優雅に腰かけている。が、よく見ると肘や靴で甘寧を攻撃していた。頼れる先輩に見えるが、どうも甘寧が絡むと子供っぽい。甘寧は目を吊り上げて応戦していた。ぐっと首を向けると、助手席の後ろに座る太史慈は既に就寝している。二人のやりとりには慣れているようだ。
「凌統殿、甘寧殿」
「ん?なんだい陸遜」
「呂蒙殿の運転に差し支えることがない様、お願いしますね」
陸遜は無意識に声のトーンを落としていた。二人が仲良く喧嘩するのは結構だが、呂蒙に迷惑がかかるようなことがあってはならない。陸遜の願いが通じたのか、先輩二人は小さく頷いた。何かひそひそ話しているが、内容までは陸遜に届かない。とりあえず大人しくなったので満足して前を向き直した。
「陸遜お前、強くなったなぁ。いや、あの時も強かったか」
「そんな。あの時はご迷惑をおかけしてばかりでした。改めてお世話になりました」
「ああ、いや。そんな
「山について勉強し、あの時より理解を深めております。大人同伴の元、いくつか登りました」
「真面目だな。その上で我が部に入ってくれたのだから、頼もしい限りだ」
「はいっ。あの時のような失態は犯しません。ですから、その」
後ろの先輩方にはずけずけ言えるのに、やはり言葉が詰まる。何でもないことに緊張してしまうとは、合宿中耐えられるのだろうか。陸遜はゆっくり拳を握ってから、前を向く呂蒙を見つめた。呂蒙は視線に気づいているようだが、きっちり運転に集中している。
「また、一緒に山へ行きたいです」
さっきまでの凛とした声とは違って、少し気弱になった。それでも語尾まで音を張った。心優しい呂蒙が断るはずないことを知りながら。
「勿論だ。川も沢も山も、全部行くぞ。って、それは俺の研究次第か」
「あっ、決して、無理のない程度で」
「冗談だ。お前と行けるなら、無理なことなど一つもない」
呂蒙はどのくらいの思いでそう言ってくれるのだろうか。少なくとも陸遜は、その優しさ一つ一つを真に受けてしまう。耳が熱くて、自分はどれだけ情けない顔をしているのだろうと目を伏せた。高速道路を走行する音よりも、自身の拍動が耳についた。
落ち着いてからは話が弾んだ。建業大を受験すると決めて両親に驚かれたこと。孫呉の活動を楽しみにしていたこと。講義もやや物足りない点はあれど面白いこと。呂蒙の話も多く聞くことが出来た。気象学研究室で、教授がパワハラ気味なこと。甘寧がゼミ生にいるが、不真面目で手を焼いていること。呂蒙の語りはあの日の夜と変わらず、陸遜を思いやって話してくれているのが分かった。高速を走る雑音にも負けない声量やするわざとらしいリアクションが、陸遜の脳に新たに刻まれていく。時々横顔を盗み見ては、心でシャッターを切った。
何度も好きだと実感させられると、このままでいたいような焦れったいような反対の気持ちをもたらした。
***
一行は無事合宿地に辿り着いた。走行時間トータル7時間の長旅で、到着したのは朝の4時だった。そのままの勢いで部員たちは持参した朝食を取り、川下りの準備を進めている。陸遜も朱然も若いのでなんとかついていけているが、先輩たちの体力と手際の良さには度肝を抜かされた。
ゴムボートの準備、着替え、準備運動が終わると川下りが始まった。陸遜は赤いラフトボートの真ん中に乗った。左手前には呂蒙、右手前には孫尚香、左後ろに甘寧、右後ろに凌統がいる。雪融けで白波立つ川を、想像より早いスピードで下っていった。陸遜にとって初めての爽快感で、頭から水を被っては目を輝かせた。水流のほとんどないトロ場に来ると、先輩らは漕ぐのを止めて陸遜を見やる。
「陸遜、どうだ?」
「はい!すごく楽しいです!」
「そりゃ何よりだね」
「へへ。後でわざとひっくり返ってやっからな」
「さっきの訓練の成果、見せてちょうだいね」
ヘルメット越しにも先輩らの弾んだ声がよく聞こえる。パドルの操作がどのくらい難しいのか陸遜にはまだ分からなかったが、激流を越えて息を切らしているところを見ると体力が要りそうだ。隣に朱然の乗ったボートが滑り込んでくる。前に二喬が乗り、後ろを徐盛と丁奉が支える形だ。もう一艇は二人乗りで、前に周泰、後ろに孫権が座っている。誰かが上空を指さした。陸遜と朱然もつられて顎を上げる。橋が架かっていて、人影が見えた。太史慈と練師、そして別に二人。
「あー!周瑜さまだ!」
「孫策様も。もう着いたのですね」
陸遜は頭の中でその名を探った。医学部の先輩で小喬の夫が周瑜、発言からして孫策という男が大喬の夫だろう。一方は元気よく、もう一方は静かに手を振っている。
「よっしゃ、やるか。おう、陸遜、朱然。一旦瀬に着けるから下りろ」
「えっ、あ、はい」
「何かあるんですか」
「これより、自己紹介をしてもらう」
どどん。ないはずの太鼓の音が聞こえる。孫権が両手を組んでふんぞり返っていた。さくさく指示を出し、新入生二人がようやく瀬に上がった時にはすでに手本となる徐盛が岩壁に張り付いていた。アクアシューズですいすい登っていく姿に朱然と二人で絶句した。
「では、まず自分から。4年、法学部法学科、徐盛文嚮!今年は縦走に行くぞ!」
綺麗に両腕を挙げて、徐盛が飛び込んだ。美しすぎるフォームでの入水に拍手と笑い声が沸き上がった。陸遜と朱然が圧倒されながら倣う。ふと見ると、巨体が崖を登っていた。
「さすが徐盛殿。獲物を狙う水鳥の如くよ。次、3年農学部農学科、丁奉承淵!美しき沢を堪能いたす!」
徐盛と違い、丁奉は頭から行った。
「赤き断崖を転がる巌とならん!」
どぼーーん。激しく水しぶきがあがり、ほぼ全員にかかった。水流がないはずの瀬で大きく波紋が広がり、2人乗りボートに乗ったままであった周泰が静かに転覆した。甘寧が瀬から指をさして笑い転げている。赤い目の状態で陸遜と朱然に声をかけた。
「次、やってもらうぜ。いいか、そこの岩あるだろ。登って、自己紹介して、飛び込む。声張れよ。上にOB来てっからな」
「まだ不安なら、この鈴野郎もお手本といくから」
「あー?お前はどうなんだよ。もう飛び込みは怖くてできませんってか?」
「は?誰に言ってんだっつの。孫呉一泳ぎが上手いのは俺だろ」
いつの間にか言い争いになっている。いよいよこの口論に慣れてきた陸遜が呂蒙の顔を見ると、大きなため息を一つついていた。同時に二人の頭に拳骨を落とす。
「いいからやれ。お前らどっちもだ」
「なんで俺まで殴るんですか呂蒙さん……」
「痛ってえ~……。クソ、行くぞ凌統!」
甘寧が盛大に舌を打ってから登り始めた。頂上に着いて、一度橋の方を見た甘寧が両手で拳を作り、脇を締めている。
「3年!理学部気象学科ァ!甘寧興覇!冬山極めるぜぇ!」
びりびりと振動が伝わってきそうな程の声量だ。言い切って両手を合わせ、甘寧は派手に飛沫を上げて飛び込んだ。ボートに乗ったままの面々はやはり皆笑っている。朱然の笑顔は少し引きつっていた。そうこうしている内に凌統が登り切った。甘寧はまだ直下の水面に浮いている。
「4年っ!経済学部経済学科、凌統公績!就活終えてクライミングしまくります!甘寧、退きなっ」
退けと言ってから飛び込むまでが早すぎる。甘寧のすぐ近くに綺麗な飛び込みの型で凌統が沈んでいった。浮かび上がるやいなやケンカしている。二人のバイタリティには陸遜もドン引きした。その背を、温かな呂蒙の手が叩く。
「参考になったか分からんが、学年学部と名前、あったら抱負を述べてほしい」
背に置かれたままの掌が気になって、上手い返事は出来なかった。
「陸遜。俺はこんなこともあろうかと飛び込みを練習してきた」
「えっ」
「優勝は決まりだな」
勝負なのか。陸遜がきょとんとする内に岩に手を伸ばしている。すぐ要領を得たようであっという間に上に着いていた。
「1年っ!朱然義封!医学部放射線学科です!川下り、もっとやりたいです!」
ためらいなく飛ぶので陸遜は目を瞑りそうになった。見ている方が怖いというものである。朱然は両手を十字に組み、あまり音を立てずきれいに着水した。周囲から拍手が沸き起こる。
「よし、陸遜の番だな。心配するな、俺も皆もついているぞ」
陸遜は頷いた。崖に近づいてみると、ごつごつしていて思っていたより足場がある。登るのが楽しくなっているとすぐに上に着いた。橋を見上げると、四人の視線を感じる。次に見下ろすと、やはり高い。こんなところから飛んだことはもちろん一度もない。生唾を飲んでから呂蒙を見ると深く頷いていた。
「1年、医学部医学科!陸遜伯言です!登山を頑張りますっ」
陸遜なりに腹から声を出し、意を決して飛び込んだ。落下する時の心臓が持っていかれそうな感覚に肝が冷えたのは一瞬だった。どぼん、と轟音がして頭まで水に浸かる。ライフジャケットの浮力ですぐに上がった。視界が急転回してやや混乱する。
少し離れたところで泳いで見守ってくれた徐盛と丁奉が讃えてくれた。水面に出ている朱然と目を合わせて、互いに少し噴き出す。緊張と恐怖が混ざり、無事クリアできた解放感も相まって可笑しかった。
「二人とも良かったぞ。昼までにもう一本行きたいから、頑張って下ろう」
「穏やかな瀬に響く春の意気込み、新鮮な芽吹きを感じました。更なる成長のため、パドルを持ってみましょう」
徐盛と丁奉が掛けてくれた声に、新入生二人は声を張って返した。